8 村
ブックマークをつけてくれた方がおりました!!!!
ありがとうございます!
これからも、頑張って書きたいと思います。
2018/1/22 修正を入れました。
ついに念願の魔法を聖樹から教わり、修行の日々を送っていたレシルだったがそんな日々は突然に終わりを迎えた。突如現れた虎の様な生き物が見守る中、聖樹はレシルと別れることとなった・・・。
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頬に感じる暖かく柔らかい感覚とは別に、全身を包む冷たい空気が徐々に目を開けようとしていた時、全身を痛みが襲い、否応なしに目が覚める。突然のことに辺りを見渡せばいつもの光景はなく、聖樹と共に過ごした崖棚よりも遥かに広い大地が広がっており、辺りを見渡しきょろきょろとするレシルの姿を見つめる白い毛並みの虎が見つめていた。
そして、レシルは手に持っていた衣服と握りしめていた種を見て思い出した。すぐさま、虎の元へといき質問しようと話し出す。
「あなたは一体だれなんですか?ここはどこで、聖樹はどこにいますか?」
慌てる気持ちも大いにあったが、聖樹を敬い、また聖樹自身も礼を用いて話していた相手なだけあり、レシルもそれに乗っ取り気持ちを抑えて話をする。
「状況は理解しているようだな。しかし、理解してなお冷静さを失わず私に話しかけるか・・・。管理者様が、お前に目をかけていた理由が少しわかった気がする。いいだろう、どうせお前と会うのも最後だろうからな、質問に答えてやろう。」
虎は、そういうとその場に座り込みレシルもそれに続いた。
タヒコは、服の中に隠れていたがレシルによって引っ張り出され胡坐をかいて座るレシルの股にその身を落ち着かせた。
「まず、さっき聞いたことについて教えてください。」
「ああ、ここは、南の聖樹から、人の足で約一日ほど離れたところにある土地で人間たちの活動圏にすで入っている。南の管理者様の最後の命により、お前を人里へ連れていく途中だ。なお、管理者様はもういない。お前がいた崖に戻ろうとも、意味はない。」
レシルは、突きつけられた事実に信じたくはなかったが、手の中にある別れ際に渡された種と衣類、遠く離れた見知らぬ土地で否定しようとするも、その事実を証明する物と記憶と理性がそれを一切として許さなかった。
悲しい気持ちはあふれたが、理性がすべてを沈めていく目に涙を溜めようともそれを溢そうとしないレシルを見つめ虎はしゃべりだす。
「何とも不思議な子供だな。姿形は子供であるが、その心持は見姿とは釣り合っておらぬの。それらも、気にかけておられた理由やもしれぬな。とりあえず私はお前を人里へと連れて行こう、着けばそれより先お前の自由にすればいい。」
そう言い終わると、虎は立ち上がり背に乗るように催促してくる。
涙をこらえ感情を飲み込んだレシルは、種をポケットに大切にしまい服を着替えて虎の背に手を駆ける。
「俺を運んでくれてありがとうございます。これから会うこともないとおっしゃっていましたが、あなたのお名前を教えていただきたいです・・・。」
「うーん、すまないが、私に名前はない。私は主様に使えて三百年ほど経つが、名を頂けるのは五百年を過ぎてからだ。なので、私のことは主に使えている魔物くらいの認識で構わない。」
ちょっと気まずさを覚えつつも、レシルは背にまたがり黙ったままつかまった。
虎は、空を駆けるように上り風を切りながら進んでいく。
森と山を越え、川を渡り小さな集落が目に入ってきた。虎は、集落から少し離れた開けた土地にレシルを下ろした。
「ここからならばお前ひとりで、人里へ行くことができるだろう。短い間ではあったが、なかなかに意味ある時間を過ごせたと思う。あとは、お前の好きにするがいい。」
「ありがとうございました。いろいろと・・・。」
「うむ。最後に教えておこう、その種は体内に取り込んでこそ真価を発揮する、管理者様がお前に渡したそれはとても貴重な物ゆえ無くしたり、誰かに取られたりせぬようにするのだぞ。」
虎は、そういうと空へ駆け上りあっという間に見えなくなっていった。
レシルは、肩に乗るタヒコと顔を見合わせると空から見た村の方へ向かって歩き始めた。
