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第五話 ダウト

お待たせいたしました!

今回はタイトルまんま、と見せかけて、やっぱりローカルルールを突っ込んでいます。

終わんないんだもん、あれ……。


細かいルールとか知るかぁ! 寧香の言葉の意味は何なんや!と言う方は、ザーッと飛ばして頂いても問題ありません。

お楽しみ頂けましたら幸いです。

「待ってました! さぁ上がってください!」

「お、お邪魔、します……」


 寧香ねいかに促されて、華澄かすみは難波家の玄関をくぐった。


「迷いませんでした?」

「う、うん、送ってくれたメッセージ、分かりやすうて……。おおきに……」

「やだ、緊張してます? 大丈夫ですよ! 今ウチには私とお兄ちゃんしかいませんから」


 寧香に明るく言われても、華澄の緊張は薄れない。

 先日教室で、帰り際に言われた言葉が頭から離れない。


『でも気を付けてくださいね。お兄ちゃん、嘘つきですから』

『え……』


 その真意がわからず混乱する華澄に、寧香は続けた。


『……意味、知りたいですか?』

『……う、うん』

『そうしたら今度の日曜日、ウチに遊びに来てください』

『え……』

『後でSENセンに個人メッセージ送りますから、そこで打ち合わせしましょ』

『う、うん……』


 その後はほとんど寧香の言うままに、予定が組み立てられていった。

 華澄にはその事よりも、妹である寧香がとおるが嘘つきと言った事が気になっていた。

 何が嘘なのか、それによって、徹に抱いていた信頼感が根こそぎ崩れるかも知れない。

 知りたくない。でも、知りたい。

 その困惑が華澄の身体を強張らせていた。


「よぉ来たなぁ」

「こ、こんにちは……」

「お、私服かわえぇやん」

「お、おおきに……」


 居間でくつろいでいた徹が、何も変わらない様子で声をかけてくる。

 しかし優しく声をかけられても、私服を褒められても、華澄の気持ちは晴れない。

 まるで初めて会った時に戻ってしまったかのように。


「ほな遊ぼか。今日は何がえぇかな」

「ダウト」

「え?」

「ダウト。お兄ちゃん、得意でしょ?」




・トランプラフ・ 第五話

〜ダウト〜




「まぁえぇけど、山城は知っとるか?」

「う、うん……。カードを裏にして、順番に出していくんやろ? 数字がなくても……」


 嘘、その言葉が喉でつっかえる。

 寧香がその後を引き継ぐ。


「……そう、嘘ついて出すの。それで他の人が、そのカードが数字通りかどうかを予想して、違うと思ったら『ダウト!』って言うの」

「う、うん、せやったね……」

「……山城、今日自分、何か具合悪いんか?」

「え、う、ううん、何ともないよ……」

「そうか? 何や元気ない気ぃするんやけど……」

「お兄ちゃん、他人ひとのウチ来てまだ時間経ってないんだから、緊張してるの当たり前じゃん」


 徹の追及に、寧香が助け舟を出す。


「だから楽しく盛り上げて、緊張をほぐしてあげないと」

「……せやな! よっしゃ! 楽しくやろか!」


 徹の言葉に、華澄はこっそり胸を撫で下ろす。


「あ、せや。ウチのルール、ちょい違うんや」

「え?」

「普通にやると、ダウトで数が違うてたら出した人が、数が合うてたら言うた人が場に出てるカード全部手札にするんや」

「う、うん」

「せやけどそれやと手札が少なくなる後半は、ダウトばっかりで全然終わらんようになるから、ルールを変えとんのや」


 言いながら徹はカードを数枚抜き出す。


「まずはまとめ出し。こんな風に、同じ数字のカードならまとめ出しもオッケーや」


 徹は3のカードを二枚見せ、裏側にして中央に出す。


「勿論ダウトやから、別の数のカードを出してもえぇ。二枚を自信満々で出すと意外とダウト言われへんのや」

