表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄壁の運び屋 壱ノ式 ー三原色と施錠の町ー  作者: きつねうどん
【おまけ】
70/78

小話集 ①

本編に載せられなかったシーンを入れた物です。

本編と時系列は繋がっているようで繋がってないです。

あと、思いついた物を順番も気にせず書いているのでご了承下さい。

完全に殴り書きに近いです。


どっかの島のトーマスさん的なノリでお楽しみください。

失礼しました。元ネタに合わせるとケンジですね。

小話集は①〜⑥で完結となりますのでよろしくお願いします。

《出来たてのポップコーン》


「れお、ポップコーンがたべたい!」


その願いを叶える為、黄泉はポップコーンメーカーの制作に取り掛かった。


「いや、そんな事をする暇があるならもっとやる事があるだろうに」


完成品が手元に届き、苦笑いしながら児玉は説明書を手に取る。

何をモデルとしたのか?ピンクを基調としたファンシーなポップコーンメイカーだった。


「パパ、このねこちゃんかわいいね。あかいリボンつけてるよ。ひかりおねえちゃんみたい」


「そうだな、光莉は赤が好きだし。髪飾りとか凝るタイプだからな」


「誰か私の事、呼んだ?」


「どうされたんですか、その機械?変なハンドルがついてますけど」


確かに機械の側面に回転レバーがついているが、説明書を見る限りただの飾りのようだ。

望海は試しに回してみるが、何か異変が起こる訳でも無い。


「れおね、パパといっしょにポップコーンつくるんだ」


「おっ、いいね。折角だし、作った後映画鑑賞でもしようよ。飲み物も用意してさ」


「なら、沢山作らないといけませんね。早速動かしてみましょう」


材料を入れ、動かすとポンッと次第に弾ける音がする。

ゆっくりとだが、ポップコーンが出来上がっているようだ。


「...ねぇ、玉ちゃん。このレバー動かしたら気持ち的に早く作り終わらないかな?」


「急かすなよ、光莉。そんなにやりたいなら、好きにやっていいぞ。ただし、出来上がる時間は変わらないからな」


光莉はゆっくりレバーを手に取り回転させる。

次第に癖になって来たのか、中々レバーから手を離そうとしない。


「おいしくなあれ!おいしくなあれ!」


「児玉さん、大丈夫でしょうか?何か嫌な予感がするんですが」


「不味いな、中毒症状が出ている。そのうち俺達も巻き込まれるぞ」


その後


「児玉さん、もっと効率よく回してください!こういうのは遠心力を利用するんです!一回押したら、2、3回転後また押せばいいんですよ!」


「違う!こう言うのは腕を疲れさせてなんぼなんだよ!いいんだよ、不効率の方が何か美味しく出来た感じがするだろ!」


「2人共、何も分かってない!貸して!真のポップコーンマスターの私が見せてあげる!」


そのあと、映画を見る事なく。ポップコーン作製で1日を終えた。



《リアル年齢》

※前作で書ききれなかった追加シーンです。


1.望海と圭太場合


「圭太、もう朝ですよ。早く起きないと幼稚園に遅れちゃうからお着替えして、ご飯食べましょうね」


「うん、ママ!」


