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鉄壁の運び屋 壱ノ式 ー三原色と施錠の町ー  作者: きつねうどん
第2章 最恐と最強の運び屋
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第弐拾参話 北の地

「ここが蝦夷出版って所か。俺、初めてきたかも」


夜間にも関わらず、照明が消されていないの階が無いのを見るにどれだけ多忙なのかが目に見える。

中に入り受付をし、日向葵と面会をする事にした。


「はるばる遠くからありがとうございます。貴女が花菱姫乃さんですか?お会いできて光栄です」


「こんな状況で貴女にお会いしたくなかったのだけど、本当に私を保護してくださるの?」


「えぇ、私個人というより同じ境遇の方々が集まった施設、団体があるんです。最終的には自立した生活をして貰う事になると思いますが、しばらくは穏やかな生活が送れると思います」


「なら良かったわ。もし、私たちの手が必要なら遠慮なく言って。私や隼さんもこの地域を見回りしているし、力になれる事はしたいの」


そのあと、しばらく話をし姫乃を葵に任せ2人は出版社を後にしようとした。

しかし、外に出た後突然現れた1人の男性に節子は封筒を押しつけられた。

危機を察した隼は節子を後ろに誘導する。


「誰だアンタ」


「松浪隼、比良坂町内で一番戦闘能力に優れた運び屋そう聞いている。君に挑戦状を持ってきたんだ。私たちが育成した最恐の運び屋「初嶺(はつみね)(おぼろ)」と戦ってくれないか?その封筒に彼のデータが入っている参考にしてほしい」


それに合わせて節子は手に持っていた封筒を震えながら見ていた。


「断る。俺にそんな事をする道理がない。何かメリットがあって言ってるのか?」


「勿論、あの鶴崎真紅郎を蹴落とすにはこれが一番だ。気に入らないんだよ、彼奴は。私の出世の癌のような奴でね、早く責任を押し付けて消したいんだ」


「貴方、鶴崎と対立しているの?という事は秋津基地の関係者?」


「ダメだ、節子嬢。俺の後ろに隠れて」


しかし、情報を聞き出したい節子は話を続けた。


「軍で派閥争いが起こっているという事かしら?組織として機能していないの?貴方の格好を見るに、そこそこ良い階級の方よね?お偉いさん?」


その言葉に彼は笑い出した、そして楽しそうに頷く。


「そう、私は准将の位にいる。鶴崎はその上の少将。彼奴は組織の中で最年長であり、秋津基地のトップでもある。この全斎秀一を差し置いてだ。周りは私と鶴崎がツートップと言う輩もいるがね」


「呆れた、理解出来ないね。出世の為に運び屋を巻き込むなんて、最低だ」


「何度でも言いたまえ。私は私の目的を果たす迄だ」


そのあと、全斎は何か1人で呟いている。

いや、違う。無線を通じて誰かと会話しているようだ。


「そうか百地、よくやった。こちらも要件は終わった。すぐ帰還する。では私はこれで、秋津基地で再会出来る事を楽しみにしているよ」


「待て!」


隼が掴み掛かろうとするが、全斎はその場から消えてしまった。



「パパ、きょうもえらいひとのはなしをして!」


「そうか、そうか。良いぞ、今日は誰にしようかな」


零央を自宅で寝かしつけようとする児玉だったが内心では心の騒めきが治らなかった。

仕事を望海と光莉に任せるのはいつもの事で彼女達を信用していない訳でもない。


そうでもしないといつまで経っても心と体が休まらないのは児玉自身もよく分かっていた。


「パパ、どうしたの?...やっぱり、れおやめようかな」


「いやいや、今日はちょっと零央には難しいからどうしようかなって考えてたんだよ」


目の前の子供との時間を大切にしたい、それ以上に息子に遠慮してほしくない思いがあった。

仕事が多忙なのは仕方ない、1日は24時間しかない。

だからと言って子供との時間を作らないのは言い訳でしかない。

時間は作るしかない。それが児玉のポリシーだった。


零央は好奇心旺盛で、色々な事を知りたがる。

特に偉人の話を聞くのが好きなのだそうだ。


「今日はちょっと難しいぞ、零央は林檎は好きか?」


「うん!あかくて、まるくて、あまいの!」


「そうだな、そんな木になる林檎が落ちるのを見て全部の物が下に落ちる事、そしてそれがどんな場所でも起こる事を発見した偉い人がいたんだ」


「どうしてりんごはしたにおちるの?れおもジャンプしてもそらをとべないのといっしょ?」


その言葉を聴いて、児玉はぎゅっと零央を抱きしめた。


「そうだ、零央は賢いな。ここには引力と磁力っていうのがある。だから磁石みたいに地面に全部くっ付くって事だな」


「じゃあ、れおはそらをとべないのかな?」


「良いや、諦めるのはまだ早い。いいか、確かにS極とN極を合わせるとくっ付く。でもS極とS極は反発し合うんだ。その力が大きくなればなるほど重い物を持ち上げる事が出来る。零央なんかすぐ浮いちゃうぞ」


「ほんとう!?」


そのあとだった、2人の会話を遮るように電話がなる。


「パパ、おはなししてくれてありがとう。れお、おやすみなさいするからおでんわしてきていいよ」


「悪いな。じゃあおやすみ、零央」


零央は寝たふりをし、会話の内容を盗み聞きしていた。


「はい、児玉です。...黄泉、何でお前が。はあっ!?火災!?場所は!?」


余りの大声に幼い零央はビクッと体を震わせた。


「有り得ないだろ!?壁の水路全域!?一体誰が!?消火活動は?そうか、浅間が指揮してくれてるのか。俺も仲間の安否確認をしてから向かう。中心街は?避難場所として使えそうか?」


そのあとも数分会話をした後、児玉は電話を切った。

すぐさま準備を始め、その数分後自宅を後にする。


「パパ、だいじょうぶかな?」


不安な表情になりながらも零央は児玉を見送った。



一言:「初嶺朧」って名前だと元ネタ分かりづらいですよね。申し訳ないです。

ヒントとして、まず隼や節子に資料が渡るという事は北海道に縁があるという事。

名前はアルファベットを思い出して頂くと分かりやすいかもしれません。

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