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17・魔王ミカの恋

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

魔王ミカは寝所に横たわって考えていた。もう夜。一日が30時間のこの世界には、昼行性の魔物も居れば、夜行性の魔物も居る。魔王は昼間動いて、夜は休む。人族と同じ。


 側女のネミラは隣室で休んでいる。多分。深く眠ることはないんですよ、と言っていたのでいつもそれなりの睡眠を取っているのだと思う。


 ラウルスのことを思い出して胸を熱くする。剣を持って相対したとき、その目に吸い込まれるような気持ちがして、いっぺんに恋に落ちてしまった。ずるい。これでは戦うわけにはいかないではないか。


 彼の後ろには心配そうに見守る部下の魔族達が並んでいた。皆、ラウルスと相対して負けを認めミカの下へ通したのだ。


 ただ、魔王ミカは敗北を認める代わりに条件を付けた。

 妾を勇者ラウルスの妻とすること。


 認められないのなら、殺されても構わないとまで思った。


 しかし、ラウルスは剣を納めると魔王ミカを抱きしめて受け入れてくれた。ミカは嬉しかった。凄く。生まれてこの方こんな感情など持ち合わせていないと思っていたのに、自分に他者を愛することができるとは思ってもみなかった。


 結果報告と、母国に幼なじみの許嫁がいるのでそれを断りに帰国しなければならないと言われたが、長く生きる魔族にとっては大したことではなかったので見送った。

 それが、元気な彼を見た最後だった。


 全権大使と一緒に帰国したラウルスは監視下に置かれ出国することを禁じられた。魔王と勇者が結託して再侵攻してくるのを王国は恐れたのだ。


 泣きながら報告する全権大使を前に、魔王ミカはうんざりした。

――人質を取られた……


 好きだと言ったあの言葉は嘘だったのかと、ラウルスを疑ったりしたが少なくとも魔王城を出るまでは本気だと心がある程度読める魔王は分かっていたので。


 実は、魔王ミカはカラスに姿を変えてラウルスの下に何度か通っていたのだった。そこで知ったことは、国王は勇者を信じて無く、許嫁と結婚させておき、密かに毒を盛っておくということだった。

 会う都度やせ衰えていくラウルスに一緒に逃げようと言ったのだが、

「私は、王国民の信頼が双肩に掛かっているのだ。絶望させるわけにはいかない」

 そう言って死んでいった。


 王国で名誉葬で葬られたと聞いたとき、魔王ミカは泣いた。1ヶ月部下にも会わず閉じこもった。こんな国滅ぼしてしまいたいと思ったとき、生前の勇者の言葉が聞こえてきた。


「どんなものにも、良いところ悪いところがあって、それを認め合って仲良くしていくんだよ。一方的な悪など存在しない。魔族だって悪い奴は居なかったし、私はだれも傷つけてないはずだ」


 勇者は帯剣していたが、生き物を切ったことはほぼ無いと魔剣ガウスは言っていた。それは弱かったという訳ではない。後で試合してみたら、魔王でも叶わないレベルの剣さばきで存在だけで相手を圧倒するのはそれを超える「技」だと知った。


 結局、魔王は再侵攻することはせず、千年に渡り平和が続いている。

 そしてラウルに出会うことができた。二度と同じ様な目に遭わさないと、魔王ミカは決心したのだった。

実は現時点で43章まで書いていて、3,4ヶ月分のストックがあります。

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