村の家々が見え始め、道なりに進んでいくと家の軒先で何かをやっているふくよかな女性がいた。
おばさんと言っていい風体で、レシルは初めて会うこちらの世界の人間にどう話しかけようか考えているとおばさんの方から声をかけられてしまった。
「おや、そんなとこに突っ立ってどうしたんだい?うーん?見かけない顔の子だね。どこの子だい?」
「あ、あの、えっと・・・。」
いきなり声をかけられ、うまく言葉が出ずに口ごもってしまたレシルは何をどうお話せばいいか必死に考えたが、おばさんはレシルに近づきこの村の子じゃないことを確認するとレシルに話しかけてきた。
「別に取って食おうなんてことはしないよ。あんた、この村の子じゃないね?ま、聞いたところでその様子じゃ答えれなさそうだし、とりあえずついておいで。」
言葉の出ないレシルをよそに、口早に話し終えるとの手をつかみどこかへ連れて行こうと手を引く。とっさに、つかむ手を振りほどこうと力を込めるがそこは大人と子供、いかに修行をしていたとしても六歳のレシルが緊張と怯える状態で込める力が家事を毎日こなす主婦の力に敵うはずもなく、足早に立ち並ぶ家よりも一回り大きい家へと連れていかれた。どうやら、村長の家の様だ。
日中の真昼間と言うこともあり、村には手を引くおばさんのような主婦と子供とお年寄りの姿しか見えないが抵抗する子供が手を引かれて村長の家へ向かう姿を見れば何かあったのかと気にするのは当たり前で、それが、村の子でないのであればどうしたのかと、疑問に思うだろう。そうこうしない内にレシルの存在が村中に広まった。
「ドンドン。村長ー!いるかい?ちょっと出てきとくれ。」
そんな呼びかけを何度か繰り返し、扉が開いた。中からは、腰が少し曲がったおばあさんが出迎えた。
「なんだい、アンナか。大きな声を出してこんな真昼間にどうしたんだい?」
どうやらこのおばさんはアンナと言うらしい、村長とドアの前で軽く話をしているがその手はしっかりとレシルの手を掴んだままであった。レシルは、ここへたどり着くまでに落ち着きを取り戻し必死に抵抗しているように見えるように行動しつつ二人の会話を聞いていた。
アンナは、村長にレシルを見つけてここへ連れてくるまでの経緯を話しており、村長は顔をアンナに向けたまま集中して話しているように振舞っていたが、目の端でレシルの様子を終始観察していた。ひとしきりアンナが話し終えると、家の中に招かれ扉をしめた後レシルはアンナの手から解放された。
「さてと、アンナ、ここまでありがとう。この坊やのことは任せて戻っていいよ。まだ、やることがあるんだろ?」
村長は、アンナにそういいながらお茶の準備をしだした。
「確かに、やることはまだあるけど村長一人に任せて帰るわけにはいかないよ。私が連れてきたんだ、最後まで面倒見るさ、それにその子見かけによらず力があるよ、おまけに頭も回るみたいだしね。」
ひたすら横暴にここまで連れてこられたと思えば、アンナはレシルのことをしっかりと観察していたようでレシルが、途中から抵抗する演技をしていることも、本気になれば普通の子供よりも強い力を出せることもアンナは見破ったようだ。
そんなことはつい知らず、ここまでやってきてしまったレシルは自分が置かれている状況に危機感を覚えた。お茶の支度を終え三人分のお茶を用意しながら席を薦める村長も、ここに来るまでにレシルのことを観察しレシルの嘘を見破ったアンナも・・・。この世界の村人はこれが普通なのかと疑問を持ちつつも今度は冷静な頭で最大限の警戒をした。タヒコも、ここに来るまではレシルにつかまったままであったがレシルの警戒と共に、肩に移り毛を逆立てて身をこわばらせつつも警戒し始めた。
「はあ、アンナこれから話を聞こうというのにこんな小さな子とサルに警戒させるようなことを言ってどうするんだい?」
村長の呆れたような言葉に、アンナは言い返したが、二言目が発せられる前に村長の言葉で遮られ、それ以上アンナは言葉を発さなかった。
「やれやれ。 そんなに警戒しないでおくれ、ただ話を聞くだけだよ。全く、安全のために警戒をするのはいいことだけど、今後の行動に支障が出るようなことはあまりしないでほしいね。」
「はいよ、村長。これからは、もっとうまくやるようにするよ。」
