62 「タヒコの成長」
「タヒコ・・・。」
レシルは、タヒコを見つめ自分の行いを後悔していました。タヒコが今苦しんでいるのは「自分のせいである」と考えながら、いつの間にか眠ってしまいました。
「タ、タヒコ・・・・。 う~ん、俺いつのまにか寝て・・・・。タヒコ!」
レシルは目を覚ましタヒコの様子を見ようとしましたが、そこにタヒコの姿はありませんでした。どこに行ったのかと、ログハウスの中を探し出すレシルですが足元にあった、毛布に足を取られ転んでしまいました。
「イタタタ・・・。なんでこんなところに。」
レシルが再び立ち上がり、タヒコを探そうと奥の部屋に行こうとしたとき、窓から覗く白く大きサルと目が合いました。
「!?!?!?」
レシルはとても驚き、そのまま腰を抜かし崩れるとテーブルの陰に隠れようとします。恐怖に心が満たされ、頭の中が真っ白になってしまっていると、サルは窓からいなくなり、ドアが「ガタガタ」と音をたてはじめました。
レシルは体を「ビクン」とさせ、テーブルの陰から奥の部屋に行こうと体を少しづつ動かします。ドアが音を立て開かれる時には、なんとが奥の部屋にたどり着くことができましたが、サルはそのまま手を中に入れてきました。
その手は小さなログハウスの中では長く感じ、レシルのいたテーブル当たりまで届いていました。
「{だ、大丈夫!!!ここまでは届かない!!うん、大丈夫。落ち着くんだ!!!}」
レシルは内心自分を落ち着かせようと、必死でしたがサルはそんな怯えるレシルをドアから手を入れたまま見つめていました。
どれくらい時がたっただろうか・・・。レシルにとっては一時間にも二時間にも感じられる時が過ぎたころ、サルは口を開いた。
小さな体のレシルであれば、その口に収まってしまいそうな大きな口から「キッキ」と、いつも聞きなれた声が聞こえた。
「タヒコ?」
レシルがそうつぶやくと、サルは笑ったようにしわを作り頷く。レシルは少し落ち着きを取り戻すことができたが、姿形がまるで違うものとなってしまっているタヒコと思わしきサルのことを警戒していた。
レシルは「精神」を使い、サルの心を覗くことにした。レシルは力を使い、その心を覗こうとしますが今までのように簡単にはいきませんでした。伝わってくる感情は、少し怖がっているような、おどけているような、甘えるような・・・・。
「すうーーはーー、すうーーはーー。 {タヒコ、ログハウスから出て外で修行をしてみろ}」
レシルは、呼吸を整えると命令を送りました。サルに修行をやらせたのはこのサルがタヒコであれば問題なくいつもタヒコとやっていた修行を同じようにやれると思ったからで、もしもタヒコの真似をしている別の悪意ある何かであればタヒコの修行などできようもないと考えたからであった。
「{これができればタヒコで間違いないはず・・。もしできなかったら?・・・・・・。}」
レシルは手を引いて外に出ていくサルを確認すると、窓からその様子を見ていました。
サルはレシルが窓からこちらを見ていることに気が付くと、指示された通り修行をはじめました。自身の周りに風が渦を作り始め、静かにサルは瞑想をしていた。
レシルは、ログハウスを出てサルの・・・タヒコの元に向かいました。タヒコの傍まで行き、気が付いたタヒコが修行をやめレシルと目を合わせ向かい合います。
「タヒコ・・・。」
レシルが手を伸ばせばタヒコは体を倒し、頭をなでてとばかりに大きな頭を向けてきます。レシルは、少し「ビック」としましたがそのまま撫でてやれば、いつもと変わらず嬉しそうにすりすりと自分から動かし始めました。
「タヒコ・・・。ごめんな、嫌なこと無理やりさせようとして。」
タヒコの頭にふせるような形で鳴きながら謝りだすレシルに、タヒコはそのまま体を起こしました。レシルの体はタヒコの頭に掴まったまま持ち上げられ高い位置に持ち上げられました。高さにしたら3メートルほどに感じられる身長になっていたタヒコ。小さいレシルにとってはこの高さの恐怖はかなりのもので、悲しくて流していた涙も恐怖の涙に代わっていきます。
「タヒコ、怖いから下ろして。」
タヒコの頭の毛を強く握りしめながらタヒコに指示を出せば、タヒコは手でレシルを掴み下ろしてくれました。レシルはタヒコの全身を下から見上げて、大きく成長したタヒコに複雑な気持ちを抱いていました。うれしいような、怖いような・・・。