「圭太、そんな勝ち誇った顔をするのはやめてください。仕方ないでしょう?史実準拠なんですから」


「ママ、けいたひとりできがえられない。てつだって」


「...靴下だけ手伝ってあげますから後は自分でやってください」


「ママ、ごはんたべられない。あーんってして」


「幼稚園の先生から「圭太君はお箸の使い方が上手ですね」って褒めていただきましたよ。母親として誇りに思います」


「...」


そのあと圭太は黙って自分の箸を使い始めた。



2.浅間、希輝、白鷹、剣城の場合


「今日はテスト返却をします。今回、100点満点の子は3人!皆んな良く頑張りましたね!」


「つるぎ、分かってるよね?今回のテストけいこう」


「あぁ、おそらく。花丸、うえ木ばち、ちょうちょだろう」


「...シールかハンコのかのうせいもあるけどね」


3人にとって最早、100点を取る事など造作もない。

問題は担任の浅間先生が自分達にどう言ったサインを残すのかが議題に上がっていた。


「はい、次は剣城遼馬くん。良く頑張りましたね!」


剣城は何かに気づいたのかすぐさま、2人の元へ駆け寄った。


「こ、これは!」


「あ、あさま先生のイラスト!何このかわいいくまさん!?ずるい、アタシもそれがいい!おなじ100てんだし、こうかんして!」


「...きき、ぼくもくまさんだった。いいでしょ?」


「はくたかもずるい!」


「はい、次は成瀬希輝さん」


「はい!はい!あっ、アタシのもくまさんだ!あさま先生、ありがとうございます!」


「本当に3人は仲良しね。これからも頑張って、皆んな揃って100点取れる様に先生も頑張らないと」


そのあと、3人はめちゃくちゃテストで100点を取った。


3.朱鷺田、谷川、節子の場合


「おじさま、このえ。とてもすてき!」


「そうか、なら節子お嬢さんにあげよう」


「うわっ、またデレデレしてるよ。みどりさん、今回ばかりはやめましょうよ。蔵から絵画が無くなっちゃいますよ」


そう言うと、朱鷺田は歯切れの悪い表情をする。


「確かに谷川の言う通りだ。お嬢さん、申し訳ないがまたの機会にさせてくれ」


「いいの。せつこはこうやって、おじさまといっしょにえをみるのがすきだから。こんど、わたるさんとみずきさんをつれてきてもいい?」


「もちろん。谷川も少し節子お嬢さんを見習って教養を」


「お断りします」


そう言いながら谷川は口笛を吹き、何処かへと行ってしまった。


4.颯、隼の場合


「ゲホッ、ゲホッ。おい、隼。読書するなら自分の部屋に戻れ。風邪が移るぞ」


颯の寝そべるベッドに居座る隼を彼は背中を押し、自身から遠ざける様に促すが一向に事態が変わる事はなく、隼は淡々と読書を続けている。


「なんだよ。もしかして、拗ねてるのか?さっきも謝っただろう?悪かったって。一緒にキャッチボールする約束を破ったもんな」


「別に、颯にぃが風邪ひくなんていつもの事だし怒ってる訳じゃないから。キャッチボールだって好きじゃないし」


「じゃあ、なんで俺の部屋来るんだよ。他の奴と遊んでこればいいじゃねぇか。なぁ、隼。俺といてそんなに楽しいか?自分で言うのも何だが俺はつまらない人間だぞ。こうやって、頻繁にベッドいなきゃいけないんだから」


