別垢が秒でバレました。どうしましょう
謎サト氏です。今回から新作を投稿させて頂きます
Vtuber────生まれた理由、正式名所は言えないが、2016年12月に生まれたバーチャルな存在。その分類は大きく分けて三つ。企業勢・サークル勢・個人勢だ。どの分類に属するVtuberを応援しようとその人の自由だから俺から口出しはしない。ただ、誰もが知ってる企業に所属するVtuberの配信はコメント数が桁違いで初見コメしても拾われる事はほぼないとだけ言っておこう
「マジか……」
2021年12月某日。俺、相沢来駕は自室で大絶賛驚愕中である。tubuyaitaのアカウントがバレた……別にバレてもいいのだが、秒でバレるだなんてこんな事ある？
「バレんの早くね？」
パソコンの前で固まる俺氏。その原因となった人物はというと……
『ポチに隠し事するとは100年早いのじゃ！』
誇らしげにしていた。多分、声の主は画面の向こうでドヤ顔しているに違いない。改めて自己紹介しよう。俺の名前は相沢来駕。WEBサイトが作れるニートで年齢は20歳。趣味はVtuberの配信へ遊びに行く事と人をビックリさせる事。普通の人は推し活って言うとファンアートを描いたり、ファンボックスの支援をしたり、グッズが出たら購入したりなのだが、俺の推し活は違う。WEBサイトを作る技術を応用してtubuyaitaやYouTuneのアイコンを動かす事。と、これはあくまでもVtuber関連であり、俺にはもう一つの趣味がある。イラスト投稿サイトにイラストをあげる事だ。まぁ、イラストの方は気まぐれ投稿でアニメキャラではなく、オリジナルだから正直、人気があるかと聞かれたら多分ない方だ。Vtuber関連の呟きをする垢とイラスト投稿を告知した垢。目的によって使い分けていたのだが……イラスト投稿告知用の垢がバレてしまった。推しの1人であるポチこと犬山ポチに。彼女は所謂犬系Vtuber。tubuyaitaでフォローされたから返したら直接メッセージを送ってきた変わり者だ
「普通フォローしてすぐに特定するかよ……」
タイミングがタイミングだけどよ……こんなに早くバレるか？ 事の始まり────と言うのも仰々しい。なに、簡単だ。ポチが「自分はアカウント名変えたところでリスナーをすぐに見破れる」と豪語し、マジで見破れんのか？ と疑った俺がイラスト投稿告知用垢でコイツをフォローしたところ秒で見破られたってだけだ。言葉にしてしまえば何のこっちゃないのだが、直面してみると恐怖や焦りの感情はなく、ただただ脱帽するのみ。例外はあるのだが、このVtuberにならバレたところで無問題。恐れる事はないのだ
「はぁ……」
色々な意味で言葉が出ない。聞いた話で申し訳ないが、Vtuberはエゴサ用のタグを付けて呟かずともリスナーの呟きを監視してる。アイコンを動かした時は原則として動かしたVtuberの専用タグを付けて呟くが、時たま普通の呟きに返信が来たり、別のVtuber専用のタグを付けた呟きに本人ではなく、別のVtuberから反応があったりする。Vtuberの監視力が半端じゃないのは間違いじゃない。別垢が秒でバレるのは意外だったけどな
俺は上手く言葉が出ず、脳死で『特定早ぇｗｗｗ』とコメント。もうね？ なんて言っていいか分からんのよ。複数アカウント持ってても動かしている人間は1人。方法がないわけではないが、複数のアカウントで同時にコメントを書くだんて芸当は端末が複数ないと不可能なのさ。俺の場合はパソコン1台あれば2つの垢でコメントできるがな
「マジVtuberって何なんだ……」
Vtuberをやる人間というのは恐ろしい。エゴサだけしてればいいのにリスナーの事をとことん調べるだなんて……一歩間違えればストーカーだぞ？ いや、もうストーカーなんだけどよ
「わけ分かんねぇよ……」
この日、俺はVtuberというものが分からなくなった
あの秒でバレた日から数週間後。年が明けて2022年1月某日22時。残念ながら1月1日ではないが、明けましておめでとうとまだ言える。世間じゃ正月だが、配信してる人はしてるし、見てる人は見てる。断じて配信者、リスナー共々陰キャだってわけではない。たまたま暇なだけだ。その辺は勘違いすんなよ？ と言い訳を終えたところでtubuyaitaから配信開始の呟き通知が来たからYouTuneを開く。ゴメン、嘘吐いた。自己紹介でWEBサイトを作れると言ったな。アレはマジだ。ただ、YouTuneを開くと言ったのは嘘だ。正確にはVtuber1人1人のチャンネルにダイレクトで飛べるページから配信してるVさんの名前をクリック。自動で別タブを生成し、そのVtuberのチャンネルに直接飛び、黒くなってる『ライブ』の動画をクリックした。言っとくが、今回は年明け前に別垢が秒でバレた犬山ポチではなく白葉うる。モチーフは葉っぱで自称・清楚なお姉さん。実際は台パンあり、下ネタありであるリスナーのコメントがキッカケとなり、技術者達の手によってモモンガの姿を手に入れたネタ満載の女性Vtuber。彼女にはモモンガ以外に別の姿があり、サークル所属でユニットを組んでいるのだが……その話は別の機会にするとしよう
