73 「動き出した物」
「それじゃあ、さっそく素材を見せてもらおうか!」
そう言って向かい合い話しかけてくるのは、素材買い取り専門の男性職員「ダフ」。
元々受付嬢のカウンターで話していたのだが、まあ色々あってこちらに来た。その移動中に名を聞いたのだが、ダフはどうもおしゃべりっぽい・・・・。
「と言うわけで、プレートをチームメンバーとして登録してないチームと共同で魔物を狩り、プレート内での討伐数を増やし、二重で報酬を受け取ることがあったから、こうして魔石も鑑定することになってるんだけど。こりゃまた、すごい数だね。レシル君一人で狩ったなんて信じられない!」
「正確には俺一人じゃないが、まあ、そんなところだ。で、どうやって調べるんだ?魔石云々行っても同じものを使いまわすこともできるだろうし・・・・。」
「大丈夫だよ。それらすべてを判別するのがこの魔法道具、鑑定板でーす。巫女様主導の元作られ、乗せた物の情報を読み込み表示する機能を持った魔法道具!」
「へー!(ククリのやつこんなものまで作ってたのか。時計と言いこれと言い。他にも色々作らせてそうだな・・・。)」
レシルは堅苦しく長ったらしい説明を、耳半分程度に聞きながら鑑定板の説明を受けていた。
かいつまんで言うと、ククリによって作らされた鑑定板は名前やどこで取れた物なのかなどを判断することができる物で、それこそ素材以外の道具を乗せても情報は表示されないらしい。しかし、この板の示すことすべてが事実であることは、ククリが太鼓判を押しているらしく、アティカスの街のギルドには必ずあるとのこと。
「ですから、巫女様の開発されたこれはとても貴重な物であり、大発明なのです!」
「あの、もうその話はいいので、さっさと鑑定して報酬貰えませんか?」
レシルはダフの話を少なくとも10分はすでに聞いていて、周りで見ていた者たちも「まだ話してるぜ」などと小声で話している。確かに面白い話もあったが、レシルは鑑定を急がせた。
「すごいですね!すべて本物ですし、レシルさんが倒したものだと証明されています。」
レシルは表示された画面を見ると、それぞれの魔石が「なんの魔物から取り出されたか」「魔物を倒した場所」「倒した人物」が書かれており、それが表となって画面外まで続いていた。そして、見ていたレシルは自分の名前の後ろにタヒコとついた魔石が数多くあるのを見て、これはどういうことなのか訪ねた。
「ああ、これは奴隷とか獣魔とかが倒した際に付く表示の仕方なんです。奴隷が魔物を倒しても主人の名前が前に表示されるんです。奴隷の手柄は主人の手柄、みたいな!」
「なるほど」とレシルは関心していたが、また、微かな情報でも引き出すことができてしまう鑑定板はバカにした物ではないと評価を密かに上げるのであった。
「えっと、魔石の鑑定はすべて本物だったので、これで常駐依頼の報酬がもらえますよ。レシル君、魔石はどうします?このまま売りますか?あと、素材もあればこのまま買い取りますけど・・・?」
「魔石は使うかもしれないからこのまま返してもらうよ。その代わり、「ドサ!」この素材を買い取って欲しいな、蟹とか貝の肉もあるけど、ここじゃなくて肉屋のほうが高く買ってくれるんだろ?」
「うわ、レシル君こんなにたくさんの素材に魔石、担いできたんですか!?すごいですね!」
「・・・・・。」
「えっと、とりあえずこっちが魔石です。肉系ならここでも買い取ってますよ、この街は色んな物が集まる所だから、基本的に物の値段が固定化されてるんです。えーと確か、蟹と貝は、っと・・・。あー、あった。物にもよるけど蟹は銅貨十枚から銀貨一枚の間ってなってますね。貝は、銅貨五枚から銀貨一枚みたいですね。 さてと、どれどれ?」
ダフは袋の中を開け中を調べていく、貝殻、蟹の足にハサミ、亀の甲羅に肉、アザラシの皮に牙・・・。レシルが集めた素材たちが袋の中に入っていたが、こんな袋一つに70近い魔物の素材が入り切るわけはない。どれもこれも一匹分、もしくは半匹分の量しか入れられてはおらず、残りをどうしようかとレシルは考えるのであった・・・。
「終わりましたよ、蟹の足に身、貝の身、亀の甲羅に肉、アザラシ(ブラックシール)の皮に牙。計、銀貨50枚でどうでしょう。もう少しこちらとしては値切りたいですが、亀の甲羅が解体が雑ですが大きな傷がない状態だったのでこの値段でどうでしょう?」
出されている分の素材を計算し終えた金額を、レシルに笑顔を向けて押し気味に話してくるダフ。レシルは一応「それでいい」と話を終わらせたが、ダフが席を立ち金の準備に向か追おうとしたとき、レシルはダフを呼び止めた。
「実はまだ素材はたくさんあって・・・。それも売ってもいい?」
レシルはそう言うとギルドを出ていき、すぐに袋を四つ引きずりながら戻ってきた。近くにいた冒険者の大人に手伝ってもらいつつ、袋をダフのいるカウンターまで運んでもらうとダフにその中身を確認させた。
中には、初めに鑑定させたものと同じ素材が詰められており、それが四つあることを確認させるとダフは「負けました。」と両手をあげて奥に入っていき、金貨2枚と銀貨50枚入った袋に、ついでに用意してくれた常駐依頼の報酬を渡してきた。
