五月の話 ~あなたは犬派? それとも猫派?~ その12
「しかしまあ、あんたたちもなかなか強いじゃんか。あたしは強いやつは大好きだから、また遊びに来なよ」
治実がミイコとウルフィーににやりと笑いかけます。桃太郎もへへっと笑ってうなずきました。
「またやろうぜ。ま、今度はおいらたち犬派が勝つけどな」
「ふん、返り討ちにしてやるよ。でもまた戦おうな」
「ねぇ、そっちで盛り上がってるところ悪いんだけどさ、結局この子たちどうするのよ? やっぱりこの公園で育てるの? それとも出雲の湯に連れて帰るの?」
健闘をたたえあう四人に、花子があきれ顔でたずねました。花子に目をやり、治実は肩をすくめます。
「そうだな。とりあえず里親が見つかるまでは、ここで育てるよ。この公園、ほとんど人も来ないし、ここだったら悪いやつにいじめられたりしないだろ。ホントはあたしが飼えたらいいんだけど」
「んにゃ? のらにゃーがいるんにゃか?」
ミイコが花子のそばへ寄ってきました。段ボール箱に入っている子猫たちを見て、ミイコは目を輝かせます。
「かわいいにゃあ。このチビたちは、治実の飼い猫にゃか?」
「飼えたらいいんだけど、うちはマンションでペット禁止なんだ。だから飼い主がいないんだよ。でも、野良猫として生きていくにはまだ小さすぎるしな。どうしたもんか困ってたんだよ」
「じゃあにゃあたちがお山で育てるにゃよ」
ミイコの言葉に、治実は目を丸くしました。
「えっ、いいのか? 三匹もいるけど」
「問題ないにゃよ。にゃあは化け猫にゃから、のらにゃーたちも友達にゃ」
にゃっしっしと笑うミイコに、ウルフィーもうなずきました。
「しかたねぇな、あたいも協力してやるよ。お前だけだとちゃんと世話できるか心配だからな」
「失礼なやつにゃねぇ、のらにゃーたちのお世話くらいできるにゃよ。おみゃーこそ、のらにゃーたちをいじめたら承知しないにゃよ」
「あたいは弱い者いじめする趣味はないんだよ。ちゃんと世話してやるさ」
「食べたりしないにゃ?」
「するか!」
ウルフィーがツッコみ、二人は笑いだしました。治実たちも、それにポン子たちも、つられて笑ってしまいます。ひとしきり笑ったあと、治実が二人にいいました。
「ありがとう。大切に育ててくれよ」
「もちろんだにゃ。にゃあが責任を持って育てるから、安心するにゃよ」
「あたいもこいつがサボったりしてないか見張ってるから、心配するなよ」
へへっと笑いあうミイコとウルフィーを、ポン子たちはほっとしたように見ていました。
「よかったわね、なんとか無事にまとまって。でもあんた、今回は全く役に立ってないじゃないの。まぁ今までも別に役に立つことなかったけどさ」
ポン子がジト目でクシナを見ました。クシナはほおをぷくっとふくらませてから、ポン子をにらみかえしました。
「ひどいですよぉ、クシナはちゃんと役に立ってますぅ。今日だってクシナがいないと、うまくまとまらなかったんですよぉ」
「いや、クシナちゃん全くなんにもしてなかったじゃない。最後は真白君が収めてたし」
「それをいうならポン子ちゃんもですよぉ! ポン子ちゃんだって犬猫大戦争を止められなかったですぅ」
「止めようとはしてたじゃないの、あんたは完全に逃げ腰だったけどね」
「クシナは逃げ腰なんかじゃなかったですってばぁ。ただちょっと調子が悪かっただけですよぉ」
いいあらそう二人を見て、治実と桃太郎が問いかけました。
「なんだなんだ、お前らも犬派か猫派かでケンカしてるのか?」
「そういや新入りはどっち派なのよ? まさか犬派じゃないだろうね」
治実と桃太郎ににらまれて、クシナはびくっとからだを固くしました。
「そ、そ、それはぁ……」
「あたしはどっちも好きかしら。どっちにもそれぞれ良さがあるから、決めるのは難しいわね」
さらりというポン子を、クシナはくちびるをとがらせてからにらみつけました。
「あー、ずるいですぅ、クシナもどっちも」
「おっと、だめだぜ。あんたはちゃんとどっちか決めてもらわないとね」
「そうだぜ、新入り。おいらたち犬派につくのか、それとも猫派につくのか、ほら、どっちなんだよ?」
治実と桃太郎にせまられて、クシナはたれ目をうるうるさせていましたが、ついに爆発してしまいました。
「もうっ、クシナはどっちもきらいなんですよぉ! クシナは鳥が一番好きなんですぅ。つばさがあるから、クシナの仲間なんですからぁ!」
「なんだと、こいつ!」
「鳥なんて一番許されねぇ選択肢じゃねえか!」
治実と桃太郎が同時にどなりつけました。クシナはひぇっと身をちぢめます。
「クシナちゃん、この二人にそんなこといったらだめでしょ。あーあ、あたし知らないよ」
すがりついてくるクシナに、ポン子は肩をすくめていいました。治実が鬼のような形相で、クシナをにらんで見おろしました。
「やっぱりあんたは、いつかボコボコにしてやるからね」
「い、い、いやですぅ、許してくださいよぉ!」
公園にクシナの悲鳴がひびきわたりました。
「はぁ、はぁ、やっと、終わったぁ……」
ぐったりと机に倒れこむポン子に、ソフィーがオレンジジュースを差し出しました。
「よくがんばりました。でもこれでみんなゴールデンウィークの宿題終わらせることができましたね」
ゴールデンウィークの最終日、正確には日付が変わってその翌日になっているのですが、午前一時を過ぎたころに、ようやくみんな宿題を終わらせることができたのです。ポン子、花子、クシナの三人が、あくびまじりに伸びをしました。
「あぁ、眠い……。でも、これで日美子先生に怒られずにすむわ」
「でも、結局調査できたのは治実ちゃんたちと会ったあの日だけだったね。ミイコちゃんたちのダウジングも、結局勘違いだったみたいだし、宿題はできたけど調査は大失敗って感じかしら」
花子の言葉に、愛子もすまなそうにうなずきました。
「うまくいくと思ったんだけど、結局反応なしだったもんね。でも、他にどんな調査方法があるかしら?」
「うーん……」
考えこみますが、それよりも眠気が勝ってみんな考えがまとまりません。ソフィーがふわぁっとあくびしてから、つぶやきました。
「じゃあ、どうやって調査するかも宿題ってことにしましょう」
「ええー、もう宿題はこりごりだよぉ」
ポン子の悲鳴に、みんな思わず笑ってしまいました。
いつもお読みくださいましてありがとうございます。
本日はこのあと夕方ごろにもう1話投稿予定です。