「俺は颯にぃが良い。颯にぃじゃなきゃヤダ」


「ははっ、なんだよそれ。...でも、ありがとな隼。お前がいてくれるから、この生活もそんなに悪くないって思えるんだ」


その言葉に隼は微笑むものの、そのあと暗い表情になり颯を抱きしめた。突然の事に彼も驚いている。


「颯にぃ、いなくなったりしないよね?ずっと、一緒にいてくれるよね?」


その言葉に颯は返答する事はなく、慰めるように隼の頭を撫でていた。


5.山岸、青葉、隼の場合


「寿彦さん、絶対1着取ってよ。隼の記録がかかってるんだから」


「分かってるよ、青葉。隼、昼ご飯の後。親子リレーだろうお父さんと一緒に行こう」


「絶対いやだ。そのせいでクラスで目立つんだよ。なんで、颯にぃいないの」


学校の運動会で不機嫌になりながらも父親の作った唐揚げを食べる隼の姿があった。


「仕方ないだろう?颯は朝、熱が出て行けなくなったんだから。大丈夫、お父さんだってこう見えて結構足速いんだぞ?」


「知ってるよ、だから嫌なのに」


集合の時間になり、指定の場所に行くとやはりと言うべきか周囲が騒がしい。2人への視線と噂話が止まらなかった。


「うわっ、来たよ!しゅんの父ちゃん!メチャクチャ、足速いんだろ?」


「兄貴もそうだってよ!いいよな、ズリィ」


「もうやだ、早く帰りたい」


「なら、1着取らないとな。速くゴールすればその分、直ぐに帰れるぞ」


「...うん」


6.颯、隼、瑞穂、咲羅、燕の場合


「しゅんくん、いっしょに帰ろう?」


「あれ、いつもさくらと一緒に帰ってるよね?どうしたの?」


「さくちゃん、剣道の習い事があるから先に帰っちゃったの」


「そっか、でも俺も颯にぃに傘を届けないと。困ってるだろうから」


その同時刻、大学の講義を受けながら窓を見る颯の姿があった。


「やべっ、今日雨降るの忘れたわ。部室に置き傘あったかな?」


講義を終え陸上部の部室に行くと、丁度燕の姿もあり目的は颯と同じようだった。


「颯先輩も傘忘れたの?いつも、弟君が届けてくれるでしょ?燕もなんだけどさ。最近の子の方がしっかりしてるよね」


校門の側にいると何故か咲羅がおり、これから向かう所だったのだろう。道着と袴を身につけ、手には傘と竹刀袋を持っていた。


「燕、お前の母さんから傘をあずかってきた」


「ありがとう、咲羅。また一緒にフルーツの乗ったかき氷食べに行こうね」


咲羅はコクリと頷いた後、道場へ向かおうとするがそれを引き止めるように瑞穂の声がする。


「あっ、さくちゃんここにいた!何で私も連れてってくれなかったの」


「颯にぃ。はい、傘持って来たよ。新しいの出しておいたから」


「あぁ、なんかサンキュー。いつもありがとな。この後は友達と帰るんだろ?気をつけてな」


「何言ってるの。俺は颯にぃと帰るためにここに来たんだから」


「あれれ?もしかして、隼君って。お兄さん大好きっ子なのかな?歳の差兄弟って皆、こんな感じなの?」


「さあな。でも、隼の事甘やかし過ぎた自覚はある。と言うより、親が煩いからな。どっちにしたって、一緒だったと思うぞ。親が煩いか、俺が煩いかの違いだろ」


そのあと、隼は構って欲しいのかずっと颯の方を見ている。

颯は決心がついたのか、溜息を吐いた後こう言った。


「分かった、一緒に帰るぞ。どうせ、いつものレコード店に行きたいんだろ?連れてってやるから」


「うん。やっぱり颯にぃは俺の事良く分かってる。帰ろう」



《赤い隼》


「うっす、おはようさん。...!?」


颯が本拠地で隼とすれ違うと、異変に気づき彼の目の前に立ち塞がり、呆然と上半身を見ている。


「おはようございます。颯先輩、体温ちゃんと測りました?朝は俺、付き添えないんで倒れられても困りますよ。健康管理はちゃんとしてもらわないと。夜は大丈夫ですけど」


「いや、今日はバッチリ平熱だったけどよ。どうした?その、赤いセーター。いつもの緑の上着はどうした?」


「これですか?昨日の夜、酷い雨だったでしょ?上着が乾かなくて、朝間に合わなかったんですよ。別にいいでしょ、たまには」


「ま、まぁ。颯様も服に気を使う趣味はないし。個人の自由だと思うけどよ。なんか調子狂うな」


そんな時、隼と共に任務に向かう予定の小町がやって来た。

隼の姿を見ると、興奮した様子でこちらへと突撃してきた。


「隼が!隼が、小町が作ったセーターを着てるの!これはもう、カップルの王道!ペアルックに違いないの!」


「お前が作ったのかよ!通りで真っ赤だなと思ったら!隼も素直に着るんじゃねぇよ!あれだろ、隼。母親の作ったクソダサマフラーとか着けるタイプだろ。やめた方がいいぞ、颯様が保証する」


