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六月の話 ~ヘンタイヨウとレズまりあ、狙われたソフィー~ その9

「あとはネコちゃんだけど、ネコちゃんの力はみんな知ってるんだったっけ?」


 愛瑠(あいる)に聞かれて、ポン子たちはうなずきました。


「超回復能力だよね。でもすごかったよ、傷が一瞬でふさがってさ」

「てことは、猫田さん、またケンカしたんですか? そんなことしたらダメだって、いつもいってるじゃないですか」


 世織(せおり)に責められて、治実(なおみ)は頭をがしがしかきました。


「いや、だって桃太郎のやつがケンカ売ってきたからさ。でも大丈夫だよ、委員長が心配するようなことにはなってないよ。一般人には誰にも見られなかったからさ」

「それならいいんですけど、いつもいってるように、くれぐれも誰かに力が知られるようなことは慎んでくださいよ」


 めがねをかけなおしていう世織に、治実は面倒くさそうに同意しました。


「わかってるってば。でもいいだろ、それのおかげであたしも新入りたちと仲良くなれたんだから」

「そういえばそうね、あなたが他の子と仲良くするなんてすがた、あんまり見ないものね。まあいいわ。とにかくこれでわたしたちの力の説明は終わりよ。他の子たちの力に関しては、ちゃんとその子たちに聞くか、その子たちがOKを出さない限り、わたしたちからは教えられないわ。っていうより、わたしたちも力を知らない子とかもいるものね」

「うん、それでいいよ。あたしたち妖怪だって、正体を知られたくないし、正体を教えるのは自分の親しい人たちだけだもん。まだまだあんまりしゃべったことのない子もいるから、早く仲良くならなくちゃ」


 意気ごむポン子を、世織たちはくすくす笑いながら見ていました。


「まぁ、けっこうクセのある子たちがそろってるから、あんまり気負わないようにね。それと、わたしたちもあなたたちの調査には協力させてもらうわ」


 世織にいわれて、ポン子は目を丸くしました。


「えっ、いいの?」

「もちろんよ。だってヤマタノオロチは、わたしたちの出雲町の地下に眠っているんでしょう? そんな化け物が目覚めたら、わたしたちにとっても一大事だわ。だからもちろん協力するわ。たぶんそれは、他のみんなも同じ気持ちだと思うわよ」


 世織にいわれて、愛瑠たちも首をたてにふりました。


「よかったですぅ、みんなもクシナの手下になってくれるんですねぇ。わ、痛いですぅ、やめるですぅ、ネコミ、こっちに来ないでほしいですよぉ!」


 ポン子と花子にほっぺたをつかまれ、治実がずんずん近づいてきたので、クシナはあわててあやまりました。愛瑠がくすくす笑っていいました。


「わたしとか、あんまり役に立たないかもしれないけど、お手伝いできることはお手伝いするわ。っていっても、ヤマタノオロチの話は初めて聞くし、陰陽師協会からもなにも聞いてないから、どこにいるのかとか、どう調査するかとかはあんまりわからないけど」

「ワタシも聞いたことないケド、もしかしたらグランマならなにか知ってるかもしれないネ。だからグランマにも聞いてみるヨ」

「それにもしかしたら陰陽師協会のえらいやつらも知ってるかもだな。とはいっても、えらいやつらはあたしらみたいな候補生とはほとんどかかわらないから、どうしようもないけど。ああ、そういや委員長はクラスの報告かなんかで、陰陽師協会に定期連絡してるんだろ? 委員長と、男子の委員長の(ひそか)もだっけ?」

「密って、いつも黒い服着てる、あのかっこいい男の子のこと?」


 花子が目を輝かせて食いついてきました。ポン子があきれ顔で花子を見ます。


「花子ちゃん、前から思ってたんだけど、けっこうイケメンに弱いよね」

「そんなの普通じゃないの。かっこいい男の子がいたら、そりゃあ誰だってメロメロになるわ」

「でも、わたしちょっとあの子苦手かも」


 愛子がぽつりとつぶやいたので、花子が目を丸くしました。


「ええっ? あんなにかっこいいのに? もしかして愛子ちゃん、そうとうな面食いなんじゃ」

「違うよぉ、かっこいいとは思うけどさ。でも、なんていうか、ときどきわたしのこと、すごい怖い目で見てくることがあるでしょ。だからちょっと怖いっていうか、苦手なの」

「まさかそれって、愛子ちゃんのことを好きなんじゃないの? それで、好きだからついちょっかいかけようとして、にらんじゃったりとか」

「えー、ヒッ君に限ってそんなことはないと思うよ」


 愛瑠の言葉に、またも花子が反応しました。


「ヒッ君? 愛瑠ちゃん、そんな親しげにあだ名で呼ぶってことは、もしかして」

「違うよ、そんなんじゃないってばぁ」


 あわてて首をふる愛瑠を、花子が疑わしげに見ています。しかし世織も愛瑠に賛成するように口をはさみました。


「それはわたしも同感ね。神無月(かんなづき)君が誰かを好きになったり、ていうより興味を持つこと自体考えにくいわよ。もちろん仕事でだったらあり得るけど」

「仕事って、密さんは働いているんですか?」


 ソフィーが目をぱちくりさせます。世織はあちゃーと頭を抱えましたが、やがてお願いするように手を合わせました。


「ごめん、今のは忘れて。神無月君にいわれてるのよ、あの子のことについては情報をもらしたりしないようにって」

「えっ、じゃあ世織ちゃん、ヒッ君の力がなにか知ってるの? ヒッ君、人前じゃまず力使わないし、いつも無口で静かだから、誰も力のこと知らないとばかり思ってたわ」

「うん、知ってはいるよ。一応委員長同士だし、それで教えてもらったの。でも、誰にも話すなってくぎをさされてるから、こればっかりはみんなにはいえないよ。まぁ、有栖川(ありすがわ)さんのように力を悪用することはないから、そこは気にしなくても大丈夫と思うわ。」


 まりあの名前を口にしてから、ふと、世織は教室を見まわしました。


「あれ、そういえば有栖川さんは、どこに行ったのかしら?」


 世織にいわれて、みんなも教室の中をきょろきょろ見ていきます。さっきまでは、なんとかソフィーに近づこうと様子をうかがっていたのに、いつの間にかすがたが見えません。


「ヘンタイヨウもいなくなったネ。ワタシの目をくらますなんて、あいつらも忍者かもしれないワ」

「絶対違うと思うけど。でも、確かに不気味ね。有栖川さんと江口君がそろってすがたを消すなんて」

「まさか、二人でよからぬことを考えてるんじゃないかしら」


 ポン子の言葉に、世織たちはすぐに笑って首をふりました。


「いや、あの二人が協力するなんて、天地がひっくりかえったってありえないわ。まぁ、江口君が有栖川さんになにか持ちかけたりすることはあるかもしれないけど、有栖川さんがそれを許可するとは考えられないわ」

「わたしもそう思うわ。あの二人、確かにその……え、エッチで、変態だけど、変態の性質が違うから、協力するとは思えないよ」

「まぁ、もし協力されたら、変態が倍になるわけだから、とんでもないことになるけどな」


 治実がアハハと笑うので、みんなもつられて笑いました。しかし、二人がそろっていなくなったことで、なんともいえない不安の雲が、みんなの心をどんよりと包みこむのでした。

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