第六話 リアルダウト
お待たせしました!
いよいよ徹の『嘘』に迫る第六話!
寧香の疑いとは!?
徹のブラフは妹に通じるのか?
そして華澄の思いの行方は?
それでは第六話『リアルダウト』お楽しみください。
・トランプラフ・ 第六話
〜リアルダウト〜
「そ。ここからは私と華澄さんの質問に正直に答えてもらうわ。嘘だと私が判断したら、容赦なく『ダウト』って言うから」
寧香のその提案にうろたえる徹。
「な、何でそないな事……! た、楽しく遊ぼうや! ほな今度はドンでも」
「お兄ちゃんの関西弁は本物?」
構わず突きつけた寧香の質問に、徹が、そして華澄も顔色を変える。
「ほ、本物ってどういう意味や……? その定義からはっきりせんと……」
「じゃあこう聞こうか? お兄ちゃんはその関西弁を関西で身に付けた?」
「……う……」
「そんな訳ないよね? 私達家族は関西で暮らした事はないし、親戚もいない」
「!」
華澄は言葉にできなかった、いや、しようとしなかった違和感の理由に気が付いた。
妹である寧香が、関西弁どころか訛りすらない標準語で喋る事。
ブラフの勘違いに気付いた時、思わずこぼれた徹の標準語。
心を許した理由の一つが大きく揺らぎ、青ざめる華澄を見て、徹は慌てて取り繕う。
「ま、まぁほらお笑いを見とるうちに、こう自然にやな……」
「ダウト。図書館で関西弁についての本、片っ端から借りてたよね」
「し、知っとったんか……」
寧香は淡々と徹を追い詰める。
「じゃあ何でそこまでして関西弁を覚えたの?」
「え、ほ、ほら、関西弁ってウケるやろ? だから……」
「ダウト。任太郎さんから、似合わないからやめとけ、って言われてるのにやめてない」
「あ、あれー? おっかしいなぁ? スベっとった?」
「……それは華澄さんに近づくため?」
「……!」
華澄が息を呑む音がはっきり響いた。
「え、いや、それは、その……」
「理由は?」
「……なんちゅーか……」
「……ウチが、いつも一人でおったから……?」
華澄が口を開く。震える声に、場の緊張感が一気に高まる。
「……ウチが、この言葉のせいで、他の人と話さんようにしとるから……? それで関西弁ならって思て、勉強したん……?」
「ま、待て待て待て! 何やおかしな話になっとるやんか! 今日は楽しく遊ぶ日とちゃうんか!」
「ここまで来たらさ、全部聞かないと楽しくなんて遊べないじゃん。これとかさ」
慌てる徹の前に、華澄がトランプを突き出す。
それは放課後、教室で使っていたトランプだった。
「おま……! それ、俺の……!」
「マークデット・トランプって言うんだっけ? ここの柄でカードが全部わかるのよねぇ?」
「え、マジか!? そんなトランプやなんて知らんかった!」
「ダウト」
「そんな事あらへんよな!? 教室で遊んだ時は、山城の方が勝っとったんやし!」
「……うん、でも……」
一度疑い出すと、何もかもが怪しく思えてくる。
僅差での勝利も、劇的な結末も、もし作られたものだとしたら……!
「……ウチの、ご機嫌、取ってたん……?」
「そ、それは……」
「ウチが一人でおるのが可哀想やから、同情して、それで……!?」
「違う! 俺は……!」
徹の言葉に、華澄の目に涙が浮かぶ。
「なら、教えて……」
「……」
「ほんまのこと、おしえて……?」
「……わかった……」
徹は観念したように肩を落とした。
「……はじめは、言う通りや。山城が一人で放課後残っとったから、何や気になって、色々周りから話聞いたら、……小学校の頃、訛りをバカにされて」
「京言葉」
寧香の鋭い指摘に、一瞬息を詰まらせる徹。
気を取り直して言葉を続ける。
「……京言葉をバカにされてから、しゃべらんようになった言うの聞いて、同じ関西の言葉やったら話してくれるかなぁ思て……」
「……っ……」
華澄は奥歯を噛み締める。
「……ババ残しも、イカサマは、した……。二回目の天和は、全部がペアで揃っとる状態で、完璧にリフルシャッフルをすると、あぁできるんや」
「三回目の、私の勝ちも……?」
「わざとや……」
「……ジョーカーが特別って話も……?」
「あ、あれは本音や! ……あのタイミングで言うたのは、その、山城を励ますため、やけど……」
俯く華澄。沈黙する徹。
「……インディアンポーカーも……?」
「……さ、最後のあれはちゃんと山城の勝ちやで!」
「……最後でウチが降りても、勝てるようにしとったもんね……」
「う……」
「……神経やや衰弱なんか、柄わかっとったら余裕やね……」
「あ、あれは、ちょっと強引にでも任太郎や寧香と遊ばせよう思うて……」
どんどん声が小さくなる徹に喝を入れるように、寧香が声を張る。
「で? 聞きたいのはそこじゃなくて、お兄ちゃんが華澄さんに近付いて、何をしたかったか、なんだけど」
「……」
寧香の言葉に、真っ赤になる徹。
「……え……」
つられて赤面する華澄。
(もしかして、難波君も……?)
華澄の心臓の鼓動は、早鐘のように響き始めていた……。
読了ありがとうございます。
トランプの出番がなかった?
やだなぁ。マークデット・トランプの説明で出てきたじゃないですかぁ(震え声)。
さて徹の華澄への思いは?
寧香の行動は吉と出るか凶と出るか?
そして明かされるタイトルのもう一つの意味!
次回、第七話『・トランプラフ・』で完結となります。
今月中に完結させますので、よろしくお願いいたします。