「なっ、小町の愛情こもったセーターをクソダサマフラーと一緒にしないでほしいの!毛糸だって、良いものを選んで試作を何回もしたんだから!」


「いや、別に防寒できればそれで十分なんで。本当に寒かったら色とか形とか文句言ってる場合じゃないでしょ」


その言葉に2人は唖然としながらもそれはそうだなと納得した。


《揶揄い》


「えっと...次の依頼は不来方か。いつもの銀行の側にいれば、小町も来るか。それまで待つしかないな」


陸奥での依頼を終え、隼は不来方にて小町を待っている時の事だった。地元の子供達がこぞって隼の元へとやってきたのだ。


「いたぞっ!隼だ!」 「絶対、小町姉ちゃん待ってるぞ!」


「ちょっと!お兄さんは今、仕事中なんだから邪魔しないの!」


大人達が慌てて止めに入るも、子供達の言葉が鳴り止む事はなかった。


「知ってるんだぞ、2人はデートの待ち合わせをしてるんだって!」


「この後、チューするんだろ!カッコイイからって調子に乗んなよな!」


その言葉に隼はため息をつきながら、言葉を発した。


「仕事だから。ほら、危ないから下がって。これじゃあ、小町が何処にいるのか分かりやしない」


しかし、騒動は治らず。次第に彼の周りには人だかりが出来ていた。


「隼、お待たせなの!今日も隼は人気者ね。小町も鼻が高いの」


「やっと来た。ほら、行くよ小町」


人混みを掻き分け、隼は小町の手を取ると2人はその場から姿を消した。


「うわっ、山岸さんもう居るよ。何でこう言う時だけ仕事早く終わらせてくるかな」


翼が信夫山(しのぶやま)に来ると側には既に山岸がいた。

隼や小町の時とは違い、人だかりは無く静かな物だったが翼は嫌な表情をした。


「...このまま素通りするか。俺は別に山岸さんにおんぶや抱っこになるつもりはないんで。自分1人でもやる時はやるっすよ」


そのまま山岸の目の前を通り過ぎようとするが、案の定捕まってしまった。


「そうか、今日はそう言うアプローチで来たか。今まで、煮え切らない関係だったしな俺ら。新しいアプローチを自分で考えてくるなんてやるじゃないか。翼、俺はどんなお前でも受け止める準備は出来てるぞ。勿論、姿形が変わってもな」


「違う!何でいつもそんなに前向きなんですか!?ちょっと、離してくださいよ!青葉さん!お願いだから戻って来て!」


《5枚看板》


「瑞穂さん、別に良かったんですよ?私と一緒に時間を合わせなくても、まだ会議の30分前ですし」


「だって、折角私達も会議に呼んでもらったし。こう言う時こそ、お手伝いしないと。資料の綴込み作業とか、飲み物準備したりとかあるでしょ?」


そんな会話をしながら望海と瑞穂は会議室の隣の部屋へと入る。

そのにはもう既に、隼、朱鷺田、希輝がおり資料を準備している様だった。


「あれっ、皆さんお早い到着ですね。別に当番でもなかったと思うんですが」


「アタシは任務の報告書を丁度提出して今来た所。隼と朱鷺田さんは思ったより早く来ちゃって、待ちぼうけをくらってたから良かったら一緒にどうですか?って誘ったら来てくれたって感じ」


「山岸先輩達を呼ぶにも中途半端な時間だから助かった。それに偶には、身内だけじゃなくて他の人とも話さないと勿体ないと感じるからな。折角大勢の運び屋がいるのに」


その言葉に瑞穂は確かにそうだと、何度も頷いている。


「そうなのよね。私も望海ちゃんと話をしてると凄く楽しいの。私も知らない事が沢山あるなって実感させられるのよね」


そのように賑やかに話す4人を朱鷺田はジッとみていた。


「どうされました?朱鷺田さん?」


「いや、なんか。4人ともキラキラしてるなと思って。ほら、それぞれの地域の看板役みたいな所もあるし。揃うと華やかだなって、旭も連れてこれば良かったな」


「何ってるんですか、朱鷺田さん!この中で人気が1番高いのは紛れもなく貴方なんですよ。アタシ、知ってるんですからね。引退した時だって、メッチャ騒がれたんですよ。復帰して欲しいって言う声も同じくらいあったって聞いてます」


「確か、当時。旭さんより朱鷺田さんの方が人気があったって山岸先輩から聞いた事あるな。逆に騒がれすぎて、朱鷺田さんが仕事を控えないといけなかったって聞いてる」


「や、やめてくれ!それは、俺が町長の息子だからだろ?当時、話題性があったってだけで今は静かな物だよ。俺はそう言う人間なんだ」


「でも、羨ましいわ。私もやっぱり咲ちゃんの方が人気だったし。開業前と後もずっと変わらず人気で居続けるのって難しいわよね。定義も難しいし、でも依頼件数で言ったらやっぱり望海ちゃんに適うものはいないわよね」


「いいえ。私は、人気というよりも行動範囲の広さを買われてる所がありますので。運び屋はビジネスですから。需要が多いだけなのかと」


その言葉に朱鷺田は首を横に振った。


「謙遜しなくて良いぞ。実は俺も夏、花火大会の日。望海と同じペースで仕事を受けてたが本当に目が回らなくなるぞ。俺の家の近くに花火が綺麗に見える所があって、人が押し寄せるんだ。勿論、そこに行く為の依頼も多くなる。谷川は「望海ちゃんが出来るならみどり君も出来る、出来る。頑張れ」って。そう言う問題じゃないだろ。いつもの2倍だぞ、2倍」


「...確かその時、望海はその倍の依頼受けてたよな。朱鷺田さんの4倍?」


「忙しいのは慣れてますから」


その言葉に他の4人は望海に敵わないなと悟った。

話は戻り、人気者の定義はなんなのか?が議題に上がった。


「運び屋って、開業する前に期待を込めて人気投票みたいなのをやってて。その時、白鷹が1位、剣城が4位でアタシが5位だったんですよね」


「俺は7位だった。しかも理由が、俺の両親が元々肆区の人で幼い頃に家族で壱区に引っ越して来たから周囲との折り合いが難しくて馴染めていなかったから、地元からの評価が低かったって言うのが要因だな」


