87 「12階層」
今日から、四月に入りましたね。
思いのほか続けているこの小説も、方向性を変え時かと考えております。
少しでも楽しんでもらえるように、日々考えを巡らせたいと思っておりますので、これからもよろしくお願いします。
結局、黒フードからより詳しい情報を手に入れることはできなかった。しかし、レシルは自分の命がこの三人に狙われていることだけでもわかったことで、身構えることができるようになった。
レシルは、ここで取り押さえてしまおうかとも思ったが狭い部屋で、入り口側に立っている三人相手に一瞬のうちに無力化できるかと考え諦めた。
「で、あんたたちはこの後どうする気なんだ?」
「ここであったのも何かの縁って言うし、一緒に行動したいんだけどいいかしら?」
「(だよな、ターゲットを見つけたならそばに居ようとするよな。)」
「すいません、俺たちは昇格試験の真っ最中なので、一緒に行動できません。」
「でも、レシル、こんなところで別れたら彼らはこの先きついと思いますよ。」
「だな、調査するつもりでいるならこの先に行くことになるだろうし、魔物も格段に強くなるからな。」
「(こいつら!!!!)」
「すいません。ご迷惑かもしれませんが、ぜひそうしてください!」
レシルは三人と別れようと必死に言葉を紡ぎ、うまく断ろうとしたが無理だった。ジークとバルロは、この三人がレシルの命を狙っていることを知らない。そのため、一緒に行動しようとしている。善い行いではあるのだが、今回は正直とても迷惑で仕方がない。
結局一緒に行動することとなり、セーフルームを出て12階へ行くことになった。
「レシル、どうしたんですか?」
「俺は一番最後から付いていく。」
先頭からジーク、三人組、バルロ、レシルの順に階段を下りていくのだが、レシルはいつでも魔法が使えるように身構えながら進んでいった。
静かに階段を降りていくジーク達は、前来た時のように徘徊する魔物達に見つからないように行動した。
簡易的なセーフルームは、多少荒らされていたがあらかた無事だったため、修復するのにさして時間はかからずに済んだ。
「で、ジーク達この三人はどうするつもりなんだ?こんな所まで連れて来て、一緒に行動するにしても守りながら戦闘する余裕なんてないぞ。」
レシルはひとまずの安全が確保されると、ジークに嫌味を言うのだった。こんな連中と魔物との戦闘にいたら、確実に命を狙ってくると容易に想像できたため、せめてその状況が現実のものとならないように、レシルは頑張った。
レシルに指摘されたことは、ジークも考えていたらしく善意でここまで連れて来たがどうしたら良いかと考えていた。
「大丈夫ですよ、私たちはこの部屋から遠くへは行かないことにしますので。それに、魔物よけの魔法道具も持っていますから。」
「それなら大丈夫だな、あまり無理はしないように頼むぜ。」
話がまとまり、ダンジョン攻略へと向かうジーク達であるが、レシルだけはあの三人の動向が気になって仕方がなかった。
なんのためにと、探知を使い三人の位置を常に把握することにしたがダンジョン内では、感度があまり良くないらしく常に把握し続けるのは難しそうだった。
「(完全に見失うと何をされるかわかんないからな・・・。 そうだ。 タヒコ、さっき伝えた三人は危険人物だから俺を守ってくれよ。頼むな。)」
「(うん)」
探知で把握できないのなら、タヒコを使って身を守ろうと考えたレシルは三人の情報をタヒコに伝え、自分の周りに注意を凝らすよう頼むのであった。
タヒコに頼んだことにより、少しだけ安心することが出来るようになったレシルは、ダンジョン攻略に専念することにしたのだった。
今のところ、前回来た時のように魔物は襲って来ていない。
今回はなぜか、魔物に出会っても距離を取り警戒を強める個体が多く、襲ってくるものがいなかった。むしろ隙を見て、姿を消すものさえいた。
「どうしたんだ!?本当に!さっきからこんなのばかりじゃないか!」
「どうしたんですかね?こんなことが続くと、気味が悪いです。」
レシルは魔物達が逃げ出す理由を「精神」の力を使うことで知ることができていた。
「たぶん、タヒコの警戒してる気配を感じ取ってるんだ。タヒコはいつでも出てこれるように身構えてるからな。」
「なるほど、たしかにタヒコの覇気はすごいですからね。」
「それなら、今回は12階層を超えられるんじゃないか?」
「それは無理だろうな。ほら」
魔物が逃げることに気を良くしているのは一時のこと、レシルの示す先には前回歯が立たなかったトラ型の魔物が目に強い光を宿して見つめていた。
「弱い魔物にならタヒコの覇気は通用したみたいだけど、あいつには効かないみたいだな。本気で戦う気みたいだし。」
声をかける合間に一瞬にして行動を開始したトラは、距離を詰め前足を振り下ろしてきた。
一番距離の近かったジークが狙われとっさのことで動きが遅れた。
「タヒコ!」
ジークは間一髪のところで、入り口から手を伸ばしたタヒコに押され回避することができたがトラはかわされたからと言って動きを止めることはなかった。
続けてバルロとレシルに向けて、ぶつかる軌道を取りながらトラは転がりだしその巨体で潰そうとするのであった・・・・。
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