村長が軽うなずき、話は終わったようだったがレシルは「それでいいのか!」とツッコミを心で入れつつも警戒したままだったが疑問を口にしてみる。
「この村の人はみんなこんななのか?もしくは、村人と言うのはどこも皆こんな感じなのか?」
レシルが一区切りついた会話に、疑問を口にする。すると、答えはすぐに返ってきた。
「あー、違う違う。ここの住人は元冒険者だったやつが多いのさ。冒険者をやってなかったやつも普通にいるよ。私たちも、元冒険者だよ。私はここの暮らしにもう慣れたが、アンナはまだ、五年くらいだからね。昔の癖や、習慣が抜けないのさ。ほかの村がどうかは知らないが、この村は今話した通りさ。」
レシルの質問に村長が的確に答えてくれたことにより、気が少し楽になり危害を加える様子がなかったため警戒を解く。タヒコも、レシルに合わせていつも通りに戻り、肩で毛づくろいを始めた。
そんな、一人と一匹を見つめつつ村長は笑顔を見せ、アンナは村長の隣の席へ腰を下ろす。村長がお茶をレシルに薦め、席に着き自身も一口お茶を飲むと話をきりだした。
「さて、わだかまりもほぐれてきたところで話を聞かせてくれないかい?」
「はい、俺も無駄に警戒させるような行動をとってしまってすいませんでした。俺の名前はレシル、六歳です。こっちのサルはタヒコっていいます。」
「おや、思っていたよりも礼儀正しいね。アンナよりも品がありそうだ。」
「ほっといとくれ、村長。」
2人の会話に先ほどあった緊張感は、全く感じずレシル自身も警戒する気を失った。
その後、村長は改めて自己紹介をしてくれた。
村長は、アイラと言う名でアンナの祖母らしく、二人とも元冒険者だという。もともとこの村は、村長世代の元冒険者により作られた村で今いる住人のほとんどができた時からいる住人の家族でその他が他の土地から来た者たちだという。
村長は、自分のいる村のことを簡単に説明し終わるとレシルへと質問を向けた。
「で、今話した通りなんだけど、あんたはどこから来たんだい?この村の子じゃないのは確かだし、かといって親を連れず一人で旅をするような年じゃないし。なにか、あったのかい?」
「まあ、あったと言えばありましたね・・・。」
「なにがあったんだい?」
なんとも歯切れが悪く、少し陰のある返しに二人は顔を見合わせさらにアンナが質問を重ねてくる。
「まあ、簡単に言えば育ての親が亡くなり、親の願いを聞き届けてくれた人がここまで連れてきてくれたんですけど、その後俺一人で村に来て、今に至ります。」
細かい部分がかなり抜けている話ではあったが、子供のする説明ならば十分に通じた。アイラとアンナは、その連れてきてくれた人物はどうしたのかと聞いてきたが、すぐにどこかへ行ってしまったと答えると、二人は頭を悩ませた。
少しして、結論が出たのかアイラが話し出した。
「あんたに帰る家がないなら、ここに住むといい。この家には私一人でしか住んでないし、部屋も余ってるし、もし行くところがないなら、遠慮することはないよ。」
「ばあちゃん!そんな、いきなり何言ってるんだい!確かに、この子の身の上が事実なら助けようと考えるのはわかるけど、会ってすぐの子供とは言え知恵も力も持ってる信用のない子をいきなり住人にするのは危険さ。」
「アンナの危惧することも分かる。でも、さっきの表情や来た時の警戒の仕様なんかを見ると当たらずも遠からずのような気がするんだよ。だから、この子を助けてやりたいと思ったさ。」
「はあ、私も同じように思ってたさ。でも、村にある心配事や不安なことは少ない方がいいと思ってね。私が、守りに入りすぎたのかね・・・。 しょうがない、私も面倒を見るよ。もともと、連れてきたのは私だしね。レシル、ここにいる気があるならちゃんといい子でいるんだよ!」
「知恵も力も持ってる、気品のあるこの子がアンナなんかの言葉でいい子になるのかねー?」
「なんかとは何さ!村長!」
「おや、ばあちゃんとは呼ばないのかい?・・・・」
そんな孫と祖母の揚げ足取りな口喧嘩は、レシルの落ち込んだ心を切り替えるのには十分すぎるほど暖かな物だった・・・・。
読んでいただいてありがとうございます。
よければ、また読んでください。




