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鉄壁の運び屋 壱ノ式 ー三原色と施錠の町ー  作者: きつねうどん
第1章 麗しの魔物
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第弐拾話 偵察と密偵

「圭太、思ったより早い到着だね」


「そういう貴女もね。師匠の教えでさ「未開の地に踏み込まないといけない時は、そもそも踏み込むな。足を使わない方法を探せ、頭と人を上手く使うんだ。動くのはそれからでも遅くない」そう言われていたんだ」


そう言いながら圭太はボウガン形の何かを取り出す。

それは比良坂町では見られない異国の道具だった。


【コード:800 承認完了 塔の守り神を起動します】


空中に放たれた矢は6つに分裂し渡鴉(ワタリガラス)へと変貌する。

その様子を瑞稀は興味深く見ていた。


「闇夜なら鴉も上手く隠れられるし、これ以上の適任はいないからね。偵察は彼らの十八番だ。頼んだよ」


圭太の指示の元、鴉達はそれぞれ配置につく。

今日の会場でもある屋敷を余す事なく監視出来るだろう。

そのあと、道具をトランクに仕舞おうとする圭太の様子を瑞稀はジッと見ていた。


「中々、年季の入った道具ばかりだね。異国の運び屋は良いものを長く使う傾向にあるのかな?」


「余りにも古い物はDr.黄泉に改修を依頼してるけどね。僕の師匠はとんでもない畜生でさ、僕を大寒波の雪山に三日間閉じ込めてサバイバル生活をさせたんだ。その時に使っていたのを今でも使ってる」


その言葉に瑞稀はいつものように笑う事なく、目を丸くした。

圭太は閉めたトランクを持ち上げた後、首を傾げた。


「どうかした?まさか、僕が亡霊だとでも言いたいの?生きてるのがそんなに可笑しい?大丈夫、師匠のティムもいたし。これでも一緒にワカサギ釣るぐらい仲は良かったんだよ。畜生なのには変わらないけど」


圭太と瑞稀は話をしながら会場内へと向かおうとする。


「それは、彼なりの教育方針があったという事かな?厳しい環境で身を置く事によって心身を鍛えるとか?」


「そうらしいよ。「足の速い奴が整った競技場で金メダルを取るのは当たり前の事だ、でも真の運び屋はそうじゃねぇどんなに雨が降っても雪が降っても槍が振っても自分の仕事をこなし、尚且つ誰かを助けられる心の余裕と強い体を作れ。東、お前はそんな運び屋になれ」って初めて会った時に言われたんだ」


「良く覚えてるね。彼の事が恋しいのかな?」


「異邦人の僕を弟のように可愛がってくれた人だからね。大事な仲間なのには変わらない、今でもそう。でも今は、故郷の問題を解決する方が先かな。ねぇ、ここって手荷物検査ある?あるなら先に仕込みをしたいんだけど」


「今日は来客も多いし、著名人もそこそこいたはずだ。武器の持ち込みは禁止されていると招待状にもある。どうするつもりだい?」


【コード:800 承認完了 5枚目の写真を起動します】


すると、すぐさま手に持っていたトランクはその場から消え失せてしまった。


「便利な物だね。こちらで言う所の神隠しのようなものかな?」


「そんなんじゃないよ。信じる物は救われる。実際は今でも手に取っているんだ。さっき持っていたトランクをイメージして、そしたら貴女にも見えてくるよ」


そのあと、2人は会場内の来客達と挨拶を交わしながら花菱の行方を探す。

しかし、彼の姿は一向に見えなかった。


「あの男は何処だ?人が多すぎる。ねぇ、客人が会場にいないなんて事ある?」


「あるとするならばVIPルームかな。そこで賭け事をする輩がいてね。彼もそこにいるのかもしれない。でも、私達が入るのは容易ではないよ」


「!?」


圭太は何か異変に気づき、周りを見渡す。


「どうしたんだい?」


「鴉が一羽消えた。何処かから奇襲を受けたみたいだ。ここって屋上まで出られる所ない?誰かが潜んでいるのかも、相当な手慣れだ。僕達の行動を妨害されたら困るんだよね」


「それなら西棟に案内しよう。確かそこなら屋上に行けたはずだ」


「じゃあその前に姉貴達に連絡を入れておこう。予備の1羽がまだ残ってる。何かあったら援護を頼もう」


圭太はすぐさま近くのバルコニーに向かい、鴉の足に手紙をつけた。

すぐさま、鴉は彼女達の元へと飛び立って行く。

そのあと2人は西棟へと向かった。



一言:圭太の師匠の元ネタは同じく、日本製でイギリスで活躍する高速鉄道「ジャベリン」です。

欧州で大寒波に襲われた時、イギリスとフランスの海峡トンネルでユーロスターが立ち往生してしまい乗客と一緒に十数時間閉じ込められてしまいました。

イギリス側から救助車両を出しましたがことごとくユーロスターと同様動けなくなりダメかと思ったその時、唯一稼働できたのが「ジャベリン」だったそうです。

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