「これお兄ちゃん得意よね。本当の数三枚でダウト誘った後に、二枚出しとか本っ当腹立つ」

「まぁ俺はブラフの申し子と呼ばれたい男やからな」

「『プラフ』じゃなくて?」

「やめぇや! 意外とダメージ残っとるんやぞ!」

「ふふっ……」


 華澄が思わず微笑んだのを見て、徹と寧香も表情が緩む。


「後な、ダウトで引き取る事になったカードは手札にせん。伏せたまま手元に引き取って、全員が手札を使い切った後、そのカードが多かった人の負けや」

「あ、じゃあカードを使い切ったら、そこで終わり……?」

「せや。それなら一回一回ゲームを短く仕切れるやろ?」


 徹の言葉に華澄はこくこくと頷く。

 少しずつ、ゲームの方に意識が向き始めていた。


「他にもカードの枚数やなくて、カードの数で点数計算するとか、一回は誰かにダウト言わんと上がれんとか追加ルールはあるけど、ま、それは置いといて、まとめ出しと手札にせんルールでやってみよか」

「う、うん」

「あ、お兄ちゃん、ジョーカー入れないでね」

「何でや! おもろなんのに!」

「このルールに慣れてない華澄さんがいるんだから当然でしょ。お兄ちゃんジョーカーの使い方ズルすぎるもん」

「作戦やのに……」


 徹はぶつぶつ言いながらもジョーカーを取り除く。


「さ、始めよか!」




「……5や」

「お兄ちゃん、ダウト!」

「引っかかったな。合っとるで」

「ぐぬぬ……」


「……きゅ、9……」

「華澄さん、ダウト!」

「ば、バレてもた……」

「うーん、何だろうこの罪悪感」


「ろ、6!」

(お兄ちゃんが噛んだ……? いや、これは罠!)

「そ、それ、ダウト」

「あっ、華澄さん!」

「……裏の裏をかいたのに、真っ向から来よったか……」

「よ、良かった……」

「な、何か悔しい……」


「7や」

「二枚出し……!」

「えぇの? 誰もダウトせんの?」

(これはどっち……? 罠か、ハッタリか……)

「だ、ダウト」

「……山城、やるやないか。えぇ根性しとるで」

「えっ……」

「でも外れやでー。ほーれ7二枚」

「お兄ちゃんのバカ! 悪魔! 人でなし!」


「寧香、それダウトやろ」

「うぐっ……」

「さ、そのたっぷり溜まったカード引き取ってもらおか」

「……覚えてなさいよ……!」


「……だ、ダウト」

「せや、当たりや」

「やった……」

「でもま、引き取るのは三枚だけやけどな」

「これだからお兄ちゃんはモテないのよ」

「精神攻撃は反則やろ!」




「お、今回は山城の勝ちやな」

「や、やった……!」

「ほんでドベは寧香やな」

「うるっさい!」


 むくれる寧香の強い語気にも、徹の上機嫌は崩れない。


「俺が七勝、寧香が二勝、山城が一勝、どや、俺強いやろ」

「う、うん。すごい、ダウトなんかちゃうんか、全然わからんかった……」

「あんまり褒めないでくださいよ。すーぐ調子に乗るんですから」

「負け犬の遠吠えは見苦しいでー?」

「……華澄さん、こういうやつなんですよ、お兄ちゃんは……」


 寧香の口調が変わる。

 怒りに任せて、ではなく、まるでここまでのトランプも含めて布石であったかのように。


「そうよね。お兄ちゃんは嘘が上手。それを使って人をからかうのが好き」

「な、何や寧香……」

「ねぇお兄ちゃん。もう一回ダウトやろ?」

「えっ?」


 寧香の目が冷たく光る。


「トランプなしのダウト。私と華澄さんの質問に正直に答えるゲーム」

読了ありがとうございます。


徹を追い詰める寧香の真意は……?

次回『リアルダウト』、お楽しみに!

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[気になる点] >トランプなしのダウト [一言] 寧香、何を追及するつもりなのでしょうか? 気になります。
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