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鉄壁の運び屋 壱ノ式 ー三原色と施錠の町ー  作者: きつねうどん
第4章 決戦の狼煙
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第肆拾伍話 行方 ★

「ねぇ、聞いて亘さん!酷いと思わない、隼さんと颯さんが私に隠し事をしていたのよ!?」


「それで、君はどうしたんだ?」


「ふふっ、だからね。2人を尾行したのよ。そしたらね、とんでもない所に辿り着いて...」


「...うっ。ここは?」


2人の会話で瑞稀は目を覚まし、起き上がったのはベットの上だった。

何処かのホテルの客室のような、広々とした部屋の中に3人はいた。


瑞稀は手の痺れを感じ、腕を見ると紐の跡が見える。

しかし、拘束されていないのを見るに誰かが解いてくれたのだろう。

腕が動く事を確認し、ベットから離れた。


それに反して、節子と亘は優雅に広いソファに座り談笑をしていた。


「2人はね、ハンバーガーっていう物を食べてたの!颯さんのお気に入りのお店なんですって。...あっ!?良かった、お身体は?大丈夫ですか?」


瑞稀を見ると、2人は慌てて其方に駆け寄った。

彼女は自分より幼く見える2人も自分同様連れ去られた事に怒りを見せていた。


「申し訳ないが、客室のドアは施錠されている。花紋鏡で確認したが廊下に何人か見張りがいる様だ。貴女が目覚めるまで、ここで待機させてもらった」


「花紋鏡...聞いた事があるな。君はもしや七星家の人間かい?では、隣にいる麗しの令嬢はもしかして」


「はい。私の名は敷島節子。天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)を守る敷島家の人間です。剣はここに」


そのあと節子はワンピースのポケットからキューブ状の何かを差し出した。


「では、私も名乗らねばならないね。私の名は風間瑞稀。君達2人同様、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)を守っている。例の物はここに」


そのあと瑞稀は胸元から勾玉をくくりつけた首飾りを見せた。


「じっちゃんの話ではこの三種の神器を軍の者が狙っていると聞いていたが、お互い無事でよかった。この場所、節子嬢は知っていると言っていたが本当か?」


「えぇ、おそらく水行川の高級ホテルよ。西洋風の内装が素晴らしい事で有名なの。外からの景色を見るに最上階のようね。檜風呂がないのが残念だけど、スィートルームだと思うわ。軍の方々は私達を丁重にもてなしてくださったようね」


「ここなら、比良坂町の景色を全貌出来る。この町の結論を見届けろと言っているのかな?もしそうだとしたら相当皮肉めいているね。黙ってここで見ていろという事かな?」


節子達はお互い目線を交わし、真剣な顔つきで頷き合う。


「絶対にそんな事させないわ。敷島家を敵に回した事、後悔させてあげる」


【コード:001 承認完了 天叢雲剣を起動します】


節子の持つキューブが不規則に展開し、彼女の手元に剣が現れる。

それを一振りすれば、忽ち暴風が吹き、施錠された分厚いドアですら軽々と粉砕してしまう。


「なんだ!?何が起こった!?」 「人質を抑えろ!!」


「2人共、私の後ろに続いて」


「援護しよう、花紋鏡ならこのホテルにどれだけ軍が配置されているのか分かるだろう。節子嬢、ここの一階のフロントに全斎が待機しているようだ。手強い相手だぞ、ここはどうやら彼の支配下のようだな」


「姿形なら私の勾玉があれば、簡単に確実に気配や姿を消す事が出来るよ。【神隠し】の比ではない。私が風来坊と言われている本当の理由はここにある。さぁ、行こうか」


3人はいとも簡単に最上階から警備を掻い潜り、廊下には発生源の分からない風が吹き荒れる。それを軍人達は「神風」だと称した。

一階のフロントまで辿り着いた3人は部下達と会話をする全斎を見つけた。


「いたわね、全斎」


「どうする?このまま、彼と対峙するか?それとも、目を掻い潜って逃走するか?」


「私達3人で全斎を対応するのはかなり危険だ。彼に関する情報も少ない。誰かいないのかい?彼の事をよく知る人物は?」


このまま3人固まって動くのは危険だと思ったのか咄嗟に近くにあった従業員用のバックヤードへと避難した。


「全斎は鶴崎と対立しているの。鶴崎から何か聞けないかしら?彼に会う事が出来れば、私達にも勝機はあるわ」


「それなら望海が以前、鶴崎に会ったと聞いている。彼女なら何か彼に関する手がかりをもっているんじゃないか?」


「お嬢さん、すぐに望海に連絡を」


節子は指示通り、無線でコード:700と入力する。

しかし出てきたのは別の人物だった。


「はい、児玉。申し訳ないが今、手が離せないんだ。急用でないなら切らせてもらう」


「可笑しいね、同じコードでも個別対応出来るようDr.黄泉が設定してくれている筈なんだか。何かの手違いかな?」


しかし、節子は何かに気づいたのか構わず質問をした。


「忙しい所ごめんなさい。私達、鶴崎少将にお会いしたいの。望海さんなら何か知ってるんじゃないかって聞いたから」


「...あぁ。鶴崎の門が水行川にあるんだ。「135」と言えば執務室に繋がる。今、零央が其方に向かっている。可能なら合流してくれ、きっと力になってくれる筈だ。とりあえず、無事で良かった。怪我はしてないか?何か脅されたりとか?」


「いいえ、瑞稀さんも亘さんも皆無事よ。心配してくれて、ありがとう。そうだ、翼さんがね可愛い事を教えてくれたの。望海さん、子供舌なんですってね。わさびが苦手なんだって言ってたわ」


「そうか、翼に会ったら伝えてくれ。「後で締めるから覚悟しておけ」と望海が言ってたって」


そのあと、通信が切れてしまった。


「中々、物騒な単語が聞こえたが大丈夫だろうか?節子嬢、なぜ翼という人物を出したんだ?」


「あのね、望海さんと翼さんは同期だから結構仲がいいのよ。定例議会の後とか、たまに一緒にご飯食べに行ったりしていてずっと羨ましいなって思ってたの。彼の事を話せば、望海さんの素が見えるかなと思って。以前見せてもらった変装を使っているのはなんとなく分かってたけど、一応確認の為にね」


「だとしたら、望海達も変装しなければならない程追い詰められているのかもしれない。私達も急がなければならないね。お嬢さん、案内をお願い出来るかな?私は壱区には疎くてね」


「勿論、では急ぎましょう」



一言:颯の好きな店というのは函館市に点在する「ラッキーピエロ」というファーストフード店です。

北海道限定といえば「セイコーマート」や「ツルハドラッグ」とかも有名ですね。

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