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五月の話 ~あなたは犬派? それとも猫派?~ その7

「でも、本当にそんなぼうで、ヤマタノオロチを調査なんてできるのかなぁ?」


 ポン子が疑わしげに、愛子を見ました。愛子は両手に一本ずつ、L字型のぼうを持っています。


「ホントはオカルトチックなアイテムなんだけど、ポン子ちゃんたちのように、妖怪だっているんだから、きっとこれも効果があると思うわ」

「でも、面白いですね。ダウジングっていうんですか。こんなの初めて知りました」


 ソフィーが興味深そうに、愛子から借りたタブレットを見ています。そこにはダウジングのやりかたが書かれたサイトが表示されています。


「もともとは地下水とか鉱脈を探す方法っていわれてるんだけど、ヤマタノオロチはマグマの中に住む怪物なんでしょ?」

「そうですよぉ、マグマの中で暮らしてるって聞いたですぅ」


 クシナの言葉を聞いて、愛子はにこっと笑いました。


「じゃあきっとヤマタノオロチも、これで調査できるわ。だってマグマが活性化してたら、地下の水脈とかにも変化が起きているはずだから」

「でも、それいったいどうやって使うの? 地面に突きさすとか?」

「ううん、見ててね、こうやって持って……」


 愛子はL字型のぼうをまっすぐ前に向けてから、そろりそろりと歩きはじめました。その様子を不思議そうに見ていたポン子でしたが、やがて愛子に問いかけました。


「……で、いったいなにがわかるの?」

「このサイトには、地下水脈とかがある場合に、愛子さんが持ってる金属のぼうが、勝手に横を向くって書いてますよ。横になったところの地面の下で、いろいろ異変が起きてるってわかるんですよね」


 ソフィーが助け船を出しました。愛子はすぐにうなずき、金属のぼうを注意深く見つめます。


「そうなの。だからこれを持って町中を歩けば、どこにヤマタノオロチがひそんでいるかわかるのよ」


 自信満々な愛子に、ウルフィーが肩をすくめました。


「おいおい、そんな悠長なことやってたら、それこそヤマタノオロチが目覚めちゃうんじゃないの?」


 愛子がムッとした顔でウルフィーを見ました。


「でも、地下に住んでる怪物なんでしょ。それじゃあ他に調査のしようがないじゃない」

「そりゃあどうかな。あたいは狼女だ。そして狼ってのは鼻もすごく利くんだぜ。つまりあたいの鼻なら、ヤマタノオロチがどこにひそんでいようと、たとえ地下にひそんでいようと、見つけられるってわけよ」

「でも、おみゃーヤマタノオロチのにおいなんて知ってるんにゃか?」


 ミイコにツッコまれて、ウルフィーはうっと言葉につまりました。ミイコは大げさにため息をついて、それから鼻で笑います。


「やっぱり犬はダメにゃね。そんな簡単なこともわかんないにゃんて。においがわかんなければ、ヤマタノオロチを探すなんて無理にゃよ」

「うるせぇ、じゃあお前はどうやって探すつもりだったんだよ?」


 ウルフィーに聞かれて、ミイコはぐっと口をつぐみました。ウルフィーもわざとらしくため息をつき、ふふんと笑いかえしました。


「なんだ、なにも考えてなかったのか。ふん、お前もあたいのこといえないじゃないか。むしろなんにも考えてなかったんなら、あたいよりも悪いじゃないか。これだから猫は無責任なんだよ」

「そんなこといって、おみゃーはなんにも役に立ってないにゃろ! それなのに、にゃあのことを悪くいうなんて、生意気だにゃ!」

「お前が最初に悪口いったんだろ! 生意気なのはどっちだよ!」

「ちょっとちょっと、二人ともケンカしないでよ。ケンカしてたら調査できないでしょ」


 愛子にいわれても、二人は完全にヒートアップしています。今にもつかみあいのケンカになりそうです。ポン子と花子があわてて二人の間に割って入ります。


「ほらほら、そこでストップ! こんなとこでケンカしないの」

「でも、こいつが悪いんだにゃ!」

「なにいってんだ、お前が悪いんだろ!」

「ちょっと待ってちょっと待って、じゃあこうしましょ。ほら、二人にダウジングのぼうを渡すから、これ持って町をめぐってきて。ちょっとゆるめに持つのがコツだよ。それで、このぼうが横を向いたら、その場所をわたしたちに教えてほしいの。どっちが先に探せるか、競争ってのはどう?」


