18・小競り合い
毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。
Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)
飛行機は王都に向かって飛んでいた。
複葉機だ。
東大陸の最新鋭の飛行機。任務は偵察。後部座席の画家が地形を描き起こしている。
選ばれし飛行士として最重要の任務に就いた操縦士は、画家がここは旋回してくれ、詳しく見たいという要望に応じてぐるぐる回ったりして王都に近づいていた。
彼は飛行士なので目がいい。王都に近づくや否や竜騎兵が三機上昇してくるのが見えた。噂によると竜は炎を吐くものがいるらしい。そして、こちらは木造の飛行機とくる。
回避行動を取るしかない。
すると、ドアにドスッという音と共に矢が刺さった。側面の竜に乗ってる兵が小型のボウガンに矢を装填しているのが見える。
本来なら側面は武器を扱う後座の席に画家が乗っているので対抗することができない。偵察機なので武装は元々無い。
諦めて、旋回して引き離す。速度的にはこちらの方が上だ。
せめて、王都上空を見ていきたいと思って、王都に向かう。後ろには、竜騎兵が追ってきたが、途中で止まった。
それを見て、なんで止まったのだろうと思った。
王都に見えない障壁があるのに気づいたときには、飛行機はバラバラになって墜落していく途中だった。パラシュートは発明されていたので、それを広げる。画家も広げているが地上に絵がばら撒かれているのが見える。
任務失敗。
地上に降りた二人はすぐさま衛兵に取り囲まれ逮捕される。
飛行機がここまで着たからには戦争は近いと言っても過言では無さそうだ。
さて、一方、魔王側は「空中の目」を使って東大陸の要所を記録していた。
――興味が無かったので知らなんだが、王国よりはるかに発展している国じゃな。軍艦とか引き手の動物を使わない車とかあるぞ。
異文明の力を侮ってはいけないのは千年前に経験済みだ。早速スパイに「覗き虫」を送る。見た目は小さな昆虫だが、見たもの、聞いた物を記憶し、正確に再生できる魔虫である。魔族の諜報活動は地上で一番進んでいるのだ。