表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

第六話 リアルダウト

お待たせしました!

いよいよ徹の『嘘』に迫る第六話!

寧香の疑いとは!?

徹のブラフは妹に通じるのか?

そして華澄の思いの行方は?


それでは第六話『リアルダウト』お楽しみください。

・トランプラフ・ 第六話

〜リアルダウト〜


「そ。ここからは私と華澄さんの質問に正直に答えてもらうわ。嘘だと私が判断したら、容赦なく『ダウト』って言うから」


 寧香のその提案にうろたえる徹。


「な、何でそないな事……! た、楽しく遊ぼうや! ほな今度はドンでも」

「お兄ちゃんの関西弁は本物?」


 構わず突きつけた寧香の質問に、徹が、そして華澄も顔色を変える。


「ほ、本物ってどういう意味や……? その定義からはっきりせんと……」

「じゃあこう聞こうか? お兄ちゃんはその関西弁を関西で身に付けた?」

「……う……」

「そんな訳ないよね? 私達家族は関西で暮らした事はないし、親戚もいない」

「!」


 華澄は言葉にできなかった、いや、しようとしなかった違和感の理由に気が付いた。

 妹である寧香が、関西弁どころかなまりすらない標準語で喋る事。

 ブラフの勘違いに気付いた時、思わずこぼれた徹の標準語。

 心を許した理由の一つが大きく揺らぎ、青ざめる華澄を見て、徹は慌てて取り繕う。


「ま、まぁほらお笑いを見とるうちに、こう自然にやな……」

「ダウト。図書館で関西弁についての本、片っ端から借りてたよね」

「し、知っとったんか……」


 寧香は淡々と徹を追い詰める。


「じゃあ何でそこまでして関西弁を覚えたの?」

「え、ほ、ほら、関西弁ってウケるやろ? だから……」

「ダウト。任太郎さんから、似合わないからやめとけ、って言われてるのにやめてない」

「あ、あれー? おっかしいなぁ? スベっとった?」

「……それは華澄さんに近づくため?」

「……!」


 華澄が息を呑む音がはっきり響いた。


「え、いや、それは、その……」

「理由は?」

「……なんちゅーか……」

「……ウチが、いつも一人でおったから……?」


 華澄が口を開く。震える声に、場の緊張感が一気に高まる。


「……ウチが、この言葉のせいで、他の人と話さんようにしとるから……? それで関西弁ならって思て、勉強したん……?」

「ま、待て待て待て! 何やおかしな話になっとるやんか! 今日は楽しく遊ぶ日とちゃうんか!」

「ここまで来たらさ、全部聞かないと楽しくなんて遊べないじゃん。これとかさ」


 慌てる徹の前に、華澄がトランプを突き出す。

 それは放課後、教室で使っていたトランプだった。


「おま……! それ、俺の……!」

「マークデット・トランプって言うんだっけ? ここの柄でカードが全部わかるのよねぇ?」

「え、マジか!? そんなトランプやなんて知らんかった!」

「ダウト」

「そんな事あらへんよな!? 教室で遊んだ時は、山城の方が勝っとったんやし!」

「……うん、でも……」


 一度疑い出すと、何もかもが怪しく思えてくる。

 僅差での勝利も、劇的な結末も、もし作られたものだとしたら……!


「……ウチの、ご機嫌、取ってたん……?」

「そ、それは……」

「ウチが一人でおるのが可哀想やから、同情して、それで……!?」

「違う! 俺は……!」


 徹の言葉に、華澄の目に涙が浮かぶ。


「なら、教えて……」

「……」

「ほんまのこと、おしえて……?」

「……わかった……」


 徹は観念したように肩を落とした。


「……はじめは、言う通りや。山城が一人で放課後残っとったから、何や気になって、色々周りから話聞いたら、……小学校の頃、訛りをバカにされて」

「京言葉」


 寧香の鋭い指摘に、一瞬息を詰まらせる徹。

 気を取り直して言葉を続ける。


「……京言葉をバカにされてから、しゃべらんようになった言うの聞いて、同じ関西の言葉やったら話してくれるかなぁ思て……」

「……っ……」


 華澄は奥歯を噛み締める。


「……ババ残しも、イカサマは、した……。二回目の天和てんほうは、全部がペアで揃っとる状態で、完璧にリフルシャッフルをすると、あぁできるんや」

「三回目の、私の勝ちも……?」

「わざとや……」

「……ジョーカーが特別って話も……?」

「あ、あれは本音や! ……あのタイミングで言うたのは、その、山城を励ますため、やけど……」


 俯く華澄。沈黙する徹。


「……インディアンポーカーも……?」

「……さ、最後のあれはちゃんと山城の勝ちやで!」

「……最後でウチが降りても、勝てるようにしとったもんね……」

「う……」

「……神経やや衰弱なんか、柄わかっとったら余裕やね……」

「あ、あれは、ちょっと強引にでも任太郎や寧香と遊ばせよう思うて……」


 どんどん声が小さくなる徹に喝を入れるように、寧香が声を張る。


「で? 聞きたいのはそこじゃなくて、お兄ちゃんが華澄さんに近付いて、何をしたかったか、なんだけど」

「……」


 寧香の言葉に、真っ赤になる徹。


「……え……」


 つられて赤面する華澄。


(もしかして、難波君も……?)


 華澄の心臓の鼓動は、早鐘のように響き始めていた……。

読了ありがとうございます。


トランプの出番がなかった?

やだなぁ。マークデット・トランプの説明で出てきたじゃないですかぁ(震え声)。


さて徹の華澄への思いは?

寧香の行動は吉と出るか凶と出るか?

そして明かされるタイトルのもう一つの意味!


次回、第七話『・トランプラフ・』で完結となります。

今月中に完結させますので、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] え、次回で完結? [一言] 徹君、図書館の本で関西弁を勉強したの? すごっ! 微妙なイントネーションの違い、関西の人は見抜きますよ(聞き逃さないの方か?)。鋭いです。 「似非関西弁」は…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