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69 「影」

レシルは虫料理から逃げ出し、普通においしい料理を食べようと店の並ぶ通りを目指していた。レシルは人気の少ない道を進んでいたが、薄暗い路地の道を子供が一人、それも身なりの整った子供なれば、良からぬことを考える者からしたら格好のエサであった。


「そこの小僧、いい服着てるじゃないか。」


来た道をたどるかのように戻ろうとするレシルの前に、声をかけてきた薄汚いフードを被った男。その男は、レシルをぎらついた目で見つめ、薄ら笑いを浮かべながら近づいてきた。


「誰だよおっさん。俺はこれから食事に行くんだ、邪魔しないでくれ。」


レシルは決して子供の取るような態度は見せず、毅然とした態度で男をけん制した。それでも男は止まることなくレシルに歩み寄り、元あった距離の半分ほどまでに近づくと走り出し、距離を一気に詰めようとしてきた。


「さあ、俺と一緒に来い!!!売り飛ばして俺の飯の種にしてやる!!!!!」


すでに手に入れたかのように笑いながら駆けてくる男は、明らかに犯罪に手を染めていることが分かる表情を浮かべ、その目はレシルを金に換えた時の事しか考えていないようだった。


「バーカ。お前なんかに捕まるほど俺は弱くねーよ。  もう、前みたいに捕まったりしないように気をつけてるからな。」


「な、なんで!?」


レシルは襲い掛かってきた男を、体術と魔法での補助を行いながら放り投げ壁に叩きつけてやった。レシルのやってことは簡単だ。まず、合気道の要領で相手の力を利用して投げようとしたが、体格差や力に差によって足らなかったので、風魔法で男の体を浮かせて放り投げたのだった。しかし、男からすれば自分が投げられるなど夢にも思わないわけで、叩きつけられた痛みにもがきつつも、「どうやったのか」と疑問を持ち、投げられレシルの嘲笑う声に怒りを覚えるのであった。


「このガキ!!!調子に乗るなよ。もう許さねぇ。買い叩かれるとしても、ボコしてやる!!!!」


男は傍に落ちていた石を右手で拾い、左手は懐から出したナイフを持ち再び襲い掛かってきた。先ほどよりも早い動きでレシルに近づいて来る男に、レシルはこの男が先ほどまで本気を出していなかったと悟り、剣に手を伸ばす。男は持っている石をレシルが剣に手を置いた瞬間投げ、レシルはそのまま石を回避するために行動せざる負えなくなる。

そこに振りかぶって上段からのナイフの一撃。それをレシルは石をよける際に振りぬいた剣で受け止める。

まさかレシルが二段構えのこの戦法に対処すると考えていなかった男は、そのまま力押しでレシルを押し飛ばそうと力を込め一歩を踏み出した。


「くっ!!」


レシルは男の力に抵抗していたが、やはり子供と大人ゆえに力に押され、吹き飛ばされはしなかったが地面をこする形でのけ反りそうになり、レシルは内心焦っていた。

レシルの得意とする魔法を放つ隙が作れず、耐えるしかない状況に陥ってしまったこと。そして、男の仲間と思われる者たちが数人、こちらのに向かって近づいてきていることを気配で感じ取ったのであった。


「(まずい。このままだと確実に押し切られる。いっそ無理やり魔法を使うか!いや、ダメだ下手に使えば建物を壊すことになるし、威力を弱めればかわされるかも・・・・。)」


レシルは男と刃を交えつつ、この後どうすべきか考えていました。しかしそれは男も同様であり、密かに呼んでいた仲間が来るまで「どうこの子どもを抑え込むか」と考えながら戦っていたのだった。

これほどまでに力を持つ子供ならば、「さぞかし奴隷にしたら高く売れる」と考え始めた男は、レシルに「今降参すれば、痛い思いをさせずに済むぞ。」と誘ってきましたが、レシルはすぐに断りました。気配で集まってくる男の仲間の距離を測りながら「精神」でレシルは男の心の中を覗きます。


「(金、金、金。この子どもは高く売れる、こんだけ強いんだ。奴隷にして売るなら金貨百枚は出させようか。 もし買い手がつかなければ、このままこき使ってやってもいい。なんなら、子供だし男の相手をできるように仕込むのもありだな・・・・。)」


レシルは男の心を読み、これほどまでに欲にまみれているのかと怒りを抱きつつも冷静になることができました。そして、魔法でも剣でもないもう一つの方法を思いついたのでした。

レシルは男に渾身の力と魔法の補助を最大に使い突き飛ばし、距離を作りました。男は自分ではできなかったことを子供のレシルが自分にやってきたことに驚きつつ、ナイフを構え再び走り距離を詰めてきます。


「タヒコ!」


レシルは大きな声で名を呼び、収納の入口を開きました。そこから目を赤く染めたタヒコが飛び出てくれば、男の顔色はすぐに変化し余裕に満ちた顔は恐怖の物へと変わり果て、足を止め逆の方向に逃げ出そうと走り出すのだった。


