第肆拾話 大混乱
「トッキー、雪降ってるよ。今年も谷川さんの季節がやってきたね」
「オールシーズン営業してもいいんだぞ」
「えっ、やだよ。トッキー、そこにある柿の種取って。谷川さんの好きなやつ」
2人で居間にある炬燵に入りながら完全にリラックスモードに入っていた。
朱鷺田が煎餅やお菓子が入った器を谷川の方へ寄せると彼女はそれを機嫌良く頬張っている。
「トッキー、この前。敷島のお嬢さんから美味しいお菓子もらったんだ。凄い高そうな奴。また食べたいな」
「谷川!!あれだけお嬢さんに集るなって言ったのにまだやってたのか!?」
「いいじゃん。そうだ、またお屋敷に行ってもらってこよっと。谷川さん、運び屋になって1番いいなって思った事は丁度、お嬢さんの屋敷の近くに担当が振られた事なんだよね。寄ったら色々もらえるし、コーヒーもご馳走してもらえるし。うん、久しぶりに外に出たくなってきた!トッキー、行ってくるね!」
「待て、谷川!!そんなに行きたいなら、俺も一緒に行く!!」
谷川に振り回される形で朱鷺田も敷島家の屋敷がある忍岡までやって来た。しかし...
「...なにこれ」
朱鷺田と谷川は目を見開き、唖然と屋敷の光景を見るしかなかった。
「...谷川、此処を動くな。山岸達に連絡する。アイツらならすぐ来れるだろ」
現場の状況を説明すると山岸や隼など他数名が屋敷の前に集まった。
門の前で倒れている警備員、割られた窓ガラス、中に入れば荒らされた痕跡のある部屋や家具の数々、完全に異常事態なのが目に入った。
「敷島会長!!」
そんな中、山岸が会長を見つけるも声が震え涙目になっている。
完全に放心状態といってもいいかもしれない。
ずっと、二階の廊下で這い蹲ばっているのが見てとれた。
「...節子が。...節子がいないの」
「「「「!?」」」」
それぞれ屋敷を隈なく探すも一向に節子の行方を探す事は出来ず、完全に皆怯え、恐怖し、小町にいたっては涙が止まらず呆然する他なかった。
そんな中だった、浅間が慌ててこちらへとやって来たのだ。
「山岸さん!朱鷺田さん!児玉さん達、こちらに来てませんか!?」
「浅間、今それどころじゃないんだ。敷島家の屋敷がメチャクチャで...」
山岸が説明しようとすると、なぜか話を止めようとする。
この状況を見ても尚、止めようとするからには何か訳ありなのだと感じ取った。
「希輝ちゃん達が風間家の屋敷に行ったらこちらと同じような有り様だったそうで、御当主の瑞稀さんも行方が分からないんです。だから、児玉さん達にも捜索を依頼したかったんですけど」
「トッキー、これってもしかして」
「あぁ、名家を狙った連続誘拐事件。此処まで大規模な事が出来るなんて秋津基地以外考えられないだろ。どれだけ俺達の事を侮辱するつもりだ。御三家はこの町のシンボルだぞ。いや、この町そのものと言っていい」
そんな中、当の秋津基地内部でも鶴崎派の人間は全斎の所業に頭を抱えていた。
「星野、まだ人質は見つからないのか!?」
「申し訳ありません、鶴崎少将。無線の妨害を受け、本物の情報が本部へ届かないよう細工をされているようです」
「富士沢、お前は今すぐ比良坂町の第弐区へ迎え。彼処に私の知人がいる、私の名を出せば良くも悪くも話を聞いてもらえるだろう。名は東望海、優秀な運び屋だ」
その言葉に富士沢は基地であった少女の事を思い出した。
きっと、いや絶対に彼女の事だと彼は確信した。
「はっ、了解致しました!」
富士沢はすぐさま、鶴崎が所持する門から比良坂町のへと向かう事にした。




