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六月の話 ~ヘンタイヨウとレズまりあ、狙われたソフィー~ その10

「しかしまぁ、どういう風の吹きまわしっすか? まりあのほうからおれに声をかけてくるなんて、驚いたっすよ」


 ポン子たちが笑いあっているあいだ、まりあは太陽を体育館裏に呼び出していたのでした。女の子にそんなことをされたら、しかもまりあのように超絶美少女に呼び出されたのなら、普通の男の子なら舞い上がってしまうことでしょう。しかし太陽は普通でなくて変態です。いつものようにへらへら笑いながら、あっけらかんとした口調でまりあをからかいます。


「まさかとは思うっすけど、おれに愛の告白とかっすか? もちろんおれの返事は決まってるっすよ。さ、早くスカートをまくりあげるっす」

「なに寝ぼけたこといってんのよ! このバカ!」


 まりあにけられそうになったので、太陽はすばやくかがみこみました。まりあもパッとスカートを押さえて、めくれるのを防ぎます。


「ああ、もう少しで見えそうだったのに、おしいっすね。でも、パンツ見せてくれるんじゃないなら、いったいなんの用っすか?」


 まりあはきょろきょろとあたりを見まわしました。まわりに誰もいないことを確認してから、小声で太陽にささやきました。


「わたしに協力してほしいの?」

「えっ、協力って、スカートをめくる協力っすか?」

「誰がそんな協力を求めるのよ! いや、それもありかもしれないけど」


 今度は太陽のほうがあきれたように肩をすくめました。


「おれ、ときどきまりあのほうがずっと先をいってるんじゃないかって、心配になるんすよね」

「うるさいわね、バカ! あんたが茶化すからいけないんでしょうが!」


 ヒステリックにどなるまりあに、太陽はふぅっとため息まじりで問いかけました。


「ま、ラブコメはこのくらいにしておいて、いったいなにを協力してほしいのかいって欲しいっす」

「なにがラブコメよ! コメはあってもラブなんてかけらもないわよ。って、このままじゃ話が進まないから、さっさと用件だけいうわね。あんたの力で、ソフィーちゃんの弱みを握ってほしいのよ」

「……どういうことっすか?」


 太陽がいぶかしげにたずねます。まりあはちらりと舌を出して、あやしく舌なめずりしました。


「簡単な話よ。新しく入った子たち、みんなすごいかわいいけど、その中でもソフィーちゃんは一番かわいいでしょ?」

「そりゃあそうっすね。まぁ、おれは全員好みっすから、片っぱしからスカートめくって楽しみたいっすけど」

「誰もあんたの妄想は聞きたくないわよ。そんなことより、わたしはソフィーちゃんがすっごく気に入っちゃったの。だからどうしてもお人形にしたいんだけど、みんなが邪魔するでしょ。そ、こ、で、あんたの出番ってわけ」

「なるほど、おれがソフィーのスカートをめくればいいんすね」

「違うわよ! ……いや、それもありね。わたしに注意を集めて、油断したところをあんたが」

「冗談はいいっすから、早く話を進めるっすよ」

「あんたが茶化したのがいけないんでしょうが! とにかく、ソフィーちゃんの弱みをあんたのサイコメトリーの力で探してほしいのよ」


 太陽はわざとらしく天をあおいで、大げさに首をふりました。


「全く、愛瑠(あいる)がいったように、ホントにまりあは変態っすね。前言撤回っす。おれなんかじゃまりあの足元にも及ばないっすね」

「なんであんたなんかと変態比べみたいなことしなくちゃいけないのよ。とにかく、あんたにしてほしいのはソフィーちゃんの弱みを握ることよ。弱みさえにぎっちゃえばこっちのもんだわ。それを使っておどして、そして泣く泣く要求をのんだソフィーちゃんを押し倒すの。それから、なにされるかびくびくして、恥じらいながらも、ちょっぴり悔しそうな顔のソフィーちゃんのくちびるを……キャーッ!」


 興奮するまりあのおたけびを、太陽は若干、いいえ、かなり引き気味で聞いていました。まりあはじろりと太陽をにらみつけます。


「なによ、あんたまさか、協力しないつもり?」

「まさか? おれがそんな面白そうなことに力を貸さないはずないっすよ」


 にやっと笑う太陽に、まりあもヒヒヒと悪そうな笑みを浮かべます。


「さすが、話が分かるわね。まぁあんたも気づいたように、この話はあんたにとってもメリットがあるから、協力しないわけがないわよね。それにうまくいったら、わたしがたーっぷりかわいがったあとに、あんたにもソフィーちゃんのお人形を、ちょっとくらいならさわらせてあげてもいいわよ」


 まりあの言葉に、太陽は目を丸くしました。鼻の下がいつもよりももっと長く伸びています。


「まじっすか、やりますやります、絶対協力するっすよ! ……でも、珍しいっすね。まりあが自分の人形をおれにさわらせてくれるなんて。いったいどういう心境の変化っすか?」


 太陽に聞かれて、まりあは怖い顔でにらみつけました。


「別にいいでしょ、そんなことは! いい、絶対みんなにさとられるんじゃないわよ! もし失敗したら、あんたも人形にして火をつけて燃やすからね」

「マジっすか? ぜひぜひ人形にしてほしいっすよ! まりあとちゅーできるなら、燃やされても本望っす」


 くちびるを突き出してくる太陽を見て、まりあはひぃっと悲鳴をあげます。先ほどまでの距離の二倍ほど間合いを取ってから、まりあはふんっと鼻をならしました。


「とにかく失敗しないでよ! 絶対にソフィーちゃんを人形にするんだから!」

「……でも、おれいつも思うんすけど、そんな卑怯なことしなくても、まりあだったら、あの新入りたちともすぐに仲良くなれるんじゃないっすか? 仲良くなって、それこそ友達になってから、時間かけて好きになってもらうほうがいい気がするっすけどね」


 太陽の言葉に、まりあはフッと視線を外して、それからしばらくうつむいていました。やがてぽつりと、消え入るような声でつぶやいたのです。


「……そんなの無理よ。わたしは友達なんて作れっこないもの」

「そうっすかねぇ?」


 太陽にいわれて、まりあは再び鼻を鳴らしました。ギロッと藍色の目を光らせ、もう一度太陽に念を押したのです。


「とにかくうまくやるのよ。みんなにさとられないように、うまく弱みを握りなさい!」


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