表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄壁の運び屋 壱ノ式 ー三原色と施錠の町ー  作者: きつねうどん
第1章 麗しの魔物
17/78

第壱拾漆話 救出

「姉貴、まだ帰らないの?」


「えっ?」


「どうしたの?望海、もしかしてまだあの子の事考えてるの?」


勉強会も終わり、3人で机の片付けをしている間、望海は姫乃の事を考えていた。


「...ちょっと、気になっちゃって。姫乃さん、数日学校に来てないから」


「姉貴の直感って結構当たるからな。そこまで心配なら見舞いにでも行く?」


「あっ、じゃあ私も一緒に行く!玉ちゃん、まだ果物残ってたよね?それを持っていこうよ」


3人は喫茶店を出て、すぐさま壱区の花菱家の別邸に向かった。

玄関の扉をノックすると、エプロンドレス姿の女性が出てきた。

その姿を見るに家政婦なのが分かる。


「どちら様でしょうか。旦那様、お嬢様のお知り合いの方ですか?」


「こんばんわ、私は夢野光莉。姫乃と同じ女学院の生徒なの。彼女が病気で学校に来てないから望海が心配してて」


その言葉に合わせて、望海と圭太は前に出てお辞儀をした。


「こんな夜更けにすみません。姫乃さんの同級生の東望海です、こちらは弟の圭太。お見舞いに来たのですが、姫乃さんに会う事は出来ますでしょうか?」


持参したフルーツの籠を差し出すが家政婦に断られてしまった。


「お気遣いに感謝します。ですが、旦那様がどんな方であろうとお嬢様と客人を接触させるなと言われておりますので」


「僕としては面会しなくても良いからドア越しで話だけでもさせて貰えると嬉しいんだけど。この前、贈り物も貰ったし。お礼も言いたいんだけどな」


家政婦は目を泳がせながら戸惑っている。

しかし、それに意地悪をするように圭太は更に続けた。


「僕を誰だと思ってるの、東圭太だよ?彼女は僕のファンなんだ。僕が来て迷惑な事なんて絶対にないよね、違う?君は家政婦だ、主人の喜ぶ事をするのが貴女の使命だと思うけど?」


「圭太!言って良い事と悪い事があります。彼女も困っているでしょう?」


しかし、想像に反して家政婦は首を横に振り諦めたように口を開いた。


「ごもっともな意見です。私は自分の保身に走って、旦那様の行動を傍観していました。お願いです、どうかお嬢様を助けて頂けませんか?詳しい話は中でさせていただきます」


3人は豪華な客間に通される、天井にはシャンデリアが設置され重厚な赤い絨毯とアンティークなソファ、とても別邸とは思えない程の作りだった。

家政婦から座るように促され、席に着く。


「監禁ですか!?どうして!?」


そのあと望海は姫乃がいるであろう、奥に見える2階への階段を見やる。


「はい、先日お嬢様と旦那様が晩餐をされた際に口論になり監禁されてしまったのです。正直言って、お嬢様はかなり危険な状態です。部屋の鍵は旦那様が持っていますし、私は不憫に思い窓から配膳を試みたのですが、お嬢様は呼びかけにも応じません」


「じゃあ、私達としては姫乃お嬢様を救出するか。そのクソ親父から鍵を取り返せばいいのね。弐区の運び屋舐めんなよ、絶対に救い出してあげるんだから」


「光莉。ですが、私にも非があります。彼女を送り出した時、嫌な予感がしていたんです。すぐに戻らず、その場に止まって様子を見ておくべきでした」


「困ったね。まず、彼女を救い出すにしても居場所をあの男に勘づかれたら本末転倒だ。彼女を保護する場所と、それ以上に男と彼女を引き離さないといけない。何かいい案ないかな」


3人で策を考えている中、家政婦は手帳と書類を持ってきた。


「1週間後、参区の方で富裕層を集めた晩餐会があるそうです。旦那様も出席予定で、そこに入り込めれば鍵を手に入れる事もその内にお嬢様を救出することも可能です」


「成る程、二方面作戦という事ですか。壱区の方で姫乃さんの救出。

その間に参区で囮役が彼の相手をすると。ですが、問題があります。その富裕層の集まりに私達子供が参加出来るとは思えません」


「このような会合にはパートナーの方を同伴される方もいらっしゃいます。このリストの中に知人の方がいらっしゃれば説得して同行させて頂く事も不可能ではないかと」


望海は戸惑いながら、来客リストを確認する。


「...あ」


「望海、どうしたの?」


「この方だったら私達に協力して貰えるんじゃありませんか?」


その指さした先には「風間瑞稀」という名前があった。

一言:この作品、元ネタ的にフルネームを描写する機会がなかなかないんですよね。考えてはあるのですが、全部出す事は今後も難しいそうなので、後書きかキャラクター紹介の時に書き込みたいと思います。

今回は東海道新幹線の「のぞみ」「ひかり」「こだま」から。


「のぞみ」=東望海

(苗字は圭太の元ネタ、イギリスの高速鉄道「AZUMA・あずま」との二重ネームです。元ネタ的には「希望」が正しいですね)


「ひかり」=夢野光莉

(「光」一文字だと「ひかる」と読み方が混合するのであえて分けています。夢野は開業時のキャッチコピーの「夢の超特急」から)


「こだま」=児玉信二

(元ネタ的に「木霊」の表記が正解なのですが人名にした時しっくりこなかったので同音異語の「児玉」にしました。信二は前話でも紹介しました、「新幹線の父」と言われた十河信二氏から名付けています)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