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鉄壁の運び屋 壱ノ式 ー三原色と施錠の町ー  作者: きつねうどん
第8章 魔の11分
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第陸拾肆話 超越 ◆

「愛さん、私からお願いがあります。工房の私の作業台から例の試作品を持って来てもらえませんか?」


「でも、あれって一度も正常に起動させられてないじゃない。身体能力を助長させるリミッターだってLv.8が限界だって自分で」


「この状況、なりふり構ってはいられません。まずは久堂を捕えない事には、戦況も好転しない。お願いします」


初嶺の懇願に対し、愛は戸惑いながらも頷き工房へと戻る事にした。

作業台には剣が一つ置かれている。

愛はそれを手に取り、不来方へと戻ってきた。


「...これは。もしかして」


隼は何かに気づいたのか、そのあと空を見上げる。

今でも雪が降り続いているが、それがパタリと止まり黒く厚い雲が現れる。


「えぇ、節子さんが仰っていた“匂い”それをこの剣に込めました。これで、私は私を超える。あの少年ばかりに良い思いはさせられませんから」


3人で再び、北部の中心街に戻ると久堂がもう既に待っていた。


「待ちくたびれたぞ、それで答えはもう出たのか?」


初嶺は2人に目配せをし、同時攻撃を仕掛けるよう指示する。


【コード:956 承認完了 設定をLv.9に変更します】


「ほう、レベルを上げられるになったのか。それで?それだけか、朧?お前はそんな物なのか?」


「...くっ、まだです!」


【設定をLv.10に変更します】


「隼!颯!この状況は長くは持ちません。後は頼みます!」


【コード:956 承認完了 アイヌラックルを起動します】


天空から雷鳴が轟き、雷の全てが初嶺の剣の元へ集まる。

彼は歯を食いしばりながら、久堂に向けて振り被る。


「朧、それでいい。俺は今のお前を受け止めよう」


「お願い!!待って!!」


突如、風が吹き荒れる。その発生源は節子だった。

3人は誘拐された筈の彼女が目の前に現れた事に驚きながらも、隼と颯は彼女の言葉に咄嗟に思考を巡らせ、久堂の元へ向かう。


「くそっ、何であの雷を俺達が止めないといけないんだよ!面白いじゃねぇか、やってやるよ!」


「本当、節子嬢の我儘に付き合わされる身にもなってほしいよ。今だけで良いんで仲良くしてもらいますよ、颯兄さん」


【コード:005 承認完了 ペケレチュブを起動します】

【コード:005承認完了 クンネチュブを起動します】


日の女神と月の女神が化身として現れ、その雷を自分の元へ吸収していく。天を制する彼女達姉妹に最早止められない物はなかった。

そして、自分の目の前で攻撃を止められた久堂は露骨に不機嫌な顔をした。


「ここでそのまま殺してくれれば良かったのにな」


その言葉を聞きながら、節子は久堂の元へと近づいた。


「貴方よね?私を攫ったの。ねぇ、どうして私の剣を見逃したの?」


「なんの事だか?俺は知らないな」


「それだけじゃないわ。ホテルに連れて行かれた時、私だけ拘束されていなかった。亘さんも解きやすい結び方をしていたみたいだし。本当はこんな事したくなかったんでしょ?貴方は全斎に従わざるを得なかった。大丈夫、私達が貴方を守るわ。お願いだから話してはくれないかしら?」


その言葉に他3人は節子と久堂を交互に見やる。


「久堂。もしかして、音無の事ですか?」


初嶺がそう言うと、久堂は其方をギロリと睨んだ。


「お前に何が分かるんだ。俺は親友の夢を叶えてやりたかっただけだ。アイツは軍人に向いてない。俺が言える事でもないけど、アイツは臆病だ。だからここまで生き残ってこれたんだ。音無はずっと、琉球に行きたいって、沢山の人や物に出会って、言語を通じてその橋渡しをしたいってずっと言ってた」


「節子嬢、琉球っていうのはもしかして」


隼の問いかけに対し、節子は頷きながら話を続けた。


「えぇ、先程朱鷺田さん達と合流した時に教えてもらったの。肆区の側にある島々よ。...音無さんはずっと軍を出たがっていたのね。そして、親友の貴方はその手伝いをする為に全斎に近づいた。手段は違えど、外に出たいという目的は一緒だったから」


「どうだかな、今となっては全斎は鶴崎を潰す事しか考えてないように思える。あの爺さんもかなり高齢だ。もう150年近く生きてる。しかも、発作も頻繁に起きて次”アレ“が起きたら完全に復元するまで時間がかかる。いや、それ以上に戻れるかどうかも微妙な所だぞ」


その言葉に節子は今、鶴崎を全斎の元へ向かわせた事に気がついて背筋を凍らせた。


「...ねぇ、私達。今、鶴崎少将を彼の元へ向かわせたの。それって、一番の悪手だったかしら?」


「いた!皆さん!お待たせしました」


その頃望海達4人は朱鷺田達と合流、水行川に向かおうとしていた。


「久しぶりだな、旭。これでようやく、其方も3人集まったか。今、思うと考え深いな。とりあえず、皆無事で良かった」


「おにいさん、れお。たからばこもってきたよ!」


「ありがとう、零央。では、行くか。全斎の元に」


水行川のホテルに辿り着くと入り口の回転扉に、緑の血が付着している事に気がつく。

それと同時に、全斎の笑い声が聞こえてきた。


「無様だな、鶴崎。もうお互い良い歳だ、姿が戻る前に今のうちに潰しておくか」


「...これが、Dr.黄泉の言っていた魔の11分の正体なのですね。全員、戦闘準備!鶴崎少将を救出します!」




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