59 「ライブ」
店の中から聞こえてきた声に、レシルは思わず「ドキッ」としてしまった。悪いことをした子供が大人に見つかるような感覚の中、奥の部屋から明りをもって出てきたのは緑色の服に羽織るように布を肩にかけた金髪の女性だった。
「タウロ、勝手に入ってくるなと何度も言ってるだろ。」
「まあ、まあ。硬いこと言うなよ。今日は俺たちが気になってたやつを連れてきたぜ。」
タウロの後ろに隠れていたレシルは、タウロに掴まれいとも簡単に持ち上げられて、女性の目の前に運ばれてしまった。
レシルは驚いている顔のまま顔をまじまじと覗かれ、そしてレシルの顔を見て何かに気づいた女性はタウロに入ってきた時よりもはるかに大きな声で怒鳴りだした。
「タウロ!!!!何やってるんだ、こいつを自分から私のところに連れてくるなんて!!!!!!!!!」
目の前で雷が落ちるように放たれた声に、レシルは心臓がバクバクと悲鳴を上げだした。これほどの恐怖は今までにもそうある事ではなかったため、放心状態である。
「そう怒るな、お前も気になっていたんだろ。祭りの誘いを突然断るくらいに。」
「当り前さね、私たちの本来の役目、有りよう関わることだからね。なのに、あんたは・・・・。」
「悪い奴じゃない。才能もある。うまくいけば・・・・・。」
「当り前さね。すでに二人から認められてるんだ、それなりのやつじゃないと認められたりなんてしないよ。」
2人の話が終わり放心状態のレシルに女性が気付くと、レシルの頬をつまみつねりだした。頬の痛みで正気に戻りレシルが女性の顔を見れば、女性は見下すように見た後レシルを下ろすようにタウロに言い、今度はため息を一つ吐き真面目な顔で向き合いだした。
「初めまして、クソガキ・レシル。私は両替商を営む「ライブ」だ。」
どうも威圧を感じる口調で話だしたライブと言う女性は、名前の前に「クソガキ」と躊躇なくつけるくらいなので、レシルは自分のことを嫌っているのだと思った。
「(自分のことを知ってる????)」
「そっちの牛は、知ってると思うけど「タウロ」って名前ね。こいつがお前を気に入ったみたいで、私のとこまで連れて来たわけなんだけど・・・・。 タウロ、自分で説明しな!」
「おう、それが通りだしな。レシル、めんどくせい説明は俺は苦手だから単刀直入に言うぞ。俺たちは「見守る者」だ。」
「う、うん。なんとなくそうじゃないかと思ってた。」
「はあー。いいかいクソガキ。聞くけど、あんたは私たちを自分から探していたかい?」
「うーん、二人を探していたわけじゃないかな・・・・。でも、見覚えがあったからタウロには見つけた時から気にしてた・・・です・・。」
それを聞いてライブは、自分の片手で顔を覆い「夢のせいか・・・」と小さくつぶやいていた。
そして考えてそのまま顔を隠した形で天井を見上げたあと、レシルに面と向かって話し出した。
「私もこの事態の一端に関わってるみたいだから、そのことについては何も言わないことにするよ。クソガキ、特殊なケースになってしまったがあんたは私たちを見つけることができた、だから私はあんたに力を与えてもいいと思ってる。」
「おおお!ライブもやっぱり気に入ったんだなレシルの事。こいつは小さいのになかなか面白いからな・・・。」
「気に入ったわけじゃないわ!こいつに見つかっちまったからさ、どうせあんたも力を渡すんだろ。あんただけ渡して、私が渡さないだとおさまりが悪いからね。」
ライブはレシルの頭を両手で「ガシッ」とつかむと額を合わせてきた。ライブと触れている部分から、彼女の熱が伝わり目の前にある美しい顔に顔が熱くなりそうになる。
「おわったよ。」
ライブが手を離し離れてもレシルの熱は冷める気配を感じず、「照れてるだけ」と自分で思いこむが、熱は顔ではなく額やその奥の方から伝わってくることに気が付き立ちつくしていると、今度はタウロがレシルを後ろから抱き上げた。
突然抱き上げられ「今度は俺な」とタウロの顔に近づけられていく。
まさかさっきライブとやったことをタウロとやるのかと思い、「ち、ちょっと待って」と声を出して待ったをかけるが止まることはなく、諦めとっさに目をつぶると体をくるりと返され、背中をタウロの体に付ける形で、片腕のみで抱き上げられると空いた手で頭をなでられた。
「ほれ、もう終わったぞ。」
頭をなでられた後、レシルはタウロに下ろされた。そして、ホッとしているとライブに呼ばれ店の奥の部屋に招かれた。
店の奥の廊下を進んでいくと、中庭に面したガラス張りの部屋に出た。星と月がきれいに見えるシンプルだけど落ち着く部屋。
窓際に置かれていた、テーブルと椅子にお茶が用意されておりライブに言われ、タウロと共に席に着いた。
学校の三者面談のように座り、ライブとタウロは力の説明をし始めた。
