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悪夢の死刑廃止

作者: HasumiChouji

「いや……だから……歴代の法務大臣にちゃんと説明した筈ですが……同じ政党の法相経験者の方から、何も聞かれてないのですか?」

「あのさぁ……前回、ウチの党が政権を失なった時、国民もマスコミもあんた達官僚も喜んだじゃないか!! だから、我々だって、必死で努力してきたんだよ」

「何をですか?」

「前回、ウチの党が政権を取った時に閣僚をやった連中は、ウチの党から1人残らず追い出したよ」

「では……法務大臣を経験された林河克年代議士(センセイ)などからは……何も聞いてないのですか?」

「元だよ……」

「えっ?」

「正確には、元代議士。あの人が引退したの何年前だと思ってるの? 私の初当選より前だよ。あと、ついでに……去年、亡くなったよね?」

 新しい法務大臣の執務室に、死刑執行命令書のサインを求める為にやって来た法務官僚は、よろよろと倒れた。

「おい、誰か、救急車呼んでくれ!!」


「いやさぁ、私は死刑存続派だよ……。でも、何で、冤罪疑惑が有るヤツをさらっと混ぜてるの?」

 数日前に入院した法務官僚の部下が、再び、死刑執行命令書への法務大臣のサインを求めに、法務大臣の執務室にやって来た。

「そ……それが……私の上司が、どうしてもこの人物を死刑にしろと……どんなに遅くとも前回の執行より3年以内に」

「どう云う事なの?」

「いえ……法務官僚の中の特定の1人に代々伝えられてる事が有るみたいで……」

「怪しい自称『古武道』の秘伝か何かか? もういい、話にならん。私を納得させる根拠を示してくれない限りは、死刑執行命令書にサインは出来んからな」


 更に数日後、再び同じ法務官僚が法務大臣の執務室にやって来た。

「すいません、大臣……どうしても、死刑執行命令書にサインを頂かないと……もう時間が……」

「21人……」

「えっ?」

「個人的に調べてみたんだよ……。ここ5〜60年ほどの死刑執行の記録をね……。そうしたら……法律用語で言うなら『合理的な疑いが残る』死刑囚が21人も死刑になってる。何が、どうなってるんだ? 納得のいく説明をしてくれないかな?」

「そ……それは……」


 「それ」は、この国の統治者と、ある契約を交していた。

 3年毎に「絶望に捕われた罪無き者」の命を生贄として捧げられるのと引き換えに、人間達の世界に危害を及ぼさない、と……。

 だが、3年は過ぎようとしていた。

 まぁ、ちょっと早いが……催促ぐらいはしておくか……。

 そう思った「それ」は少し身じろぎをした。

 だが、あまりにも強大過ぎる「それ」には考えが及ばなかった。人間の世界とは……かつて「神」と呼ばれた「それ」が「身じろぎ」をしただけで……致命的な影響を受けるほどに脆弱な代物である事に……。


 ……そして、次の瞬間、東京は死都と化した。

 だが……これは始まりに過ぎなかった。数ヶ月後、自分のミスで「生贄」を得る機会を失なった事に気付いていない「それ」が、地上に現われ……更なるとんでもない八つ当りを始め……そして……。

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