7 別れ
2018/1/22 修正を入れました。
助けた小ザルを契約魔獣にするためにレシルは初めて魔法に触る。
レシルは小ザルと戦うが聖樹の雷(怒り)で戦いの幕は閉じ、次の日には契約できていた。そして、小ザルに「タヒコ」と名を与え、レシルとタヒコは、これから強い絆を築くことになるだろう・・・・。
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タヒコをテイムした次の日から、レシルの魔法の訓練は始まった。
レシルが何を教えてくれるのか楽しみ話を聞こうとしていた。
「じゃあレシル、魔法の勉強をしていくよ。とりあえず、魔法の原理や種類など基本的なことから学んでいこうか。」
聖樹による魔法の勉強にレシルは今までの勉強よりも集中して話を聞いた。タヒコは、レシルの膝の上で寝ていたがレシルの邪魔にならないように途中からどこかへ行ってしまった。
魔法とは、この世界に満ちるエナや魔力などと言われるエネルギーを使う術全般を言い、その中に魔力を用い事象を起こす魔術や、魔力を用い物を変化させたりする錬金術、魔力や魔物などをかえして害ある事象を起こす呪術など、魔力は魔法により使用方法が多岐にわたる。
魔力には二種類あり、自然界に多く存在しており植物や大気などにより生成循環している魔力をエナと言い、人間をはじめとする生物の中にあるエナを魔力と簡単に差別化されているらしいが、どちらも意味合いはあまり変わらないらしい。
エナは、世界全体に存在している莫大な魔力ではあるがこれを使うことができるのは限られた者たちだけである。エナを使うことができるのは、年月を経たドラゴンや世界に選ばれた者やそれに近い者、見知ったところでは魔物である。
魔力は、生きとし生けるものすべての生物が保有しているもので、人々はこの魔力を用い魔術を行使する。
人一人が持つ魔力の量は、絶対量が決まっており魔力を増やすための修行を行わなければこれが増えることは基本的にない。また、魔力は消費し過ぎると魔力不足により体調に異常をきたすがエナを吸収し回復するので、もしもの場合はMP(魔力)回復を優先することが基本である。
今まで触れてこなかった分野であり、ほかの世界の知識を持つレシルであっても、魔力と言う概念とそれに付随する知識には興味が尽きることはなく聖樹のもたらす知識を次々と吸収していく。
レシル自身、魔力の説明を受けただけでもこの世界の在り方に興味をそそられていたが魔法の説明となるや、レシルは聖樹のわかりやすくも淡々と説明する膨大な知識をその興味と集中力のままにすべてを吸収していった。
基本的な魔法に関する知識を話し終え昼食をはさみ、午後には魔法の適正属性と実技練習をすることとなった。聖樹曰、レシルの魔力量は一般人と変わらなかった。ちなみに、適性の高かったのは風属性だそうだ。
一通りの説明を受け、魔法の実戦練習をする。
違う魔法とはいえ、魔法を一度使ったことがあるレシルが魔術を発動させるのに時間は・・・・結構かかった。
あの時は、聖樹の作った魔術に魔力を流すだけだったため成功しただけらしく、聖樹の説明を聞き魔術を行使しようとするもうまく発動しなかった。
初めは、とにかく何とかしようとがむしゃらに魔法を発動させようとしていったが、魔力の枯渇も激しくふらつくことや、短い時間ではあったが意識を失うことも多々あった。
そんなことを繰り返している横で、タヒコは小さな竜巻を起こし木の葉を巻き込んで遊んでいた。
その姿を目にし、タヒコに対して嫉妬を感じながらさらに魔法を行使しようとする。
すると、聖樹のツタが手に絡んできた。
「焦ることはないよ。落ち着いて。自分の体の中を流れる魔力を感じて、その魔力にイメージを持って形を与え、命じるように言葉にしなさい。」
聖樹に御され、自分の中に意識を向ける。自分の鼓動、血の流れに沿うよう感じる魔力の流れに、風のイメージをもって形にし、魔力を重ねて言葉にする。
「・・・つむじ風。」
レシルの言葉と共に、周りの空気を巻き込み風が逆巻く。集められた風によりタヒコの竜巻は飛散し、レシルのつむじ風に飲まれた。
魔法を使えたことに喜ぼうとしたが体に力が入らず、意識がもうろうとする中座り込んでしまった。
タヒコも、突然のことにレシルに駆け寄り心配そうに見つめると聖樹はレシルを寝床へと寝かせた。
「大丈夫、すぐに目を覚ますよ。初めてやってここまでできるなんて、ふふ、あとわずかですがこの子のために精一杯頑張りましょうか・・・・。」
タヒコをツタでなでながら、聖樹はレシルの可能性を確認するとともにこれからのことを考える。
「う、う~ん。はっ!」
「おはよう、体調は問題ない?日も落ちてきたし、お腹すいたでしょ?食べなさい。」