 愛子の提案に、ミイコとウルフィーはそろってうなずきました。そしてすぐににらみ合います。


「望むところだぜ、あたいのほうが優秀だってこと、思い知らせてやるよ!」

「ふんっ、飼い主に逆らえないやつが生意気にゃ! にゃあが飼い主だって徹底的にわからせてやるにゃ!」

「はい、それじゃあよーいスタート!」


 愛子がパンっと手をたたいたので、ミイコとウルフィーはそれぞれ反対方向へダッシュしていきました。すごい勢いの二人を見送り、ポン子たちはそろってため息をつきました。


「すごいわね、あの二人。猫派か犬派かって、そんなに大事なことなのかな?」


 あきれ顔でポン子がつぶやきました。花子がからかうようにたずねます。


「ちなみにポン子ちゃんはどっち派なの?」

「いや、どっち派かって聞かれても……。別にどっちでもいいかなぁ。でもあたし化けたぬきだから、犬はちょっと怖いかな」

「でも、犬のほうがよくなついてくれますよ。もえちゃん、あの、わたしが人形だったときの持ち主ですけど、もえちゃんの家も犬を飼ってて、すごいおりこうさんでした」

「ふーん、ポン子ちゃんは猫派で、ソフィーちゃんは犬派なんだ」

「別に犬派とかではないですよ。だって動物はみんな大好きですもの。犬も好きだけど、猫も好きです」

「あたしも別に猫派とかじゃないけど、まぁいいわ。とにかくあたしたちも調査していきましょう。愛子ちゃん、まだそのぼうってあるの?」

「ごめん、もうないわ。こんなことなら人数分作っておけばよかったわね。そうすればみんなでもっと効率よく調査できたでしょ」


 残念そうにつぶやく愛子に、ソフィーが首をふりました。


「気にしないでください。愛子さんはいろいろアイディア出してくれて、すごい助かってますよ」

「でも、あの二人が帰ってくるまで、どこで待っておく? ここでつっ立ってるわけにもいかないし、かといって遠くに行くと、二人がわたしたちを見つけられなくなるだろうし」

「あそこの公園はどうかしら。ほら、すぐ近くだから、ミイコちゃんとウルフィーちゃんが帰ってきてもわかるでしょ」


 愛子が指さした先には、少しさびれた感じの公園が見えました。すべり台とベンチしかない公園で、ゴールデンウィークなのにほとんど人のすがたが見えません。影になってよく見えませんが、木のそばに女の子がいるだけのようです。自分でいったのに、愛子が気まずそうな顔をしてぽつりとつぶやきました。


「……やっぱりやめよっか」

「別にいいですよぅ。クシナ、ずっと立っておくの疲れましたぁ。ベンチで休みたいですよぉ」


 クシナの言葉に、みんなくすくす笑いました。


「クシナちゃんったら、まだ全然調査してないのに、もう疲れたの?」


 花子に笑われて、クシナはムーッとくちびるをとがらせます。


「クシナはさっきからずっと調査してるんですよぉ! 女神さまからもらったくしで、その、だ、だじぐ? とか、そんなのをずっとやってるんですぅ」

「ダウジングね。ま、そんなうそはどうでもいいとして」

「なにがどうでもいいですかぁ! またクシナのことバカにして」

「はいはい、わかったわかった。ま、とにかく公園で待っておきましょ。そのうち二人も来るだろうし」


 ポン子が公園に向かって歩き出したので、みんなも公園へと向かいました。


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