「まだ待機か……コーラでも持ってくるか」
配信に飛ぶと動画の下部に『白葉うるを待っています』と表示されていた。tubuyaitaの告知では22時から配信だったけど、当の配信はまだ開始されていない。別に仕事じゃないから時間キッカリでなくともいい。Vtuberも所詮はただの人間。彼ら彼女らにだって生活があり、配信が仕事ではないから時間を守る必要はない。リスナーもリスナーで配信開始からいる必要はないのだ。俺は部屋を出るとキッチンへ向かった
『白葉はせせせせせせせせ清楚……だよ……？』
コーラを持って戻るとパソコンから癒しを誘うBGMと透き通るような声がした。配信始まってたか。動揺しているところを見るにリスナーの誰かに“清楚”じゃなくて“性楚”って言われたようだ。まだ彼女を知ってから1年経ってないが、何を言われたら動揺して見せるかは簡単に解る。清楚を性楚って言われた時と胸の話をされた時だ。白葉うるの立ち絵は胸部が小さい。よーく観察すれば若干膨らんでいるように見えるが、如何せん衣装が和服で帯の締め付けで胸があるように見えてるだけと錯覚する。しかし、本人は巨乳だと言い張るのだが、曰く脳死で喋っているらしく、よく墓穴を掘る。それをどうにか誤魔化す時にどもる。今回は清楚で動揺して見せてるから胸の話をしてるわけじゃないのは聞くまでもない
「自分で清楚芸人名乗ってるんだよなぁ……」
白葉うるのtubuyaitaのプロフィールには“清楚芸人Vtuber”という何とも言えない一文があり、その……なんだ……語彙力が少なくて申し訳ない。今の俺には矛盾してるしか……
「Vtuberは自分で清楚だって言えばそれまでなんだよなぁ……」
ガチレスしたかないが、リアルの清楚と違ってVtuberは自分が清楚だと言えば誰が何と言おうと清楚だ。多くのVtuberは自分が清楚だと言って聞かず、時々引くのは黙っていよう。溜息を吐きながらパソコン前に座ると俺は『こんばんわ』と一言コメントを打った
『ライさん、こんばんわ』
動揺してたのはどこへやら。すぐに挨拶が返ってきた。そこから俺は流れを乱さず、当たり障りのないコメントを打った
配信開始からしばらく。話は複垢の話題へと移り変わり、コメント欄には『俺の複垢は全部バレてるよ』とか『白葉ってそんなに複垢持ってたの？ｗｗｗｗ』とかのコメが多くなっていた。そんな中、俺はバカなコメントをしてしまった
『裏垢で思い出したけど、白葉の事別垢でめっちゃ清楚だってツイートしたら白葉から「めっちゃ清楚です！」って返信来た事あったわ』
バレる事はない。そう思って俺は何ヶ月か前にイラスト投稿用垢で白葉の事を清楚だと呟いた事実をコメントしてみた。何、似通った文章を書く奴は山ほどいる。それに、今の俺はアイコンを動かすライでイラスト投稿者じゃない。バレはしないだろうと高を括っていたのだが……
『いや、絶対それライさんだと思ったわ。結構前でしょ？ ３か月とか』
なぜバレてる？ 絶対にバレてないとは思ってなかった。だが、バレてないと思っていた。ライの方は監視リストに放り込まれてるから白葉がtubuyaita覗いてたらたまにいいねが飛んでくる事もあった。だから普通の呟きも見られてるとは思っていた。あっちの垢も俺だとバレてるのは正直────いや、かなり意外だ
『まさか白葉にも秒でバレてるとは思わんかったｗ』
バレてるなら隠す必要はない。無駄な抵抗ほど無様なものはないと思い、名前は出さず自白した
『そんな気はしてた。何て言うか、文章で分かった』
彼女から返ってきた答えは俺が数年前にとある掲示板でよく目にした回答だった
「マジかぁ……」
配信外でリスナーがVtuberを見てるのは知ってる。逆にVtuberがリスナーを見てるのも知ってる。ただなぁ……あくまでも普通の呟きを見てるのであって文章まで見られてるとは思わんかった
俺はパソコンの前でガックリと項垂れるしかできない。Vtuberマジ恐ろし過ぎるだろ……皆さん、Vtuberに別垢が秒でバレました。どうしましょう？
今回は最後まで読んで頂きありがとうございました