希輝は隼の言葉にウンウンと頷いていた。


「特に山岸さんの所は地域密着型だからさ。地元の人で助け合うっていう精神が強いんだよね。厳しい環境に身を置いてるから、お互い助け合わないとって思ってるからさ。それもまた、地域性があって素敵だよね。穏やかに生活が送れるならそれに越した事ないけどさ、ピンチの時に助け合えるのも大事だよ」


「地元から愛されるって事程、これ以上のものはない。そう言う意味では俺は誇っても良いのかもしれないな。なんとなく、4人を見てると。若々しくて、希望の象徴のように思ってたけど。俺みたいなのがいても良いよな?」


その言葉に望海は笑顔で頷いた。


「勿論です。皆さん、それぞれ役割があって個性があって良いんですから。この世にいる限り、必ず何処かのポジションには埋まります。それを自分で納得出来るか?出来ないか?で見方が大きく変わります。私達もいずれ、この立ち位置から退かなければならない時が来るかもしれません。でも、その時まで私は皆さんの希望であり続けたい。そう思います。あっ、もうすぐ会議の時間ですね。それでは皆さん。今日もよろしくお願いします」


《不労所得》

※比良坂町に現代レベルの文明があると仮定します


「えっと、次はここをタッチすれば良いんだよな。済まん、希輝。何度も教えて貰ってるのにスマホを使うのもままならないなんて。山岸は若い奴らに囲まれてるからこう言うのも直ぐ順応出来るけど、俺は違うからな」


「大丈夫ですよ、朱鷺田さん。児玉さんと光莉より全然マシです!あっ、次はこの動画アプリ開いてみてください。開いた後、試しに検索してみましょう。特に人気のユーザーは直ぐ見つけやすいので朱鷺田さんでも大丈夫」


「それ、褒めてるのか?えっと...」


希輝の指示通り、1番人気のユーザーを見てるとある事に気づいた。


「...あれ、これ俺の家にそっくりじゃないか?ふーん「マックス」って言う名前なんだな。随分と優雅に俺の家の錦鯉に餌やりしてるな」


「えっ、すご!昨日投稿なのにもう100万!?朱鷺田さん、今生配信やってるみたいですよ」


「これはもう突撃するしかないみたいだな」



「皆んな、こんにちは。マックスさんだよ。今日もお昼の配信見てくれてありがとね。昨日も好評だったお家ツアーの続きやっていくよ」


マックス並びに谷川は自室で生配信を行っていた。

普段だらしない彼女の性格が逆に癒されると動画界では好感を持たれていた。コメント欄の流れも早く、人気なのが伺える。


「リクエストがあったらコメント欄に書き込んでね。2階?ごめんね、ウチは今2階建てじゃないんだ。昔はね、あったんだけど老朽化で取り壊しちゃったんだよね。マックスさんも結構気に入っていたんだけどな。蔵?良いね、じゃあ今日はそこに行こう。今、手持ちのカメラに配信を切り替えるから待っててね」


何度もやっているのだろう、慣れた手つきでカメラを持ち自室から出た時だった。

目の前に1人の男性が現れた、勿論朱鷺田だ。


「み、みどり君!?昼間はお仕事があるんじゃなかったの!?」


「後輩達に手伝ってもらって早く終わらせて来たんだよ。随分と良いご身分だな。居候だって言うのに」


「あわわわ、ま不味い!炎上不可避だよ!ごめんね、カメラ回せないよ」


そのあと、谷川はカメラの電源を切り朱鷺田に長時間説教をくらった。


「それで、何でこんな事をしているんだ?夢中になれる事が見つかったのは良い事だが、許可もなく勝手に撮影されたら困るんだよ。この家は俺が亡くなった祖父母から受け継いだ物なんだから、谷川だって知ってるだろ?」


「はい、ごめんなさい。その...最初は下心で動画の再生回数分、収入が入るからそしたら働かなくていいじゃんって思ってて。やってる間に面白いなって。色々撮りたいなってアイデアが浮かんできて。みどり君の家はやっぱり落ち着くし、色々貴重な物もあるから皆に知って欲しいな紹介したら皆も喜んでくれるかな?ってずっと考えてたんだ」


