背徳の鳥籠
ヒロインレイラはNANAのレイラと
カノ嘘のマリをイメージして書きました
第一話 硝子の鳥籠
朝が来た
どうして毎日 朝はやって来るのだろう
私は永遠の闇の中に居たかった
何も見えなくていい
ただ 貴方の腕の中で飼われていたかった
私の名前はレイラ
32歳の人妻だ
子供はいない
今 不倫をしている
相手の名前はカイリ 25歳
デザイン関係の仕事をしている
そして 18歳のJKと付き合っている
どんな子なのか
一度 聞いた事がある
すると カイリは
束縛が嫌いな子で
将来はデザイナーになるという事を話してくれた
何者であっても 私と天秤にかけるくらいだから
イイ女なのだろう
カイリに会いたい
会いたい とラインを送った
ハートの絵文字なんか要らない
そういうのは好きじゃない
JKも きっと そうに違いないと
勝手に決めつけた
カイリは すぐに来た
それは分かってた事だから
返信は要らなかった
イイ子にしてた?
カイリは 寝起きでぐしゃぐしゃな
私の髪を撫で回した
うん
会いたかった
一昨日 会ったばっかじゃん
そう言って笑った
カイリは会いたくなかった?
会いたかったよ
カイリの腕の中は心地いい
硝子のように澄んだ細胞の中で
私は飼い殺されたかった
旦那のことは どうでも良かった
好きでも嫌いでもない
何故 私は結婚したのだろうか?
子供が出来た訳でも
勿論 金目当てでもない
レイラ!?
何考えてるの?
何でもない
行為が終わるとカイリはすぐに帰った
家ではJKが待っているだろう
私もカイリを束縛したくはなかった
学校にも行かずカイリを欲しがってる
18歳の女と 私はカイリを共有してるのだ
カイリはシャワーも浴びず
JKを抱くのだろう
そして それは ありきたりのSEX
私が何故 結婚したか?
それは カイリに飼い殺される為だ
私は背徳感に酔っている
JKが手に入らないモノを私は持っていた
第二話 真綿の鳥籠
私は13歳の頃からモデルの仕事をしていた
春休みに友達と原宿で買物をしていたら
モデルエージェントに声をかけられ
カメラテストを受けてみないか?と誘われたのだ
その時はモデルになりたいという気持ちは
さほどなかった
私はアーティストを目指していた
でも 一緒にいた友達に
レイラ 可愛いんだからモデルになれるよ
モデルからアイドルになれる可能性だって
捨てたもんじゃないわよ!と言われ
私はアイドルになりたかった訳ではなかったが
軽い気持ちでカメラテストを受けに行った
するとそこには隣のクラスのゼリイも
カメラテストを受けに来ていた
ゼリイはモデルになりたくて
親のコネで来たらしい
ゼリイはレズビアンでメンヘラだったが
肌が透けるように白く 体型も華奢で
すっぴんでもメイクしてるかのような
人形みたいな綺麗な顔をしていた
私は至って普通のコギャル
ゼリイが一緒じゃ絶対落ちる
運が悪かったと思って諦めよう…そう思った
ところが ゼリイと私以外にも
綺麗でお洒落なお姉さんが達か何人か
カメラテストを受けたのだが
合格したのはゼリイと私だけだった
まだ幼かった私達は
それまでただの顔見知りで
話などした事もない仲だったが
抱き合って喜んだ
もしかしたらモデルからアーティストに
なれるかも?と
あざとい夢を見ていたのだ
エージェンシーにはドミトリーがあったのだか
ゼリイはマンションで一人暮らしをしてたので
私もそこに一緒に住むことになった
何故 中学生の子供が
マンションに一人暮らしなのか謎だったが
ゼリイの母親が再婚したばかりで
再婚相手と一緒に住むのが嫌だと言ったら
同じマンションの一室を
両親が借りてくれたらしい
モデルの中で 私達と一番歳が近かったのが
15歳のラウラだった
ラウラは売れっ子で
いつも雑誌の表紙を飾ってたし
男装することもあった
ラウラは12歳からモデルをやっていて
ゼリイと私は彼女をラウ姉と呼んでいた
あの頃は ラウ姉とゼリイと私
じゃりん子トリオとか言われてたな
ゼリイも私もラウ姉に憧れていた
ラウ姉は時々ドラマにも出ていた
女優になりたいのか聞くと
やらないよ
そんなに稼げないよ 女優なんて
よほど一流じゃなきゃ
私はパリコレにも興味ないし
20歳くらいまでには
普通に結婚したいなあ
えー!? ラウ姉 勿体ないよ
30過ぎたってモデル続けてる人いるのに
まあ 女優が無理なのは認める
ラウ姉 演技下手だもん
ちょっとゼリイ 失礼だよ
下手だって人気あるんだからいいじゃん
はあ?
