表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/485

五月の話 ~あなたは犬派? それとも猫派?~ その6

「ソフィーちゃん、もういい加減機嫌なおしてよ」


 ポン子がソフィーの頭をなでながらいいました。いっしょのふとんに入っているのに、ソフィーはポン子に背を向けて、見向きもしてくれないのでした。


「愛子さん、それってタブレットかしら? リンコ先生が使ってるの見たことあるわ」


 ポン子に背を向けたまま、ソフィーはとなりの愛子にたずねました。愛子はふとんに入ったまま、タブレットを起動していたのです。


「うん。パパのお古のやつ、もらったんだ。ヤマタノオロチのこと、いろいろ調べておこうかなって思って」

「ソフィーちゃん、ごめんってばぁ。ね、そんな無視しないで、機嫌なおしてよ」

「愛子さんそっちに行ってもいいですか? ちょっとこっちせまくって」


 ポン子の言葉は全く無視して、ソフィーは愛子にたずねました。今日は愛子だけでなく、ミイコとウルフィーも泊まることになったので、ふとんが足りなかったのです。そこで四人分のふとんに、七人が入ることになったのでした。ソフィーはポン子といっしょのふとんに眠っていたのですが、愛子が寝ているふとんに逃げてしまいました。


「ソフィーちゃん……」


 ポン子のすがるようなつぶやきに、くるりとソフィーがふりかえりました。むすっとした表情で、じろりとポン子をにらみつけます。


「どうせいっしょに寝てたら、またこちょこちょするんでしょ?」

「そんなぁ、そんなことしないよ。ホントだってば」

「どうだか。さっきは本当に苦しかったんですよ。やめてっていったのに、みんなで寄ってたかってくすぐって……。ポン子さんたちなんてもう知りません!」


 再びそっぽを向かれたので、ポン子はがっくりと肩を落としました。


「残念だったにゃ、ポン子ちゃん。ソフィーちゃんはもう完全に怒ってるにゃよ」


 ミイコがにゃししと笑いながら、からかうような口調でいいます。今度はポン子がふくれっつらになります。


「なによあんた、そんなこというなら明日連れて行かないわよ」

「にゃにゃ、ちょっと待ってにゃ。悪かったにゃよ。にゃあたちも連れて行ってほしいにゃ」


 あわててミイコがとりつくろいます。ポン子はふんっと鼻を鳴らしてミイコを見ました。


「愛子さん、見ました? ポン子さんったら、ミイコさんのこといじめてますよ。わたしのこともくすぐってきたし、ひどいですよね」

「ちょっとソフィーちゃん、そうじゃないんだって。ねぇ、ホントにごめんってば。もう絶対くすぐらないから、ね」

「……じゃあ明日はずっと勉強会でいいですね」

「ダメッ!」


 ポン子だけでなく、花子とクシナも声をあげました。ソフィーはジト目でポン子を見つめました。


「ならダメです。こちょこちょしたり、意地悪するポン子さんたちはきらいです」

「そんなぁ……」


 面と向かってきらいといわれて、ポン子はがっくりと肩を落としてしまいました。まくらに顔をうずめるポン子は無視して、ソフィーは愛子にたずねました。


「愛子さん、そのタブレットって、いろんなことを検索したり、動画見たりできるんですよね? わたしもポン子さんのスマホでユーチューブ見せてもらったりしてたから、すごいあこがれてたんです」

「うん。動画も見れるし、いろんなことを検索できるから、本当に便利なの。ソフィーちゃんも見る? わたし、かわいい猫の動画がお気に入りなの」

「にゃにゃ、猫にゃか。愛子ちゃんはやっぱり猫派にゃね。犬なんかより、猫のほうがずーっといいにゃよ」

「なんだと? 聞き捨てならないね。猫なんかみたいな、気まぐれで生意気なやつらよりも、犬のほうが忠実でしかも勇敢だ。犬のほうがずーっといいものだよ」


 ウルフィーが不満げにいいました。ミイコとウルフィーはいっしょのふとんで眠っていたので、お互い顔を見合わせにらみあいます。


「ふんだにゃ、おみゃーまだ犬のほうがいいなんて思ってるにゃか? 犬なんかより猫のほうがかわいいし、おりこうさんだにゃ」

「なんだと、いっとくが、猫より犬のほうが頭はいいんだぞ。それに飼い主にしっかりつくす、猫みたいにすぐ気が変わるやつらじゃないんだ」

「なにいってるんだにゃ、猫は自由な生き物なんだにゃ。だいたい飼い主につくすって、それっていいなりになるってことだにゃ。ま、ウルフィーはにゃあのいいなりにゃから、ちょうどいいにゃかね」

「なにぃ、だれがいいなりだ、こらっ!」

「飼い主につくすんにゃろ、ほら、にゃあが飼い主なんにゃから、つくすんにゃよ」

「こいつ、いわせておけば!」

「やる気にゃか!」

「うるさいっ、静かにしなさい! 寝れないでしょ!」


 花子にどなられ、ミイコとウルフィーは口を閉ざしました。むすっとしたまま、二人はたがいに背中を向けて、眠りなおしました。


「でも、猫派か犬派かって、ずーっと昔から争われてきた、永遠のテーマだよね」


 突然愛子がいいだしたので、みんな「えっ?」と聞き返しました。


「どっちが好きかで口論になって、それで別れたカップルもいるみたいよ」

「カップルって、恋人ってことですか? そんなことで別れる人たちもいるなんて、なんだか不思議ですね」


 ソフィーが首をかしげて愛子を見ます。愛子は訳知り顔でうなずきました。


「うん。猫派か犬派かって、キノコかタケノコかと同じくらい争いの種になる話題だもんね」

「えっ、キノコとタケノコ? なにそれ?」


 ポン子がぽかんとした顔で質問します。ソフィーがふんっと鼻を鳴らしました。


「ポン子さんは話に入ってこないでください」

「そんなぁ、ひどいよソフィーちゃん」

「まぁまぁ、ソフィーちゃんもそろそろ許してあげましょ。ポン子ちゃんたちも、もうソフィーちゃんをくすぐったらだめよ」


 ソフィーはうぅっと顔をしかめていましたが、疑わしげにポン子に視線を向けます。


「……絶対ですよ」

「もちろん、もう絶対くすぐらないわ。約束するよ、ね、だから」


 必死に頼みこむポン子を見て、ソフィーはふうっとため息をつきました。


「わかりました。でも、次くすぐったらもう知りませんからね。それと、ヤマタノオロチの調査はしてもいいですけど、ちゃんと宿題もしてもらいますからね」


 ようやくソフィーがにこっと笑ったので、ポン子はほっと胸をなでおろしました。


「さ、それじゃあもう寝ましょう。明日は朝からしっかり調査しなくちゃいけないですからね」


 ソフィーにいわれ、ポン子は何度も首をたてにふりました。ですが、愛子はちらりとソフィーを見てから、申し訳なさそうにいいました。


「ソフィーちゃん、みんなも先に寝てて。わたしもうちょっと調べものしてから寝るわ」

「愛子さん、大丈夫ですか? あんまり夜更かししたら明日大変ですよ」

「うん。もともとわたし、けっこう遅くまで起きてるほうだから。じゃあおやすみね」


 愛子にいわれて、みんなも心配そうでしたが、すぐに眠りにつきました。愛子はしばらくタブレットをいじっていましたが、みんなが寝静まったのを確認してから、ぽつりとつぶやきました。


「さ、それじゃあ誤字チェックしてから、投稿しましょ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