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六月の話 ~ヘンタイヨウとレズまりあ、狙われたソフィー~ その17

「だめっ、やめてください!」


 ソフィーの大声に、ポン子たちはぴたっと動きを止めました。ふりかえって、ポン子は思わず声を上げます。


「ソフィーちゃん、どうしたの? ……泣いてるの?」


 ソフィーの青い目から、涙があとからあとからあふれて、ぽろぽろと落ちてほおをぬらしていたのです。ポン子はあわててソフィーにかけより、なぐさめます。


「大丈夫? 怖かったよね、無理やりあんなことされて……。でも、もう安心していいわよ。ごめんね、これからあの変態には、ソフィーちゃんに指一本ふれさせないからね」


 しかし、ソフィーはポン子に首をふりました。ごしごしっと乱暴に涙をぬぐって、それからまりあのそばへ歩み寄ったのです。


「ソフィーちゃん、危ないよ!」

「ううん、大丈夫です。それに、わたしがこうしたいんです。だから……」


 ソフィーはなにを思ったのか、まりあのからだを、自分からきゅっと抱きしめたのです。これにはポン子たちだけでなく、当事者であるまりあも驚き、目を見開いています。ソフィーはまりあを抱きしめたままささやきかけました。


「まりあさんが力をわたしに使ったから、わたしも、まりあさんのたましいにふれることができたんです。わたし、まりあさんのことを誤解していました。無理やりお人形さんにするなんて、最低だって、ずっと思っていました。でも、そうじゃなかった。まりあさんは知らないだけだった。どうやって愛すればいいのか、それを知らないから……」

「やめてっ!」


 まりあが青ざめた顔でさけびました。しかし、ソフィーはまりあをしっかりと抱きしめたまま、続けました。


「まりあさんは、誰かから愛されるっていう体験をしなかったから、だからどうやって他の人を愛すればいいかわからなかった。おうちにある、たくさんのお人形さんたちを愛でるようにしか、誰かとつながることができなかった」

「やめなさい、今すぐ口を閉じて!」

「いやです! だってわたし、まりあさんの心にふれてしまったから。まりあさんがあまりにかわいそうで、それにあまりに強くて、悲しいから」


 必死に身をよじって、まりあはソフィーから離れようともがきました。しかし、ソフィーも離さないようにしっかりと抱きしめていたので、まりあは逃れることはできませんでした。


「なによ、ソフィーちゃんなんかになにがわかるっていうのよ! お人形のくせに、わたしのなにがわかるのよ!」

「わかります! こんなにも悲しくて、こんなにも強がって、それなのに愛そうともがくたましいにふれたのに、わからないはずないじゃないですか!」


 まりあをつぶしてしまわんばかりに、ソフィーは抱きしめるうでに力をこめました。


「まりあさん、ずっとご両親に愛されたいって願ってたんですよね。でも、ご両親はお仕事でずっと会えずに、いつも一人ぼっちだった。だから、ご両親がさびしくないようにって買ってくれたたくさんのお人形さんたちと、お話ししていたんですよね。だから、人間をお人形さんにするっていう力を得たんですよね」

「やめて、やめてよ! もうわたしの心にふれないで! わたしの心をのぞかないでよ!」


 狂ったようにまりあがわめきますが、それでもソフィーは言葉を止めません。せきを切ったように、ソフィーはまりあに語りかけ続けました。


「わたしもお人形さんだったから、誰かに愛されたいって気持ち、痛いほどわかります。わたしの持ち主は、わたしが呪いの人形になっても、それでも愛してくれた。でももしわたしも、まりあさんと同じように、誰にも愛されないでいたら……。きっとわたしは、呪いの人形よりももっとひどいものになっていたと思います。だから、そんなつらいときを過ごしてこられたまりあさんが、すごく気高くて、すごく強くて、そしてすごく悲しくて……」

「それ以上はもう許さないわよ! 離れて、離して、だまりなさいよ!」


 もはや泣きさけぶように懇願するまりあでしたが、ソフィーも止まりませんでした。


「でも、だからこそ、まりあさんにもお人形さんを一方的に愛するんじゃなくて、他の人をちゃんと見てほしいんです。他の人をちゃんと見て、ちゃんと接しないと、まりあさんもお人形さんと同じになってしまいます。お人形遊びのお人形じゃなくて、人間として愛し愛されないと。そうしないと、まりあさんはずっとお人形さんのままです、だから……」


 ようやくソフィーは、まりあを抱きしめるうでをほどきました。解放されたまりあは、ソフィーを射抜くようににらみつけます。ソフィーもその視線を、しっかり真正面から受け止めました。


「もう知らない! ソフィーちゃんなんて知らないんだから!」

「あっ、まりあさん!」


 まりあはソフィーを突き飛ばして、泣きわめきながら教室を出ていってしまいました。あとを追いかけようとするソフィーの手を、花子がつかみました。


「花子さん、離してください! まりあさんが」

「今行っても、まりあちゃんはソフィーちゃんを拒絶するだけだわ。そっとしておいてあげないとダメよ」

「でも……」

「心配しなくても大丈夫よ。ちゃんとソフィーちゃんのいいたいこと、あの子にも伝わったと思うから」


 花子の言葉に、ポン子もうなずいて、それからソフィーの頭をやさしくなでてあげました。


「あたしもそう思うわ。それに、ソフィーちゃんよくがんばったと思うよ」

「あの……ごめんなさい、わたし、なんだか興奮しちゃって、すごいえらそうなことばかりいっちゃって。まりあさん、本当に怒ったり傷ついたりしてないですか?」


 ソフィーの言葉に、クラスのみんながいっせいに首をふりました。代表してポン子がソフィーに答えました。


「ちゃんとソフィーちゃんの気持ちを伝えたんでしょう? なら、あとはまりあちゃんの問題よ。でも、きっと大丈夫。ソフィーちゃんがちゃんとまりあちゃんを見てあげたんだから、まりあちゃんもちゃんと受け止めるはずよ」


 ポン子の言葉に、ソフィーは目を閉じ、うなずきました。


いつもお読みくださいましてありがとうございます。

明日からは再び毎日1話ずつの更新となります。

また、明日で六月の話が終了しますので、同時におまけの話を投稿予定です。

よろしければそちらもどうぞ♪

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