第弐拾捌話 隠れた英雄
「零央、お疲れ様。頑張ってくれたから、沢山駄菓子買って来たよ。全部食べていいからね」
「圭太君、僕には何かないのかな?」
「れお、ママからおかしは1にち3つまでっていわれてるんだ。だから、よみせんせいにもあげるね」
菓子を差し出された黄泉は、当たり前のように断る。
「冗談だよ。これは君の物だ、日を分けてゆっくり食べなさい」
「うん!」
「にしても、おじさんに気づかれずに良く夜に連れ出したね」
「君にも手伝って貰ったが大変だったよ。望海君と同じ変装能力を使って、友達のフリをしたり、その親のフリをしたり、幼稚園の担任のフリをしたり、花火大会に行こうだの、幼稚園でお泊り会があるだの何とか理由をつけてダメな時は朝、人気がいない時間達に彼を呼んで作業して貰った」
「れお、がんばってはやおきしたよ!」
「そっか、Dr.黄泉は武器の開発者だから全部の武器を使いこなせるのか。確か、初嶺って人もそうだよね」
「そうらしいね。愛君も彼の存在が気になるらしい。資料によれば相手に応じて、対応を変える事が出来るらしいね。Lv1からLv8の八段階の微調整を可能とし、僕の作った武器の紛い物と言った方がいいだろうか?それを使いこなしているらしいね」
「Dr.黄泉としてはやっぱり悔しい?勝手に武器をパクられて」
「どうだろうね?質にもよるが、ラインナップを見るに戦闘特化にしてあるのはすぐに分かる。軍に所属する運び屋に相応しいようカスタマイズさせているのだろう。無知な技術者ではないようだ。むしろ、僕達運び屋を良く理解しているように思えるね。もしかしたら、何度も比良坂町に視察に来ているのかもしれないね」
「久堂、初嶺の話聞いたか?近いうち、比良坂町の運び屋達に引き渡すそうだ。いいのかお前はそれで」
秋津基地、音無は少年兵時代から共に過ごした親友久堂雪道の所へ訪れていた。
「何だ、音無か。別にあいつが赤子の頃から決まってたようなものだろ?育ての親の俺が知らない筈がない。人工保育で育てた動物を野生に返す飼育員と同じ心境だ」
「酷い表現だが、大体合ってるのが辛い所だな。初嶺は?あいつはどこにいる?」
「相変わらず他の奴らの相手をしているよ。本当、一般教養もさせておけばよかった。軍人だらけの環境にいたら戦闘狂になるのは目に見えてる。音無、お前たまに比良坂町に行くだろ。初嶺も連れていけ」
「御免被る。俺じゃ、初嶺をコントロール出来る気がしない。あいつはロボットみたいに無表情で何を考えてるかわからないしな」
初嶺は赤子の状態でここ秋津基地に連れてこられた。
これ自体は完全なるミスで、人魚と人間との間に生まれた男子だけがここ秋津基地に連れて来られる。
音無と久堂も含め男子は父親に似て人間の形そのものであり、人魚のように食用になれない。
比良坂町に居場所もある筈もなく、少年兵として売られ様々な基地や部隊を転々とし今に至る。
この存在を緑の血と呼ぶ輩もいる。
そんな中で初嶺朧は緑の血を持つ少年たちを乗せた運搬車に紛れて乗せられていた、赤い血をもつ子供だった。
比良坂町に戻すにしても、親の行方も分からず何度も久堂や音無が比良坂町に赴き手がかりを探しても出てこない。
仕方なく、久堂が長年世話をしている状態だった。
朧が自分と同じ壱区の北部から連れて来られたのも合わさって彼に同情していたのもある。
「俺は何度か運び屋達に会って、客のフリをして近づいた事もある。俺たちとは違って、堅苦しくなくいい奴らそうだった。表面上はな。だからこそ、アイツが別の組織に入って居場所を見つけられるのかが俺には良く分からない。環境の違う奴らと支え合って、生きていければ育ての親としてこんなにも嬉しい事はない。でも、理想と現実は違うだろ?」
「どうなんだろうな。運び屋にも色んな奴がいるだろ。わざわざ異国の地で運び屋になって、姉に対して激重感情を抱いてる変な奴もいるし。まぁ、結局はアイツがどうしたいのか?が一番大事なのかもな」