そのあと、朱鷺田は目線を彼女からずらし溜息をつきながらこう言った。


「まぁ、世間に出してしまった物はしょうがない。今度からは俺に事前に相談するように。ちゃんと謝罪動画も出すんだぞ」


「ありがとうみどり君!心の友よ!」


そのあと直ぐ、谷川は生配信を再開し謝罪したが思ったより騒がれる事なく、周囲は穏やかだった。

それ以上に「やっぱりか」という声が多く、朱鷺田について知りたいと言うコメントまで寄せられていた。


「みどり君、めっちゃ人気じゃん。谷川さん、なんか悔しいんだけど!」


《ラーメン》


いつもの定例議会後、翼は望海に声をかけようとした。


「良いですよ、私も丁度ラーメンが食べたいと思っていたので。それで?何処の味噌ラーメンを食べにいくんですか?」


「じゃあ、近くの...いや、何でラーメンオンリー!?もっと色々あるでしょ!?と言うか、良く俺の言いたいことわかったっすね」


「だって、結構そうなるじゃないですか?だったら最初から言った方がいいでしょ?」


「ま、まあ...」


そんな時だった、山岸が2人の所に近寄り嘘泣きを始めた。


「ひ、酷い!翼、俺と言う物がありながら!俺と同期の望海、どっちが大事なんだ!」


「あっ、山岸さん。失礼しました。貴方の恋人、返却させて頂きますね」


「ちょっと!?そんな軽い気持ちでレンタルしてたんすか!?というか、勝手に恋人認定されたんですけど。ちょっと、山岸さん。何か言ってやってくださいよ」


「翼は俺の恋人じゃない。愛人だ」


「やっぱり、そう言う間柄だったんですね。気づかなくてすみません。そうですよね、山岸さんには青葉さんがいる訳で。翼はキープか」


「なんか勝手に2人で話を進めてるんですけど!?どこまでツッコミを入れたら良いんすか!?」


「そこまでだ、2人共。翼が困ってるだろ?」


その時、近くにいた朱鷺田が2人を制した。

山岸は面白くなさそうにしている。

それに反して、翼は彼にお礼を言った。


「朱鷺田さん、ありがとうございます。こう言う時、しっかりした人が側にいると心強いっすね。そうだ、このあと時間あります?良かったら一緒に飯でもどうですか?めんどくさい2人より、朱鷺田さんと一緒の方が楽しいし」


「望海、俺達。めんどくさい判定されてるけど、そんな訳ないよな?」


「当たり前です。翼、逃げるなんて許しませんよ。私達も一緒に行きます!なに朱鷺田さんに媚び売ってるんですか!?乗り替えるつもりですか!?」


「だから、そう言う所が面倒臭いんだってば!!何で自覚ないんすか!!」


ボケ倒す2人に翼はもう疲れてしまい、結局4人でラーメン屋に向かう事になった。


「朱鷺田さん、すみません。今考えたら、町長の息子さんをラーメン屋に連れて行くって俺、どうかしてますね。ステーキとかにしておけば良かったっすね」


「そんな事ないぞ、旭や谷川もラーメンが好きだから付き合わされる事も多いし。俺自身も結構好きだしな」


「残念でしたね、翼。ステーキだったら、私もお断りしてましたし。ついてくる事もなかったでしょうね」


その言葉に山岸は首を傾げた。


「どうして、ステーキだとダメなんだ?望海って好き嫌いがあるように見えないけど」


その言葉に望海は照れ臭そうに言った。


「いや...あの。実はわさびが子供の頃から苦手で。良く、ステーキにわさびや塩をつけて食べると美味しいって言うじゃないですか?自分はそれが出来ないんですよ」


「山岸さん、望海は子供舌なんすよ。アイスクリーム渡したら直ぐ機嫌良くなるし。今度、お子様ランチ作ってあげてください。それで満足するんで」


「翼、年頃の女の子にそんな事言ったらダメだぞ。それで、望海。リクエストは?お兄さんが食べたい物全部作ってあげるぞ。創作料理でも勿論、OKだ」


「本当ですか!?あ、あの。ずんだ餅とアイスクリームを使ったデザートとかでも良いですか?」


「いや、山岸もノリノリじゃないか!!望海も図々しいお願いをするな!!どれだけアイスが好きなんだよ!!」


そんな騒がしい会話もラーメンが出てくれば、何もなかったかのように皆静かになる。

後日、山岸は約束通りずんだアイスを発明し望海を大いに喜ばせた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