「力は、なじんだようだね。お茶も用意したから、力についていろいろ話そうか・・・。」
「まず、私から説明させてもらうよ。私の力は「錬金術」さ。まあ、普通に今じゃ確立された術なんだけど、私の使う錬金術は人間たちが使っていつ一般的な奴とは少し違う。普通の錬金術は素材を集め魔力をもって形にする、最終工程や過程を進める力だけど私のは、一から物を作り出すことができる。」
「!?」
「ふん、少しは凄さがわかるみたいだね。もちろん、一から物を生み出すならそれ相応の対価が必要になるけど、例えば足りない素材があるが作りたいものがあったとする。そういう時に、魔力を対価にしてない物の代わりにすることができたりする。簡単に言えばそういう事なんだが・・・。まあ、ド素人じゃないみたいだし、やっていけばわかってくるだろう。あとは自分で慣れな。」
ライブの説明は中途半端なところで切られてしまったが、レシルは「錬金術」のすごさが分かっていた。要するに魔力を対価に物を生み出すことができる力であり、レシルがやってきた調合などは錬金術の分類とされるがライブから渡された力は人間の確立した錬金術の上位互換と言うことになる。
ライブは考え込んでいるレシルを見つつお茶を一口飲み、面白そうに眺めていた。ある程度考えがまとまったと思われる頃に、ライブはタウロも説明をするように促した。
「じゃあ、今度は俺の力の説明をするぞ。俺の力は「育成」。生き物、特に植物なんかを成長させる力だ。以上!!」
「!?」
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「それじゃあ、話も終わったみたいだし帰っとくれ。」
「ええええ!!!??? ちょっと待ってください。まだ色々聞きたいことが!て、タウロも片づけを手伝い始めるなよ。」
ライブが席を立ち盆にコップを乗せ始めたのを止めようと、話を聞こうと声をかけますが、タウロもその盆に自分の分のコップを乗せ、レシルの分まで乗せようと手を伸ばしていた。
「はあー、聞きたいことがあるならさっさと言いな。」
溜息を吐きながら席に座りなおしたライブは、「まだなのかい」と言いたげな様子でレシルの質問を待っています。
「えっと、「育成」の力って植物を育てる以外に何ができるんだ?」
「うーん。特にないな。 あくまでも、生きている物に作用する力だからな。植物が一番育てやすいってことっと、生き物、家畜とかそう言うものに使えば育つのを早めることができるくらいか。」
「・・・・・・。」
「もう終わりかい?」
「じゃあ、力とは別の質問。俺はこれから何をしたらいい?これからも、「見守る者」2人みたいな連中を探せばいいのか?」
「強制はしないさ。でも、その気なら探せばいい。見つけて認められれば、私たちは力を与える。それが私たちの役目であり、あんたはその資格を持ってるんだから。」
「わかった。力が欲しいのは事実だからこれからも探す。 別の質問、「見守る者」はなに?見守る者と呼ばれる者たちは何者で、なんでこんなことをしている?」
「「・・・・・・。」」
「それに関しては、まだ教えることはできねぇ。そこら辺の核心に迫ることは、俺たち全員から力を貰ってから教えることになってる。」
「疑問に思うのはもっともだが今は無理だから諦めな。時がくればしっかりその時のやつが教えてくれるから、それまで我慢しな。」
話も終わり、レシルは宿に帰ろうと店の入り口まで戻ってきた。タウロが宿まで送ってくれることとなり、ライブが入口まで見送りに来てくれた。
「最後にレシル。イメージ。造像することを忘れるんじゃないよ。お前の力はそこから発揮されるんだからね。」
ライブに初めて名前をしっかりと呼ばれ、少しうれしかったレシルはライブの言葉に大きくうなずいた。
「さあ、行くぞ」とタウロの肩にレシルは乗せられ、宿へと帰るのであった。
「やっと帰った。 ふっ、あの子がどこまで成長して行けるか楽しみだね・・・・・。別に気に入ったわけじゃないから。うん、最後のとかは少し可愛かったけど別に気に入ったわけじゃない、うん!!」
自分でつぶやいた発言に、頬を少し赤くして自問自答して否定するライブ。誰もいない通りでライブの声が響き、ライブはさっさと店に入っていく。
「じゃあ、レシル。頑張れよ。また会えるのを楽しみにしてるぜ。」
「おう。タウロ、送ってくれてありがとな。また、会ったら酒飲もうな!」
タウロと別れの挨拶をかわし、レシルは宿の中に入りタウロは家に帰っていった。
部屋に入ればジークもバルロもぐっすりと眠っており、入ってきたレシルに気づくことはなかったため、レシルも早く寝ようと、服を着替えベットに入り込んだ・・・・・・。
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