レイラのほうこそディスってるじゃん
ラウ姉に謝りなよ
お前が謝れよ
ストップ 二人共
あのねー 言っとくけど
私 演技なんて本気でやってないからね
女優にはなりたくないから
ラウ姉は いつだってカッコよかった
ゼリイと私の憧れだった
それなのに
ラウ姉は16歳の時に妊娠した
相手は誰なのか分からなかった
きっと中絶すると思っていたが
ラウ姉は一人で女の子を産み
その子を施設(乳児院)に預け
再びモデルエージェンシーに返り咲いた
ラウ姉は まだモデルを辞める時期じゃないから
もう少し稼いだら
子供を迎えに行くと言っていた
私は18歳でモデルを辞めた
辞めた一番の理由はゼリイだった
一緒に生活する事も
仕事で顔を合わせる事も
苦痛になっていた
ゼリイは もともと拒食症だった
食べても太らない体質だから
ダイエットなんか必要なかったのに
何故か食べられないでいた
痩せ過ぎたゼリイは
鎖骨が見える洋服は着せて貰えなくなった
リスカしたり 抗うつ剤や眠剤を過剰摂取して
撮影中に倒れ 救急車を呼んだ事もあった
みんなはまだいいよ
家に帰って面倒をみるのは私だ
ガチガチ震えが止まらないゼリイを
一晩中 抱いていたのは私だ
そもそも私はアーティストになりたかった訳で
こんな場所に居たって
歌を聴いて貰えるチャンスなど
5年間 一度もなかったし
いつまでも こんなところに居て
一体全体 何の価値があるのだろう
毎日 似たような服を着せられ
カメラの前でクソおかしくもないのに笑う
これが私のやりたかった事か?
馬鹿馬鹿しい
私はモデルからもゼリイからも逃げたかった
そして その頃 たまたま
フリーカメラマンのマコトに言い寄られ
何もかもが面倒になっていた私は
逃げるように結婚したのだ
もう勢いでしかなかった
当時 マコトは20歳で無名だったが
今は雑誌やテレビにも出るような
カリスマカメラマンになっていた
海外の仕事も多く
ニューヨークに家がある為
殆ど別居状態だった
14年間の結婚生活
私はマコトとどれほど言葉を交わしただろうか?
マコトは私よりゼリイが好きだった
けど ゼリイはレズビアンだった
それだけのことだ
第三話 鋼の鳥籠
私は いつでもカイリに会いたかった
目覚めてから眠るまで
夢の中でも抱かれていたかった
カイリと出会ったのは5年前
その頃 カイリはスタイリストで
ファッションショーに来ていた
私にはもう縁のない世界だったけど
たまたま昔の知り合いに招待状を貰い
暇過ぎて行ったのが間違いだった
この人に飼われたい…
そう思ったのだ
モデルやってたでしょ?
えっ もう10年くらい前だよ
キミいくつ?
知らないよ 絶対
知ってるよ
姉ちゃんの雑誌で見たことあるもん
そうなの?
お姉さんもモデルなの?
違うよ 姉ちゃんはデザイナー
今頃ニューヨークかどっかにいるんじゃない
ニューヨーク げろげろ
あいつと同じとこに住んでるのか
まあ ニューヨークは広いし
会う可能性は少ないかな
レイラさんでしょ?