「全く、倒した魔石からして素材はたくさん残っているとは思ってましたがここで一気に売るとは思ってませんでした。」
「おかげで懐があったかくなったよ!ありがとう!あ、そうだ。あんたたちも運んでくれてありがとな!」
レシルはとなりで換金を見ていた、荷物を運んでくれた冒険者たちに銀貨を一枚ずつ渡し感謝したが、冒険者たちの受け取る顔は何とも渋い物だった。
自分よりも小さな子供に、ほんの手助けのつもりで手伝ったことに感謝の言葉はともかく、金をもらうことになろうとは思っていなかったため、渡された三人の冒険者は複雑な気持ちのまま受け取り戻っていった。
「それじゃあ、俺も帰るから。ありがとう!」
レシルはダフに別れを告げ帰るのであった。すでに日も暮れ始めてくることもあり、通りに人は多く、誰もが家で待つ家族のためにその足は早い様にレシルは感じた。
「早く帰ろ。」
レシルは道すがら、持って帰れる物を買いつつジーク達のいる王城神殿に帰るのであった。
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「お前たちにやってもらいたいことがある。先日殺された奴隷担当者の現場に残された手形の情報が入った。「入り江の海岸」にて白き獣が目撃され、その姿はサルのようだったとのこと。それらに関して調べを進めてもらいたい。」
「はっ!」
レシルが家路に帰る頃、日が沈み夜が訪れるのに合わせて、動き出す影が三つアティカスの街をうごめきだしたのだった。
三つの影は「入り江の海岸」と地元民から言われる場所を見渡せる、崖の上に集まっていました。
「ここがボスの話で出てきた「入り江の海岸」。」
「ああ、下には魔物がうようよいるそうだ。ホラあそこにも、魔物がいる。」
「こんなところに、奴隷担当を殺したやつがいるのかよ!殺し方もおかしけりゃ、いる場所も変なやつだな。」
「ここからは見えないところも多い。とりあえず、下に降りて痕跡を探そう。」
「ちょっと待って!下には魔物がうようよいるのよ!あそこに行くなんて自殺行為だわ!」
「でも、行かないわけにはいかないぜ?何か手掛かりがあるかもしれないし。」
入り江を訪れたのは、タヒコが殺した男の仲間であった三人組だった。細身だが落ち着いた口調の「トース」、冷静に見えるが少し抜けている「マース」、口調は荒いが周りをしっかり見ている「ガース」。
この三人組こそ、タヒコが男を殺した現場に訪れた三人組である。彼らは、奴隷を担当していた男が殺されたことに関して、情報を集め真相を突き止めるためにこの場所を訪れ仲間内で意見を交わしていた。
結局三人は、情報を確認するために入り江に降りることを決め、海岸をぐるりと囲う崖を少しずつおりていくのであった。三人の気配や物音に気付き動き出す魔物も居たが、三人はやり過ごしたり物音を最小限に抑え暗殺まがいな殺し方で、他の魔物からの発見を回避していった。海岸におり、浜辺を慎重に歩いていけばマーズが異変に気付いた。
「おかしいわ、いくら何でも魔物が少なすぎる!」
マースはそう言って、辺りを見渡しわざと魔物が出てくるように岩陰に石を投げるが、出てくる魔物はせいぜい数匹。集めた情報では、見つかれば間髪入れずに魔物の大群に囲まれると情報を得ていたマースは、この異常さに恐怖を覚えた。
「おい、あったぞ!足跡と手形だ。」 「こっちにもあった。」
トースとガースが、探していた物を見つけたらしくマースはすかさず見に行く。そこにあったのは海岸の陰で分からなかったが、砂をそめるほどの魔物の血に貝殻などの砕けた魔物の残骸たち、子供の物と大きな獣の足跡に大きな手形。
「あたりの様ね。でも、この異様な光景・・・。信じられないけど。」
「ああ、たぶんこいつらの仕業だろうね。」
「やべーな。だってこりゃ、魔物が一匹二匹って量じゃねーぞ。」
「やっぱりこれはサル系の生き物の足跡と手形だわ。でもこっちの小さいのはどう考えても人間の子供の物・・・。大きさからして、ドワーフってことはないと思うけど。」
マースは足跡や手形から考え付く限りのことを言葉にし、二人に伝えていきます。その言葉に、二人は自分の意見を重ね、互いに意見を絞っていきます。
そして出た答えは、『三メートルから四メートルの白いサルの魔物と六歳~九歳くらいまでに子供』と言うことでまとまりました。
この海岸で魔物たちを倒し、ここまで数を激減させた存在。三人はその子供とサルに対して、最大限の警戒をすることにして海岸を後にしました。
「トース、まずギルドに大量の魔物の素材が持ち込まれてないか調べてきて。ガーズは、ギルド以外の素材買取できる店で持ち込まれてないか聞いてきて。」
「おう!」 「はい!」
「私は街で子供の情報の方を探ってみるわ。まあ、あんまり期待はできないけど。」
三人はそれぞれで動く前に、今回分かってことを報告しにボスの元に帰り。後日、それぞれで動き出し報告し合うのであった・・・・。
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