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鉄壁の運び屋 壱ノ式 ー三原色と施錠の町ー  作者: きつねうどん
第2章 最恐と最強の運び屋
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第参拾壱話 諦め

数日後、隼達が目覚めたと聞いた望海は協会の医務室へと訪れていた。


「隼さん、一体何があったんですが?いつも冷静な貴方が魘されるという事は何か怖い事でも起こったのでは?」


「それを聞いてどうする?どうせ、望海の事だから自分で解決しようとか考えてるだろ?やめた方がいい」


「でも」


側で話を聞いていた小町や翼も揃って首を横に振った。


「望海、こればっかりは隼の言う通りなの。私達に出来なかった事を望海が出来ると思う?」


確かに、この3人は望海と肩を並べるくらい、いやそれ以上に戦闘に長けた優秀な運び屋だ。

その3人が対処出来ない問題に自分1人が足掻いた所でどうにもならない。そんな事は分かりきっていた。


「望海、俺達は初嶺に会いに行ったんすよ。アイツと戦って、最初は良かったものの途中から対応出来なくなった。その時の状態がLV.7。最終段階まで到達してたら最悪、殺されてたかもしれない。それぐらい初嶺は危険な存在なんすよ。今思い出しただけでも背筋が凍る」


「今さっき、山岸先輩達も見舞いにきて「何も聞かないから今はゆっくり休め」って言われてる。颯先輩の体調もいいみたいだし、業務事態は何とかカバー出来そうだ。望海、この問題には手をだすな。見て見ぬふりをしてもバチは当たらないだろ」


隼の警告に望海は唇を噛み、その場で耐える事しか出来なかった。

重い足取りで喫茶店の方へと戻る事にした。


「のぞみおねえちゃん、だいじょうぶ?れおのナシたべてげんきだして」


「...うん、ありがとう。零央くんは優しいね」


子供用のフォークに刺さった梨を手渡され、望海はそれを受け取り食した。

そのあと望海はカウンター席から離れ、地下倉庫へと向かおうとする。

其方には自分達の仕事道具のある武器倉庫があった。


望海はその中から自分の道具が集まる場所に向かい、一つの刀袋を取り出す。


「本当はこんなもの使いたくは無かったんですが、仕方ありません。持っていきましょう」


そんな様子を零央は倉庫の扉を少し開け、見守っていた。


「ど、どうしよう...」


先に上に戻り、父親に相談しようと思ったがバックヤードにいるのか中々顔を出して来ない。

そうこうしてるうちに望海は上に戻って来てしまった。


「零央くん、壱区の方に行って来ますね。お父さんに伝えておいてもらえますか?」


「のぞみおねえちゃん、まって。いかないで」


そんな訴えも望海は聞き入れる事なく、喫茶店を後にしてしまった。


【こんにちは!コード:000 グー、チョキ、パーで好きなのを選んでね】


望海を追いかけるように零央は壱区へ移動して来た。

圭太から以前、3人を探す時に印を付けてた方が良いと言われたのが功を奏したようだ。

零央は二本指を出し、ナビゲートで望海の行方を探す。


「よし、此処ですよね。何度も確認しましたし間違いありません。皆さんが倒れてた場所が基地の入り口だったなんて知りませんでした」


はやり、望海は諦めきれず初嶺の元へ向かうようだ。

資料を確認しながら、暗証番号を告げ門の中へと入ってしまった。

此処まで来たら引き下がれないと思った零央も彼女に続いて乗り込んだ。


「...誰もいませんよね。初嶺は演習場にいる可能性が高い。行きましょう」


門のある執務室を抜け、廊下に出た時だった。


「おい、そこの娘!こんな所に何しに来た」


「えっ!?」


望海が声の方へ振り向くと、咲羅を思わせるような屈強な男性が目の前にいた。

至近距離でジロジロ見られ、望海は顔を青ざめる。


「何処から来た、比良坂町からか?」


「は、はい。弐区の方から」


苦笑いしながら返答すると、相手の男はパッと笑顔になった。


「そうか!そうか!同郷の友だったか!俺も幼い頃、弐区にいた。軍に入ってからは帰郷した事はないがな」


「そ、そうなのですか。あの、初嶺朧を探しているのですがご存知ありませんか?」


機嫌が良さそうなので、色々聞いてみる事にした望海だったが初嶺の話をした途端、険しい顔をした。


「初嶺?なら、娘は運び屋か?そんな貧弱な体でアイツに挑もうとは片腹痛いな」


「なっ!?確かに私は未熟な運び屋かもしれませんが初対面の貴方にそんな事は言われたくありません。それに、私には頼もしい仲間もいます。1人では無理でも力を合わせればどんな相手にも負けません。勿論貴方にも」


「ほう、その坊主も娘の仲間か?」


下を見ると、零央が望海の服の裾を引っ張っているのがわかる。


「零央くん!?どうして此処に!?」


「富士沢軍曹、会議のお時間です!」


「今行く、会議が終わっても決着がつかないなら諦めて帰れ。同郷のよしみだ。命だけは助けてやる」


そう言って富士沢は2人の元から去って行ってしまった。

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