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四月の話 ~空から降ってきた天女様~ その8

「お山小学校が実在するって? そんなはずないよ。ポン子ちゃん、うそつくならもうちょっとましなうそをつきなさいよ」


 学校から出雲の湯に帰ったポン子は、すぐにその日のことをリンコ先生に報告しました。ちなみにポン子たちは、学校に通いやすいように、出雲の湯にお引越しして住んでいます。もともとクズハさんが住んでいた部屋を、四人が住めるように模様替えしたのです。そのためけっこうせまくなってしまいましたが、毎日がキャンプみたいで新鮮で楽しいものでした。


「そんなことより、ちゃんとクラスにとけこめた? まぁ、ポン子ちゃんと花子ちゃんは大丈夫と思うけど、ソフィーちゃんとクシナちゃんが心配でね。二人ともハーフってことにしておいたけど、ぼろは出なかったかしら?」


 リンコ先生はポン子の話は軽く流して、逆にポン子に質問します。


「ぼろは出なかったけど、それどころじゃなかったよ! ねぇ、リンコ先生、ホントにお山小学校ってないの? 絶対あるよね? それに、絶対妖怪か陰陽師協会がかかわってるでしょ!」


 リンコ先生は困ったように首をかしげて、それからソフィーと花子に視線を向けました。


「二人とも、もしかしてポン子ちゃんがいってることって、ホントのことなの?」


 ソフィーも花子も、とまどいながらもうなずきました。やはりまだ様子がわかっていないといった顔でした。


「うん、確かに先生はそういってたよ。お山小学校の生徒は、愛子ちゃんっていう女の子以外全員だよって。それにわたしたちも、リンコ先生たちが他の妖怪とかの生徒を用意したって思ってたけど……」


 花子にいわれて、リンコ先生はますますわけがわからないといった顔になりました。


「他の妖怪? まさか、だって出雲小学校に転入したのは、あなたたち四人だけよ。出雲のお山の妖怪はもちろん、他の妖怪が出雲小学校に入るなんて、陰陽師協会からも聞いていないわ」


「でも、なんだかみなさん、普通の小学生って感じじゃなかったですよ。わたし人形だったけど、人形だったときによく持ち主のもえちゃんのお友達とか、遊びに来てたの見てたから、普通の小学生ってどんなかだいたいわかります。でも、どう見ても普通じゃなくて、なんだかみんな不思議な……それこそ妖怪みたいな……」


 いいよどむソフィーを、リンコ先生はいぶかしげに見ました。


「ソフィーちゃん、なにか気になることでもあるの?」


 リンコ先生に聞かれて、ソフィーは自信なさげにうつむいてしまいました。ポン子がソフィーの頭をそっとなでてあげます。


「大丈夫だよ、ソフィーちゃん。気になることがあったらいってみて。きっとソフィーちゃんが気づいたことは、あたしたちみんなにとっても大事なことだと思うからさ」


 ポン子を見あげて、ソフィーはまだ自信なさげでしたが、やがて口を開きました。


「不思議な力を持っていそうってのは、感じたんですけど、それ以上に気になったのが、愛子さん以外のクラスメイトからは、呂樹が創り出した妖怪と同じようなにおいがしたんです」

「それって、まさか……ソフィーちゃんや花子ちゃんと同じ、創られた妖怪だってこと?」

「それはわたしも感じたよ。でも、お兄ちゃん……呂樹が創り出した妖怪とは、またちょっと違う感じなの。でも、とにかく普通の人間じゃない感じはしたかな」


 ソフィーも花子も、神妙なおももちでリンコ先生を見つめました。二人とももともとは呂樹によって創られた、人工の妖怪だったのです。特にソフィーは、妖怪にされたことで、自分の持ち主だったもえちゃんとその家族を、不幸にしてしまったという過去があります。


「前から思ってたんですけどぉ、その、呂樹って人は誰なんですぅ?」


 のんきな声でクシナがたずねました。くるりん葉の変化から、元の天女のすがたへと戻っています。うーんっとのびをして、背中のつばさを思いっきり広げます。


「ああっ、それ!」


 ポン子がクシナの持っていたものを指さしました。クシナがいつの間にか、コーヒー牛乳のふたを開けて飲んでいたのです。リンコ先生と花子が同時にどなりました。


「こらっ、それは売り物でしょ!」

「ひゃっ! ご、ごめんなさいですぅ」


 あわてて冷蔵庫に戻そうとするクシナに、リンコ先生はため息まじりにいいました。


「もう口をつけちゃったんだから、クシナちゃんが飲みなさい。でも、勝手にここの飲み物飲んじゃだめよ。この間のコーヒー牛乳のぶんも含めて、しっかり働いてもらいますからね」

「えっ、働く……ですかぁ?」


 きょとんとしているクシナを、リンコ先生はじろりとにらみつけました。


「もちろんよ。ちゃんと出雲の湯の床そうじ、ピカピカになるまでしてもらいますからね!」

「ええーっ、いやですぅ、床そうじはいやですよぉ! クシナは女神さまのお使いなんですよぉ、それなのにそんな」

「なにか文句あるのかしら?」


 リンコ先生のはくりょくに押されて、クシナはしぶしぶうなずきました。まだふくれっ面のクシナは無視して、リンコ先生は続けました。


「まぁ、とりあえず陰陽師協会には確認してみるわ。コンに聞けば、多分わかるでしょう」


 化けぎつねで、ポン子が小さいころによく面倒を見てくれたコン兄ちゃんは、今は陰陽師協会で修行中の身だったのです。もちろん今も、修行の合間にユーチューブへの投稿もやっているようです。


「でも、多分調査には時間がかかるだろうし、その間にポン子ちゃんたちも、それとなくクラスメイトたちのことを探ってちょうだい」

「探るって、でもどうやってですか?」

「そんなの簡単よ。ただ仲良くなればいいだけだわ。妖怪かもしれないとはいえ、どちらにしても小学校の生徒には変わりないんだから、お友達を作ればいいのよ。そうすれば、なにかわかるだろうし、ポン子ちゃんたちも人間の生活に慣れることができるでしょ」


 あっけらかんにいうリンコ先生に、ポン子ははぁっと頭をかかえました。


「そんな簡単にいくかなぁ? だってなんだか、ひとくせもふたくせもありそうなやつばっかりだったよ」

「そういわないの。いろんな人と仲良くなって、共同生活を送る。これは妖怪が人間の世界にとけこむために、すごく大事なことなのよ。例えばコンだって、最初は人間と話したりするのをすごく怖がってたけど、今では普通に人間の社会で生活してるでしょ。ユーチューバーなんかまでしてるのは、ちょっとやりすぎな気もするけど。とにかくつべこべいわずにがんばりなさい」


 リンコ先生にいいくるめられてしまい、ポン子はがっくりと肩を落としました。


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