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65 「暴走」

「ありがとう、三人とも。」


ククリは、カルラから契約書を受け取るとそのまま三枚の紙をばらまき両手を合わせて「パチン」と音を立てると、契約書たちは青い炎を上げて燃え尽きていった。


「これで、契約は成立。」


「この契約がなされたことにより、あなた方はこの契約に縛られることとなります。しかし、その対価としてこの国において様々な特典を受けることができるようになります。この国に滞在する一週間は王城の特別英気室の使用が許可されます。また、ギルドでの素材売却額に少しではありますが色が着くようになります。と、特質すべきことはこれくらいでしょうか。他にも、さまざまな特典はありますが項目が多いのでまたその時にお伝えします。」


「ありがとうございます。じゃあ、今日からこちらでお世話になってもいいですか?」


「はい、大丈夫です。それではすべてが終わったら案内させます。 巫女様、次をお願いします。」


ククリはカルラに頷き、片手を前に出し魔力を手の平に集めたあと、手の平から波紋が広がるように魔力を放った。


「きゃっ!!」 「わっー!」


部屋全体に広がった魔力が三人を包んだとき、レシルの体と魔力の波動がぶつかり合い閃光が走った。

レシルの周りとククリの手の平で火花が散り、レシルから白い影が飛び出した。


「タヒコ、止まれ!!!!!」


レシルに呼び止められて止まったタヒコは、ククリの首に鋭くとがらせた爪を突き立てようとしている所だった。その目は赤く染まり、牙をむき出しにして怒りに震えていた。


「タヒコ戻るんだ!! タヒコ!!!!!!」


レシルはタヒコと向き合い、今までないほどの覇気を纏いタヒコを止めようとした。タヒコは、怒りをそのままに手を引きレシルの傍まで戻ると、静かにその後ろに控え、床に伏せた。

レシルはタヒコの頭に手を置きなでながら、ククリに対して悲痛の表情を向けるのであった。


「申し訳ない、ククリ。タヒコが失礼をした。」


「いえ、私も悪かったので気にしないでください。ま、まさか、これほどの獣魔を従えていようとは思いもしませんでした。」


突然のことにジーク達も、傍で控えていたカルラも全く動けずにいたが事が済み我に返ると、カルラはククリの元に駆け足で近づき怪我がないか慌てながら聞くのであった。

混乱した様子のカルラは、ククリの心配をしつつも無礼を働いたレシルに対して、殺意を向けるのであった。


「巫女様、お怪我はありませんか!?  キサマ!巫女様に対してこのようなこと!反逆行為としてその首をはねてやる!」


「グル”ル”ル”ル”。」


殺意をレシルに向けるカルラに対して、傍にいるタヒコが再び牙を向けようとにらみつける。

カルラは少しひるみ冷や汗を一筋たらしていると、ククリの静止の声とその手が伸びるのであった。


「待ってカルラ!私が、私が悪かったの!私の力で無理やりレシルさんの領域を侵すようなことをしたから・・・・。」


「巫女様・・・・。」


カルラは黙り、巫女の言葉に従い後ろへと下がると、顔を下げ他の者に見せまいとするのであった。


「「(何がどうなってるんだ・・・・。)」」


状況を理解できていない二人は緊迫した空気の中、席に座り続ける事しかできず、内心どうすればよいか分からないまま、ただただ空気になる事しかできなかった。


「ごめんなさい、わ、私が・・・。」


「いえ、俺こそ失礼を働いてしまい申し訳ありません。」


ククリがすべて話し終える前にかぶせるように声をかけ、話を逸らしたレシルは、そのまま怯えの見えるククリの顔を強く見て、声をかけた。


「今日のところはこのまま帰らせていただきたいのですがよろしいでしょうか?今回の事についての罰を下されるのであれば甘んじてお受けいたします。先ほど頼んていた部屋の件も、一旦なかったことにしていただきたいと思います。」


状況が状況なだけに、レシルは淡々と言葉を重ねこの場から去ろうとした。そんなレシルの言葉を遮る者は誰もおらず、先ほど息巻いていたカルラでさえ今は息を潜め現状を見守るだけとなっていた。


「待ってください。今回の事は何も咎めるつもりはありません。それと、今日はやはりここに泊っていただけませんか?」


「!?  巫女様!」


「黙って!  カルラ、私はレシルさんと2人っきりでお話ししたいことがあります。ジークさんとバルロさん、タヒコさんを連れて特別英気室にご案内して差し上げて!」


「巫女様!」


「これは命令よ、何度も言わせないで。」


今までになかった強めの口調にカルラは頭を下げ、言葉に従い動き出すのであった。空気となっていた二人も、カルラに呼ばれ席を立ちついていこうとしたが、タヒコだけはレシルの傍を動こうとはせず、今だ怒りの影が見える瞳でレシルを見つめてくる。

レシルはそんなタヒコに「行ってくれ」とささやくように言うと、タヒコは立ち上がりジーク達に続き仕切りの布の向こうに消えていった。


「「「・・・・・・・。」」」


言葉を発することが難しい雰囲気を纏った集団は、静かに螺旋階段を下りていく。近くを通りかかる人々は後ろに続く、目の赤く染まった白いサルを見るたびに、悲鳴のような声を漏らしそうになりながら一様に立ち去っていった。

ジーク達は後ろから伝わってくる威圧を感じながら静かにカルラに続いて歩いていくが、自然とその足は早足なものへと変わっていく。


「ついたぞ、こ、ここが特別英気室だ・・・。」


振り向き、ジーク達を向かい入れようとしたカルラであったが、未だ自分に向けられているタヒコの視線に緊張し言葉がこもる。

簡単に部屋の説明を二人にすると、二人と一匹を残して部屋を出ていき部屋を遮る布の紐をほどき、完全に隔離するのであった。


「「・・・・・。」」


カルラが居なくなり本来であれば羽を伸ばせるであろう状況だが、今はタヒコが未だ殺気立っており何ともそのような雰囲気ではなかった。

ジークとバルロはタヒコと距離を取りつつ、部屋の中を確認して回るのであった。

タヒコは入口から中に入り外の風景を楽しめるテラスに出ると、レシルがいるであろう最上階をじっと見つめるのであった。


「タヒコ、レシルのところに行こうとするなよ。」


ジークがまさかと思い平然を装ってタヒコに声をかけるが、タヒコは一度顔を向けるがどうでもいいかのように顔を戻すのであった。


「ジーク、そっとしておきましょう。今は気が立ってますし、落ち着くのを待った方がいいですよ。    タヒコ、レシルは今大事な話をしていると思うので邪魔はしないようにここで待っていましょう、ね!」


バルロもジークに続いて言葉をかけたが、やはり同じ対応をされた。


「無理みたいですね。」


「そうだな、今はとりあえずどうにもできないし、おとなしくしてようぜ。」


ジークとバルロは、テラスにいるタヒコを気にしつつ昼食を備え付けの食材を使って作り始めるのであった。二人は王城神殿で出される料理を期待していたが、今の状況ではそれもかなわないと思い諦めて料理を続けるのであった。



読んでいただいてありがとうございます。

よければ、また読んでください。

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