そんな気持ちをタヒコはくみ取ったのか、レシルの頭を今度は人差し指を優しく乗せこすってきました。
「ありがとな、タヒコ。」
純粋に感じられる笑顔を向けられ、レシルは自分が思っていた、感じたいた感情にとらわれるのをやめした。そしてレシルはタヒコに対し聞きにくかった「精神」の力を再び行使し始めたのでした。
「タヒコ、悪いけどこの畑の手入れをしてもらっていいか?種を植えたり、大きくなった薬草を収穫したり。」
「精神」を基本に、足りない部分を声で足しながら指示を出していく。タヒコは、少し慣れないながらも指示に従い作業をこなしていく。
レシルはタヒコに「精神」を使い同調率を高めていき、出していた指示通り作業が終わる頃には今までと遜色ないほどに意思疎通が取れるようになっていた。
「タヒコ、俺はジーク達のところに一旦行ってくる。タヒコはここで待っててくれ。」
レシルはタヒコにそう言った後、入口の方に向かって歩いて行きました。タヒコは、静かにその姿を見つめ帰ってくるのを寂し気に待つのでした。
「よう、レシル。タヒコの様子はどうだ?」
「おはようございます。レシル。タヒコは大丈夫ですか?」
ジークとバルロはすでに起きており、食事の支度がしてあり、テントも畳まれていた。
レシルは収納を閉じ朝食をみんなで食べ始めた。
「タヒコは元気になりました?」
「うん、大丈夫。元気にはなったよ。でも、見たらびっくりするよ、きっと。」
レシルの微笑みに元気になったことを感じている二人は、その笑いに合わせて二人も微笑むのだった。
そして二人は元気になったタヒコを見たいということで、食後に会わせることになった。
「「!?・・・・・・・!?」」
二人はレシルの開けた入口から出てきたタヒコを見て固まり、口を大きく開けただただ驚くばかりでした。
「レシル、こいつがタヒコなのか?」
「うん、そうみたい。」
「みたいって・・・。レシル私は信じられないのですが。」
「だよな、俺も始めそうだった。」
レシルはタヒコを見つけた時のことを話し出し、二人はレシルの話を聞きつつ、食事をとるタヒコを黙って見るのでした。
タヒコとのわだかまりも解け、出発しようとテントをしまったレシルは、ジークとバルロと共に歩き始めました。しかし、ここで問題となってくることが大きくなってしまったタヒコのことでした。
大きな体のタヒコをこのまま連れて歩くわけには行かず、どうしようかということになったのです。
「タヒコは俺の獣魔だから、連れて歩いてもいいじゃないか。」
「そうですけど、アティカスに着いたとして門を通らせてくれるかわかりませんよ。前の小さい時ならいざ知らず、こんな大きく強そうに成長したタヒコとなると、たとえ獣魔でも入れてくれないかもしれません。それに、旅をして行く上でもその姿を見て驚き混乱する人も出てくると思いますよ。」
出発してすぐにバルロに指摘され、レシルは悩みだしました。そして結論として出した答えはタヒコを収納内に入れていくことでした。
タヒコは少し嫌そうにしていましたが仕方がなかったためタヒコには我慢してもらう形で、収納に入ってもらい出発しました。
そして、タヒコには魔物との戦闘や食事の時に出てきてもらいそれ以外の時は、レシルが中に食事をもっていったり会いに行くこととなりまいした。
「タヒコごめんな、もうじきアティカスに着くから滞在中たぶんここから出してやれないと思う。嫌だと思うけど我慢してくれよ。」
夕日に代わる少し前あたり、レシル達はアティカスの門が見える位置に到着していた。今はレシルがタヒコに、これからの説明とこれから不自由な時間を我慢してもらうための説得をしていた。
アティカスの滞在時間は今のところ未定であるが故、どれほどの時間をタヒコに収納内で我慢してもらうことになるか分からなったが、レシルは「巫女の話を聞くだけだからそう時間はかからないだろう」と考えていた。
そしてレシル達はアティカスの門をくぐり、目的地であったこの国の首都「アティカス」に到着したのだった。
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