「助けてくれー!!!!!!化け物だ!!誰か助けてくれ!!!!!!!」


男は自分より遥かに大きく殺気を纏ったタヒコから逃げようと、助けを呼びながら逃げ出しますが人の走る速度などタヒコにとっては遅く、振るわれた手によって男は壁を赤く染めるのであった・・・。

レシルはタヒコが人を簡単に殺してしまったことに、少し動揺してしまった。自分が呼んでおきながら、助けてもらいながら、そのように思うのは筋違いと考えながらも、戻ってくるタヒコの赤く染まった手を見ると足を引こうとしてしまう自分がいることに嫌気がさしそうになった。


「タヒコ、あ、ありがとう。  まず、手を洗おうか・・・。」


タヒコの右手に付いた血をレシルは水を作りきれいに洗わせ、収納へとタヒコを帰らせた。そして、男の仲間が来ないうちに立ち去ろうと、逃げるように通りに出ていくのだった。


________________________________________________


「おい、これ見てみろ。」


「ひでぇもんだな。どうやったらこんな風に人をつぶせるのやら?」


「さあな、巨漢の男にでも絡まれて手に負えなく俺たち呼んだが、潰されたって感じか?」


「まさか、そんなことできる奴がいたってやろうなんて普通はしないだろ。そんなことするような奴は頭いかれてるぜ。」


「いいえ、案外その通りかもしれません。まあ、もしそうであろうとなかろうと、ここに居たのは人ではないようですが・・・・・。」


レシルが立ち去ってから戦っていた現場にやってきたのは、男の仲間と思われるフードを被った三人組だった。二人の男が、壁でつぶされミンチとなった死体を見て冗談半分で何があったのか考えていたが、もう一人の女性によってその冗談が本当に起こった可能性があることを説明される。

死体があったところより少し離れた辺りに、通りに向けてかすれた血の手形を発見した女性は、水で流れかすれた手形をサル系の獣人の物だと考察し、二人に伝えた。


「おい待てよ。こんなにデカい手形を残すような獣人、見たことも聞いたこともねーぞ。ましてや、こんなことするような奴なんて・・・・・。」


「俺も同意見だ。獣人と考えるのはわかるが思い当たるやつがいない。この街でそんなデカい奴がいるなら噂くらいにはなっているはずだ。」


「そうね、確かにその通りだわ・・・。だとしたらいったい誰が・・・・・。」


三人は仲間を殺ったのが誰か考え出しましたが、答えが出ることはなく結局そのままボスに報告することにして、死体を片付けるのだった・・・・。



_________________________________________________

レシルはあの後、活気の衰えていない通りに出て料理屋を探し中に入った。自分の複雑な心境を少しでもどうにかしようと、できるだけ賑やかに盛り上がっている店を選び入ったのだが、レシルは今カウンターにうつむき気味で座り料理を待っていた。

そんなレシルに酒に酔ったお客の一人が話しかけてきた。


「どうしたの?子供が暗くなってから一人で来るなんて。お姉さん心配になっちゃうわ。」


話しかけてきたのは髪を一つ結びにした女性で、だいぶ酒に酔っている様子だった。

その女性はテーブル席の他の女性や男たちと飲んでいたらしく、酒の追加のためにカウンターに来たようだ。


「おじさん!お酒追加ね、とりあえず三つテーブルに運んでちょうだい。」


勢いよく、陽気な声で注文を済ませた女性はレシルの隣の席に座り、レシルに絡んでくる。うつむき、しょぼくれているレシルに、頬を赤く染めたまま女性は心配そうに肩を寄せ聞いてくる。


「どうしたの?なんか辛いことがあった?お父さんと喧嘩でもした?」


「・・・・・。」


レシルは話しかけてくる女性に応えることなく黙っていましたが、酔った人間に人への気遣いなどできるはずもなく、落ち込むレシルを抱き上げ暴れるレシルを自分のいたグループに連れて行ってしまいました。


「あれ、ここにいた小僧は・・・・?」


「あ、おじさーん。こっちこっち、お酒と一緒に持ってきて!!!!」


抱き上げられたレシルを見て、面白そうな笑いを浮かべ酒と頼まれていた料理をもってテーブルに向かう店のおじさんを、逃がさないようにしっかりとレシルを捕まえた女性が笑いながら待つ。


「おい、リン。その子供どこから連れてきたんだ?」


「拾ったー。なんか落ち込んでたから元気付けてあげようと思って!」


レシルは「リン」と呼ばれた女性の膝の上で腰に手を回され動けないように拘束されつつ、他の女性に料理を口に運ばれていた。


「「「かわいい~~~!!!」」」


レシルの「愛される者」が発動したのか、女性たちはレシルを「かわいい」と言っては料理や飲み物を与えようとする。

そんな逃げ場のない、落ち込んでも居られない状況にレシルは口を開くのであった・・・・・・。


読んでいただいてありがとうございます。

よければ、また読んでください。

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