夏休みの話② ~音痴なアイドルと未来を変える占い師~ その14
「それじゃあみんな、名残惜しいけど、次が最後のグループだよ! トリを飾るのはもちろんこの子たち! 最年少は小学四年生の、超美少女アイドルグループ、『しーずん♡』で、曲はもちろん、『四季♡神♡フォーリンラブ♡』だぁ!」
司会役のお兄さんのアナウンスとともに、野外ライブ会場は割れんばかりの歓声に包まれます。もちろんポン子たちも大盛り上がりです。
「イケメングループじゃないのは残念だけど、でもライブってすっごいアツいわね! わたしもう汗だくだわ」
花子が汗を散らしながら、いつの間に用意したのかタオルをグルグルふりまわしています。ポン子と愛子が顔を見合わせてから笑いました。
「花子ちゃんったら、ノリノリじゃない。でもこんな楽しいなんて、あたしも知らなかったわ」
「あんまり知らないグループも出てるけど、テレビとかで見かけるグループも出てるから、ホントに楽しいわね。『しーずん♡』も、歌は聞いたことないけど、テレビで見たことあるでしょ。最近売り出し中のアイドルグループでしょ」
愛子の言葉に、花子が目を輝かせます。
「テレビに出てるの? やったぁ、じゃああの子たちと仲良くなれば、わたしもテレビのイケメンアイドルたちと……」
「長谷川さんったら、いったいどうやって仲良くなるつもりなのよ……」
世織があきれ顔でツッコみました。愛瑠もおかしそうに笑ってうなずきます。
「でも、花子ちゃんならうまいこと仲良くなれそうな感じよね。でもアイドルなんて、あこがれるわよね。それに最年少の子は四年生なんでしょ。わたしたちと同い年なら、わたしたちにもチャンスあるかもね」
「そうよね、わたしもアイドルになったら、イケメンパラダイスが待ってるのよね」
でへへとだらしなく笑う花子を、みんな気味が悪そうに見ています。チェルシーがからかうような口調でいいました。
「ワタシもアイドルになれるならなりたいネ。くのいちアイドルなんて、かっこいいヨ」
「いや、チェルシーさんまでなにノッてるのよ……。けど、ホントに驚きだわ。わたしたちと同じ小学生で、アイドルまでやっているなんて。いったいどんな子かしらね」
世織の言葉を聞いて、意味深な表情をうかべた未来が口をはさみました。
「それが、多分あたしたちが知ってる人のような感じなのよね」
「えっ? それってもしかして、わたしたちのクラスメイトってこと?」
目を丸くする花子でしたが、未来は肩をすくめました。
「そこまではわからないけど、そんな気がするのよね」
「未来ちゃん、もしかして占ってみたの?」
愛瑠に聞かれて、未来は首を横にふりました。
「ううん。ただのカンよ。でも、あたしのカンって、占いじゃなくてもけっこう当たるから。ま、でもすぐわかるわよ。ほら、出てくるみたいよ」
未来の言葉で、みんな一斉にステージへと目を向けました。歓声と拍手で、会場が揺れ動くほどでした。花子も狂ったようにタオルをブンブンふりまわします。
「こんにちわー、ハルでーす! みんな今日はありがとう! 『夏のアイドル祭り』もラストだけど、最後までいっぱい楽しんでね!」
四人グループの『しーずん♡』メンバーの中で、一番背が低い女の子が観客たちに手をふります。青と白の、まるでマーチングバンドのような、かわいらしいドレスすがたです。ふわっとした茶色い髪が、まるでいたずらっ子のようにゆれています。会場のファンたちから、耳が痛くなるほどの『ハルコール』が巻き起こります。
「うわっ、すごい人気ね。でも、未来ちゃんのカン、たぶん外れじゃないかしら。だってあんなにかわいい子、わたし見たことないわ」
愛瑠の言葉に、未来もうなずきました。
「ホント、すっごくかわいいわよね。ソフィーちゃんやまりあ以上にかわいいわ。ま、アイドルなんだし当たり前なんだろうけどさ。でもそれこそまりあがいなくてよかったわね。あの変態がいたら、きっと喜びすぎて気絶してるわよ」
みんなアハハと笑いましたが、愛子だけはじっとハルのことを見つめていました。
「うーん……。でもあの子、どこかで見た気がするんだけど……」
「えっ、もしかして愛子ちゃん、知り合いなの?」
ポン子にたずねられて、愛子は難しそうな顔で首をかしげました。
「気のせいかもしれないけど、どこかで見たことある気がするでしょ。特にあのふわふわの茶色い髪、クラスの誰かがそんな髪だったような……」
「いや、それはないわよ。だってクラスメイトの女子はみんな、アンブロシアに来てるんだから。誰もアイドルなんてしてないでしょ。それに凪沙ちゃんみたいに、男子で女の子のかっこうするやつがいても、あんな超絶美少女になる子なんていないわよ」
花子のツッコみに、愛子は思わず笑ってしまいました。
「花子ちゃんったら。でもそうだよね、やっぱり気のせいでしょ。たぶん同じ年だから、親近感がわいて、それで知り合いって勘違いしちゃったんでしょ」
「違うわよ。創造した主人公のことくらい、ちゃんと覚えておきなさいよ」
誰かから指摘されて、愛子は目をぱちくりさせました。
「あれ、今誰かなにかいったでしょ?」
「へっ?」
ポン子がまん丸い目をさらに丸くして、愛子を見つめました。
「あたしはなにもいってないけど、花子ちゃんたちなにかいった?」
ポン子にたずねられて、花子はもちろん、他のみんなも首をふるばかりでした。
「なんだったのかしら、じゃあ気のせいかな?」
「これだけすごい歓声なんですもの。誰かの声がたまたま耳に入ったんじゃないかしら」
世織にいわれて、愛子は首をひねりながらも一人でうなずきました。ですが、未来だけはそんな愛子をじっと見つめているのでした。
――なにかしら、今の。愛子ちゃんに一瞬、なにか別の意思が感じられたんだけど……。そういえばあたし、愛子ちゃんの運命だけは、よく見通すことができなかったのよね。それに未来があいまいに見えるのは、決まって愛子ちゃんが関係した未来ばかりだった。いったいどうして――
考えこむ未来でしたが、その思考は一瞬にして打ち破られました。鼓膜をひっかくような、とんでもなく不快な歌声が、みんなの耳をおそったからでした。
いつもお読みくださいましてありがとうございます。
本日はもう1話投稿する予定です。
20時台に投稿予定なので、そちらもどうぞお楽しみに♪




