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わかりにくい詩たち

シロツメクサ

丘の上にシロツメクサが生えていた

お弁当とおやつを入れたバスケットを持って行った

笑うママの頭にシロツメクサの冠を載せた

ママは女王様

あたしはお姫様


丘の上にブランコを置いた

ピンクと白のプラスチックのブランコ

近所のアヤちゃんも一緒に来ていた

一人乗りだからかわりばんこ

三人で幸せ三等分


シロツメクサの冠の編み方をアヤちゃんに教えた

すぐに覚えて『もっと、もっと』作りたいと言うから

それなら世界よりおおきな冠を作ろうと

ママが安心してその中で眠れるほどの冠を作ろうと

あたしは小さな旅に出た


「あんまり遠くに行かんのよ」ママの声が背中に聞こえた


シロツメクサはどこまでもあった

丘を覆い尽くしてどこまでもあった

四つ以上葉っぱのあるやつも探しながら

なるべく頭が丸くて白さが綺麗なのを集めた

丘は丸くてどこまでもどこまでも続いてるように見えた


いつの間にか遠く離れていた

振り向くとママもアヤちゃんも見えなくなっていた

あたしは急いで振り返って

駆け足でクローバーを踏んで

小さな足で

息を切らして


疲れて止まって自分を見ると

あたしの手指はこんなに長かったっけ

あたしのてのひらはこんなに固かったっけ

丸かった丘もいつの間にか平らになって

小さくなってあたしの足下にあった


元の場所がわからなくなって

二人ともどこにもいなくて

ブランコもどこにもなくて

おおきな音に驚くと

ショベルカーが土を掘り起こしていた


シロツメクサと土砂が混じり合って

座り込んだあたしの眼下に消えていった

絶滅寸前の小さな花を集めていると

ぽつんとそこで迷子になっている小さな女の子を見つけた


小さな手であたしの頭に冠を載せてくれて

ママが女王様だよって笑うから

つられて私も笑った

あなたはお姫様ねって





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― 新着の感想 ―
[良い点] 気が付かないうちにいつの間にか大きくなっていて、今度は自分が花冠をもらう側になっていた……喜ばしいような、悲しいような状況ですね。 シロツメクサの丘が消えてしまったことは残念ですが、救い…
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