夕食用に用意された食事を見ると、タヒコがすでに食べ始めていた。レシルも食事を食べつつどれくらい寝ていたか聞くと一、二時間程度だそうだったがすでに気分もよくなっており食事を口に運びながら聖樹と魔法が使えたことを喜びながら話をしたり、これからのやることとなった本格的な修行のことを詳しく聞いたりなどゆっくりと食事を済ませ、眠りについた。
次の朝からレシルは、昨日聖樹に言われた修行を始めた。それは、午前中の勉強をなくしトレーニングと魔力量を増やすための瞑想、コントロール力を上げるために弱い力での魔力行使と維持などで、はじめのうちは思うように魔法を使い続けられず魔力量もまだまだ足りなかったが、そんな日々を続けて一か月ほどたったころには、午前中ずっと胡坐を組み瞑想しつつ、つむじ風を手前で小さく作り維持し続けられるようになっていた。
そんなある日、いつもと同じように修行を行いタヒコと聖樹が、ツタと魔法を使いつつ遊んでいるとエナが大きく震え出したのを感じ、修行をやめ聖樹の元へ駆け寄ろうとすると聖樹と向かい合うように白い虎のような生き物がいた。
レシルは、驚きつつも聖樹へ駆け寄り虎を見つめつつ警戒した。タヒコは、ツタを強く握っていたがレシルが来ると、その腕へ逃げるようにつかまり、服の中に無理入り込んできた。
「お初にお目にかかります、南の管理者様。私は、主の命により引継ぎを見届けるように言われてやってまいりました。今まで、南の管理ありがとうございました。南に生まれ、主に使えるものとして深くお礼申し上げると共に、主の元へと行かれる管理者様につきましてはこれからも見守っていただけたらと思います。」
レシルは、虎のしゃべる言葉の意味が理解できなかったが、聖樹に向けて発せられている言葉には誠意と敬いの心を強く感じることができた。聖樹の方を向くと、ただただ、虎の話を聞きその透き通るような眼で見つめていた。
「ここまで、ご苦労様です。あなたの心しかと受け止めました。こう言っては難なのですが、一つお願いがあります。この子の面倒を見てほしいのです。」
聖樹の言葉にレシルは耳疑った。「この子の面倒を見てほしい」、何を言っているのか理解できなかった。どういうことかと、レシルは聖樹に振り向くと聖樹はレシルを見つめて話し出す。
「レシル、私とはもうお別れです。突然ですが、許してください。」
突然の別れ宣言に、嘘だと嫌だと首を振りつつ否定していると、レシルはなにかをかぶせられた。
「新しい服とコートです。私が作った服の中で最も耐久性に優れ、あなたのために魔術を施した魔法の服とマントです。本当に大きくなりましたね・・・。」
服とマントを両手で握りしめ、あふれ出してきた涙を慌ててその服を顔に押し当てて隠す。
「管理者様、大変申し訳ないのですがあなた様の願いを叶えることはできません。我らは、必要以上に他の生物との接触を禁としています。あなた様も、十分にお判りでしょう。」
「ええ、わかっています。しかし、この子はまだ幼子、せめて人里へ連れていき一人で生きられるまで面倒を見てほしい。」
虎の否定に、食い下がることなく言葉を通そうとする。
レシルは、虎と話合っている聖樹にしがみつき、離れたくないことを泣きながら主張する。
「やだよ!!絶対にやだ!!!聖樹といっしょにいる。」
「レシル・・・。どうか聞き分けて。私はもう寿命なのです・・・。あとは、自分の力で生きていくのです。」
そう言って、レシルは一つの種を受け取ったが、そのとたん、聖樹のツタがレシルの意識を飛ばした。
「いいのですか?その子が目を覚ました時、あなた様がいなければ悲しむと思いますが・・・。」
「いいのです。別れとは先んじて知ることができるモノばかりではありませんし、すでに別れを告げている時間もありません。それに、この子のために私は今まで多くのことを教えてきましたが、この子は教えたことをすぐに理解し、自分の物にすることができる子です。できれば、まだまだ見ていたかった命ではありますが、この子の成長を世界樹様の身元から見守りたいと思います・・・。」
「なるほど。わかりました。管理者様の意を組み、人里までその子供を連れて行きましょう。しかし、それ以降の面倒を見ることはできません。どうか、そこはご理解してください。」
聖樹は、小さくうなずき、レシルを虎の背に乗っけた。虎は、レシルを落とさないように大きくジャンプすると浮かびながら聖樹の最後を見つめ、終わると人里へ向かって空を駆けて行った。
聖樹の最後とは、枯れることにあらず・・・。樹木より人型の部分が割け堕ち、新たな人型がそこに生まれ、落ちた人型は見届け人によって世界樹へと運ばれることとなる・・・。
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