83 「ダンジョン攻略 (4)」
レシルが目覚めることなく、狭い階段で話し合いに熱が帯びていく。ジークもリリオも、先のことを考えての発言は、誰の言葉も入る余地がなかった。
「あー、分かった。リリオの言う通りかもしれない。少し焦り過ぎていた部分があったかもしれない。せめてもう少し、休んでレシルの様子を見ることにする。」
ジークは何を思ったのか突然言い出し、抱き上げようとしたレシルをそのままにし腰を下ろした。
リリオをはじめ、みんなが「どうしたのか?」と疑問を持った。
「ジーク、突然意見を覆すようなことを言ってどうしたんですか?」
「いや、レシルだったら安全なやり方を選ぶとちょっと思ってさ。思いつきで行動もするし、気分やなレシルだけど、安全で確実な選択を取ろうとするからな・・・。」
少し張り詰めた空気はなくなり、むしろ落ち着いて話だしたジークの話をバルロは黙って聞き、「そうかもしれない」と思うのであった。
長い間、同じところに居座ると言うのはあまり良いことではない。ダンジョンの中であれば、魔物に発見される可能性を高めるだけである。
リリオとジークの会話が終わって約一時間ほど経った。それだけの時間を休むことに回したおかげで、レシルを除く全員の体力は回復し、戦闘になっても問題なく対処できていいた。三度の戦闘が休憩中に起こったが、幸いなことに襲ってきた魔物の数はそう多くなく、十分に耐えることができた。レシルも目を覚まし、万全とは言えなくとも戦闘に参加できるほどにまで回復したレシルは、休んでいた時の話を11階への階段に向かう間で聞くのであった。
「ここが11階へ続く階段です。これから先は誰も入ることの出来ない禁足領域になってます。十分気をつけて行ってくださいね。」
「ああ、ありがとう。リリオたちも帰りにやられないように気をつけてな。」
リリオがジーク達に対して別れを告げ、ジークもリリオたちの帰りを心配して言葉をかけた。リンはレシルに抱き着き、心配のあまりその腕には力がこもっていた。
バルロもジョンやグフたちと話して、互いのことを心配し言葉をかけあっていた。
「リン少し放して。 タヒコ、出て来い。リンたちを9階層まで護衛しつつ見送ってくれ。」
レシルはリンに放してもらうと、入り口を作りタヒコを呼び出した。突然現れた黒い穴から、白くおおきな猿が出てきたことに、リリオたちは警戒と恐怖、驚きによって顔を固めた。ガットに至っては腰が抜けそうになっているほどだったので、タヒコを人前に出すことは避けた方がいいとレシルは改めて思うのだった。
「こいつはタヒコ。俺の獣魔。強いからリリオたちの9階層までの護衛をさせようと思って呼び出したんだ。」
「れ、レシル。そんな気を使わなくても・・・。」
「10階層の最深部。11階層への階段手前から9階層へ上がる階段まで、自力で帰れると思ってる?」
レシルの事実であるが、強く言い返せない主張に言葉が詰まるリリオ。初めこそタヒコに驚いたが、そのようなことを言われて「はい、そうですか」と言えるほどリリオたちのプライドは安くない。
「俺たちだけじゃ、危険なことはわかる。でも、手助けされてばかりだと俺たちは強くなれない。気持ちは嬉しいけど、遠慮する・・・。」
「ダメ。タヒコをつけるから!絶対に!!」
レシルは最後まであえて言わせず、強く主張しました。リリオの目を真っすぐに見つめ、決して揺らぐことのない視線に、目が泳ぎそうになるリリオはあきらめて了承するのでした。
タヒコをリリオたちにしっかりと紹介、挨拶をさせ別れる前に色々と吹き込んでいくレシル。
「タヒコ、リリオたちを頼んだぞ。」
「(まかせて。)」
タヒコには「精神」を返して、直接会話することを許していた。リリオたちは声とは違う会話の仕方に少し慣れない様子だったが、レシルに色々と言われたこともあり不安を抱きつつも別れたのだった。