俺ファンだったのに
急に辞めちゃってショックだったよ
私もショックだよ
キミが欲しい ものすごく
その日 私はカイリを誘惑した
そして 愛人になった
恋人がいますと心のページに綴りたかったが
カイリには不特定多数の女がいそうだったし
私には旦那がいたから
少しの時間でも
カイリと一緒にいられることだけで
満たされていた
私の方がJKより先にカイリと出会ったのに
今でも私は愛人=セフレ
JKは恋人=彼女だった
そんなある日
マコトが突然ニューヨークから帰国した
急にどうしたの?
今 ニューヨーク大変なんだよ
新種のウィルスとかで
飛行機が動かなくなる前に帰って来た
あーそう ウィルスって?
レイラ
そろそろ子供作らないか?
えー 要らないよ
ダメだよ
作るなら今しかないって
女の子が生まれたらモデルにしようよ
勿論 男の子でも
俺達の子供ならカリスマモデルになれるって
レイラが大変ならベビーシッター雇えばいいし
一体 こいつは何を言ってるのか?
そもそも私はモデルからアーティストに
なりたくてモデルを続けてた訳で
その可能性もなくなって諦めた訳だし
自分がやりたくなかった職業を
子供にやらせる?
私がモデル志望じゃなかった事など
マコトは忘れているのだろう
カイリに会いたかった
いつの間にか私の足は
カイリのマンションに向かっていた
JKが現れてから
カイリのマンションで会う事は
一度もなかったのに
すると
マンションのロビーに
カイリが女と一緒にいるのを見た
JKではなかった
私と同じくらいの歳の女
一体 どういう事なんだろう
自分がストーカーみたいな気分になり
引き返す事にした
まだ 昼だけど酒でも飲みに行こう
マコトに抱かれるなんて真平だ
自棄になっていた
その時 背後から
聞き覚えのある懐かしい声が聞こえた
レイラ? レイラでしょ?
ラウ姉!?
何故 気づかなかったんだろう
ロビーでカイリと会っていたのは
ラウ姉だった
レイラ 変わってないね
あどけないって言ったら失礼だけど
相変わらず可愛い
ラウ姉こそ相変わらずだよ
本当にビックリ 偶然だね
レイラ 突然仕事辞めちゃうんだもん
連絡先も分からないし寂しかったよ
ごめんなさい
あの頃いろいろあって
自棄になってたというか
(今もそうだけど)
ラウ姉は? モデル続けてるの?
まさか レイラが辞めた後
実はゼリイと私も辞めたのよ
モデル続ける意味も分からなくなったし
辞めた後 キャバクラとホストクラブを
一緒にしたみたいな店を始めたの
ゼリイとね
ゼリイ 元気なの?
うん 元気だよ
今 ホストと付き合ってるよ
そのホスト もうすぐ女になるんだけど
やっぱりゼリイはレズビアンなんだね
元気なら良かった
元気だよ
レイラは? 元気にしてた?
うん 相変わらず
さっき旦那がニューヨークから帰って来た
そうなんだ
マコトさん忙しそうだよね
私もさ モデル辞めてすぐ
娘を引き取りたかったけど
なかなかそうもいかなくてさ
面会は毎週行ってたから
まあ ずっと親子ではあったけど
一緒に暮らすようになったのは最近なんだ
けど 娘が学校休みがちで
彼氏のところに入り浸ってるから
今 説教しに行ったところ
責任取れるなら何したっていいけど
留年だけはするなってね
あの子 デザイナーになるって言ってて
年上の彼氏もデザイナーなんだけど
一年遅れたら時間の無駄じゃん
流石だよ ラウ姉
立派なお母さんだね
全然 普通だよ
レイラも一度 店に遊びにおいでよ
うん 絶対行く
ラウ姉に会えたのは嬉しかったけど
一体全体 これは何の呪いですか?
ラウ姉が16歳の時に産んだ娘が
私の天敵だったなんて
もう カイリと別れよう
身を引く訳じゃない
マコトとも別れよう
何もかも排除したくなったのだ
排除…
なんて甘美な響きなのだろう
私は自分という名の迷宮の鳥籠の中で
永遠に飼い殺されるだろう
the end
まだ完結してないのですが
後半は
毒気のあるモノを目指して書きます