34・共栄の約束
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人族は短命種ながら文明を発展させ増え続けている。特に東大陸の人族は脅威的なスピードで成長している。レムスの言うとおり月や太陽に手を伸ばすことも可能になるかもしれない。
そのときに魔族はどうすればいいのか? 互角になったときに共倒れを覚悟してぶち壊すか、それとも……。
――これからは人族、魔族とも栄えるようにしよう。
勇者ラウルスの言葉が脳裏に響いた。ああ、ラウルス様。愛しい人よ。約束を守って千年、退屈だったが平穏な日々が魔王に訪れたのだった。
あの約束を違えることは出来ない。魔王ミカは騎士ラウルを戦わせることは好まなかった。せっかく生き写しに出会ったのに若死にさせるわけにはいかない。
――始まりの丘にもう一度行って確かめないといけない
自分の使命について確認をしなければならない。魔族の親である魔王の使命について。
「魔王様?」
レムスが不審な顔で聞いていた。
「あ、すまん、ちょっと考え事をしていた」
「また、勇者様のことでも?」
「ああ、勇者は今思うと鍵だったような気がする」魔族を戦わずして従わせる者。
――しかし、勇者は自覚しているようには思えなんだが。
「それはともかく、明日、ちょうど良いことに総力軍事演習が行われます。陸、海、空です。私がまき散らした反戦ムードを抑え込むものでしょう。ご覧になられた方がいいかと」
「そうだな。戦力を見たい」
将来、宇宙へ飛び立つかもしれない者を無理に止めるのはどうだろうか?
もしかしたら、三者和平への道があるかもしれない。王国はもとより、魔界も元の姿を留めることはできないかもしれないが。それぞれ痛みはあるだろう。だが、それを乗り越えて発展はある。
そう思いついて、魔王ミカは決断した。
「人族はまだまだ子供じゃのう。目先のことしか見えておらぬ。軍事演習とやらを見終わったらテルゴウスと相談じゃ」
「はっ」レムスは何のことか分からなかったが、魔王様は深遠な未来が見えているのだろうと思った。
「お前は、今の工作と調査を進めよ。妾は妾でちょっと思いついたことがある」
各自出来ることをする。それが魔族のモットーだった。出来ないことは出来る者に任せれば良い。一人で全部出来るわけないだろうと、前大戦で魔王ミカは学んだのだ。
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