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10・ラウルの力量

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 側女のネミラは最近思う。魔王さまは最近幸せそうだなと。ネミラが付くようになって数百年、魔王さまは退屈そうで、時には機嫌が悪かったが、周囲に当たることはなかったが、あんまり幸せそうには見えなかった。


 ときどき、誰かのことを思い出してため息を吐いて執務に戻る。

 そんな生活を続けていた。


 ところが、ここ数ヶ月で見違えるように生き生きしている。

 やはり、あの騎士が原因? そう思うのだった。


 魔王ミカと騎士ラウルの最初の手合わせは一瞬で終わった。

 木刀を構えるとお互いの力量が分かる。


――ふむ、ラウルはそこそこやるようじゃ。でも、これでは妾に勝てん。

 魔王は思った。


――魔王さまには勝てそうもない。これを圧倒したというご先祖さまは凄かったんだな。

 騎士ラウルは思った。


「まだまだじゃな」

「そうですね。どれだけお強いかと思ったら想像以上でした」


 ちょっと打ち合ってみて、わかる。

「太刀筋は悪くない。精進すれば勇者並になれる」


「可能でしょうか? 魔王さま」

「ミカで良いわ。剣技は追いつけるし、あの切らずして勝つ技も伝授してやろう」


 そして、勇者の再来と呼ばれるがいいわ、ラウルよ。

「ありがとうございます。なぜ、そこまで私にしてくれるのですか?」


「それはその……似ているからじゃ」

 魔王は小さな声で言った。


「は?」

「いや、見込んだからじゃ、そなたを」


 それに間違いはない。言い換えただけ。

「さて、剣に弱い部分がある。それを直してから技を教えよう」


 魔王は言った。当分、一緒に気晴らしに付き合って貰う。あの勇者に似た男に。


「それにしても、千年の間、ミカ殿は鍛錬しておられたのか。この強さは衰えたとは思えないが」

「ミカと呼び捨てで良いと言ってるじゃろ。ラウルよ。身体を動かさないと鈍ってしまうからのう。ときどき修練の時間を取って鍛えておるわ」


「なるほど、道理でスタイルも素晴らしいです」

「おべんちゃらを言うヒマがあったら見事打ち込んでみよ」


 魔王は、打ち込んできた騎士の剣をひらりと避けると、木刀を横から喉笛に突き上げてピタリと止めた。


「お見事でございます」

 横に居た剣術師範のクメラが賞賛する。今後はこの3者で剣術の稽古をすることになる。

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