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鉄壁の運び屋 壱ノ式 ー三原色と施錠の町ー  作者: きつねうどん
第7章 合流
57/78

第伍拾漆話 強さ ○

「ねぇ、音無伍長。少し、聞きたい事があるのだけど良いかしら?」


「...」


「無視ね。貴方が無線機で話してた久堂っていう人、貴方の仲間なの?」


「仲間を売るような真似はしない。それに知った所でお前たちが相手に出来るとも思わないし、思えない。雑魚は精々、俺の見張りでもしてれば良いんだ」


音無は頭を垂れながら、小声でそう言った。

瑞穂は側にあった木箱の上に座り、じっと音無を見ていた。


「そうね、貴方の言う通りだわ。私は弱い、昔から周りに良く言われてた。でも、それで良いの。咲ちゃんは私の事を認めてくれた。咲ちゃん“だけ“は私の強さを、才能を知って活かそうとしてくれた。だから、それで十分なの」


その言葉に音無は久堂の事を思い出した。

軍は縦社会で、自分と同等の存在というのが居なく孤独なものだ。

そんな中、久堂は分野は違えどそれぞれの道で頑張ろうとお互い肯定出来る存在だった。


「あの、刀の男か」


「そっ、あれが咲ちゃん。カッコいいでしょ?男も惚れる、男の中の男。幼い頃から剣術の才能があって、その上努力家だから皆にチヤホヤされてそんな彼が羨ましかった。あんな風になりたいってずっと思ってた」


昔話をする瑞穂を音無は黙って聞いていた。


「私は彼とは真逆で、武闘家の家系に育ったけど女だからって理由で跡取りにはなれないって道場に入れてもらう事すら出来なかった。たまに説得して許しをもらった事もあるけど、稽古じゃなくて掃除ばかりさせられてそれでも周りに認めて欲しかったから外から稽古の様子を見て、見様見真似で練習してた」


「武術っていうのは、見様見真似で出来る物じゃない。師範がいて、教えられた事を当たり前にこなしてやっと最初の地点に立てる」


「分かってるわよそんな事、でも当時の私はそれしか眼中になかったし考えてもなかったの。当時、父の道場と咲ちゃんの通ってた剣術道場は仲が悪くて男達はずっと揉めてた。でも、そんな中咲ちゃんは違った。黙って、文句も言わずに鍛錬に勤しんでた。彼だったら私の事をどう思うか知りたかったの」


「その結果がこれか」


その言葉に瑞穂は頷いた。


「初めて会った時、自分の事を知って欲しくて決闘を申し込んで「女は切らないし、切れない」って言われちゃって。何度も説得して相手にしてもらったらボコボコにされて彼に苦笑いされたわ。でも、それから一緒に稽古をするようになってそれを父親に見られて大激怒」


「当たり前だ、本来仲の悪い組織同士の人間が一緒にいたらそうもなる。俺達だってそれは一緒なんだから」


「「お前は剣の怖さを知らないんだ」って剣術道場の生徒から奪ってきたんでしょうね。木刀で私を殴ろうとした時に咲ちゃんが来て助けてくれたの。あの時の彼の顔、忘れられないわ。師範代の父も怖気付く程の鬼の形相で、当時まだ15歳ぐらいだったと思うけど凄く頼もしく見えた。この人について行ったらどんな景色が見えるんだろうってその時は思ったの」


「だから、あの男と同じ運び屋になったのか」


「そうよ。咲ちゃんはそのあと、周囲を黙らせて私も稽古に参加出来るよう取り行ってくれた。その期待に応えたかったの。そのあと、咲ちゃんは周囲の進めもあって七星家の護衛と壁を乗り越える役目を仰せつかった。でも、咲ちゃんは決して護衛はしても壁を乗り越えようとはしなかった。彼でさえも単身で壁に向かうのは難しいと思ってたから。周囲は絶望してた。「咲羅でさえも無理だ」ってね」


「壁の前に怖気付いた、そんな訳じゃないだろう?あの男はそんな目をしていない。むしろ、やる気に満ちていた。俺の前であっても」


「咲ちゃんはね、相方を待ってたの。一緒に壁を乗り越えられる相棒を。それが私、こんなに誇らしい事はないわ。また同じように「瑞穂は相応しくない」っていう周囲を黙らせて、七星家も説得して私を率れてくれた。そこから周囲の目も変わって、皆性別や姿形にとらわれなくなった。あるのは強さだけ。燕ちゃんも海鴎君も周囲からの批判に耐えてきた。少女が銃を扱うなんて、異国の宗教を信仰するなんてあり得ないって言われてきた。でも、諦めたりする事は絶対になかった。七星家もそうだけど、私も咲ちゃんもその強さを受け入れたの」


そのあとだった、見張りの交代時間になったのだろう咲羅がやってきた。


「瑞穂、交代だ」


「ありがとう。特に問題ないわ、少し昔話をしてただけ。じゃあ、私も休憩させてもらうわね。何かあったら直ぐに呼んで」


そのあと、瑞穂は地下倉庫を後にした。

一言:瑞穂の父親、とんでもないなって思うでしょ?

実はリアルでいたんですよ、作者の曽祖父です。

面識はありませんが、年代的に兵役がある人で母親が恐れる程の人間だったそうです。勿論ですが、福岡県の人なので入れてます。

瑞穂も自身の母親をモデルとしています。

辛子蓮根は熊本県の物ですが母親が好きだったので入れてます。

亘の祖父も亡くなった祖父がモデルですね。常に「よかよか」しか言わなかったです。

リアルさを出そうとしたら、身内ネタが多くなってしまい申し訳ありません。

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