「レシル、リリオたちとタヒコは大丈夫でしょうか?会話できると言う話は聞いてますが、色々と・・・。」
「まあ、大丈夫じゃないか?今さら心配しても仕方ないし。それに、そんなに長い間一緒に行動するわけじゃないし問題ないと思うけど?{ま、タヒコには俺たち以外の人間との接触の仕方を学んでほしかったからちょうどよかったけど。}」
「??? 何か言いました?」
「何でもないよ。」
レシルはタヒコが本当の意味で、人と折り合っていくことを前々から考えていました。今まではあくまでもペットのサルとして見られてきたタヒコだったが、今は体も大きくなり意思疎通が取れるようになった。だからこそ、様々なことができるようになってほしいとレシルは思っていたのだった。
リリオたちと別れ、ジーク達は階段を下りていく。今までの階段とさして変わった様子がない、普通の階段を下りていくと今までとは違う通路に出た。
使われている石が白っぽい物に変わり、壁に松明が駆けられ明りが奥まで続いていた。何より今までと違うのは、迷路のように入り組んでいた通路が一本道となっており、その両側に部屋が設けられていた。さながら、建物の廊下を引き延ばしたかのように。どの部屋にも扉はなく、中に魔物が居たり、死体があったりと色々だったがこの通路は長く続いていた。
「長い廊下だな。もう、一時間くらい歩いてるぞ。」
「廊下って・・・。一応ダンジョンだからな。それにこんなに長い廊下なんてヤダ。」
「まぁ、まぁ。一本道で迷うことはないですし、魔物も部屋くらいにしか隠れるところがないから他の階層よりは気が楽じゃないですか。」
ジーク達は部屋を一つ一つ確認しながら進むため、はっきり言って進む速度が今までの半分以下になっていた。魔物が潜んでいるかもしれない部屋を素通りすることもできず、一つ一つ確認しながら進み1時間たった今も先に続く通路を進むのであった。
結局、二時間かかって通路の終わり、12階層への階段のところまで行きついたのだったが、せっかく回復した体力を大きく使うこととなり、戦闘による疲労も考慮して12階へ行く前に部屋一つを占領して休むことにしたのだった。
階段横の部屋を占領して、レシルが収納から木の板を取り出しドア代わりとして固定すると、簡易的ではあったが「セーフルーム」が完成した。もちろん見張り役は必要であるがレシル達は、かなり安全が確保された部屋で落ち着いて休むことができるのであった。
「11階層は強い魔物は全然いなかったな。」
レシルは11階層出て来た魔物が思いのほか弱かったことに驚いていた。禁足領域と言われる領域に入ったのだから、一回の戦闘でも苦しい戦いになると考えていたのだったが実際に出て来た魔物は8,9階層の魔物と強さ的には変わらないように感じられていた。
「確かに。スケルトン系の魔物しか出てこないし、強さ的には強く感じなかったな。」
ジークもバルロも同意見だったようだが、レシルは用心に越したことはないということで休んだ後、12階へ進むのだった。12階は、水路の張り巡らされたマス目状のフロアになっていた。階段を出てすぐにフロア全体を見渡せるようになっており、階段から区切られた部屋で獣系の魔物の姿が目に入った。
マス目状の部屋にわずかにつけられている明りで映し出されるのは、目が退化してしまったと思われる鼻と耳が大きく発達した虎のような魔物や壁の陰から辺りを見渡す何か。姿形は見えないが水の中から手を伸ばし他の魔物を引きずり込もうとしていた魔物。
距離がありわからない事やよく見えないこともあったが、軽く見ただけで強そうな魔物が数体いた。
先ほどとの落差が大きくジークとバルロは、少し恐怖を感じているようであった・・・・。
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