57 「豊穣際」
レシル達は今、ギルドに向かって街を歩いていた。しかし、レシル達がこの街に着いた時と今日の雰囲気は少し違い、来た時から飾られていた提灯には明りが昼間から灯り、提灯のほかに観光客向けと思われる商品や派手な色をした羽飾りなどを売る店が多く露店を構えていた。
「あのーすいません。今日はお祭りかなにかですか?」
「あら、いらっしゃい。そうさ、この街の豊穣祭みたいなもんだよ。大地の恵みに感謝して、それに関わるものたちと分かち合い、そして変わらぬ豊穣を祈る祭りだよ。ついでに言うと隣の店で売ってる祭り用の羽飾りは豊穣を運ぶと言われる霊蝶をを模して造られてるって話だよ。 ちょっと、お隣さん、このお客さんにその羽飾りについて教えてあげてよ。」
「いいわよ、さっきこのおばさんが話していた通りなんだけど。この羽には、豊穣の他にも平和とか安らぎなんかの意味も込められてたって話もあるんだよ。多くの豊穣をもたらし、すべての者が平和で安らげますようにってみんなこの祭りに熱心な人は頭にこの飾り羽をつけて踊ったりして祈りをささげるんだよ。 で、御一ついかが?」
ちょっと摘まめるものを買うついでに祭りの話をしただけで、あれよあれよと商品をすすめられてしまった。
この店をやっている二人の女性が善意で話をしてくれて、善意で商品をすすめいているのだと思いたいが、羽飾りの店の女性を見るとゴマをするような動作をしているためどうしても裏があるように感じてしまう・・・。
「うーーーーん・・。」
「いいじゃないかレシル、ここまで話してくれたんだからさ。と言うわけで、一つこいつ似合う色の羽をくれ。」
「まいど、それじゃあ、この子に似合いそうな元気を感じさせる赤い色がいっぱい入った飛び切りのやつをあげるよ。 うん、似合う似合う。優しいお兄ちゃんに感謝するんだよ。」
「・・・・・・・・。」
「またきてねー!!」
レシルは今少し不愉快そうな顔をしつつ、笑顔で手を振りながら見送られながら羽飾りの店を後にしました。レシルの頭には、ジークが買ってくれた羽飾りが色鮮やかにその存在を主張していました。
赤を主体とてオレンジや水色黄緑などの色が混じった羽が二枚と、白くて小さな花が数輪ついた枝に、ブドウの葉のような大きなはっぱを大小二枚。それらを合わせた羽飾りがレシルの耳にかけられていました。
「俺はジークの弟に見えるのか?」
「うーん。何も知らない方から見たらそう見えるかもしれませんね。二人とも仲がいいですし、体の大きさだってそのようにとらえられてもおかしくないような感じですし・・・。」
「なに落ち込んでんだよ。俺はレシルを弟みたいに思ってるし、大事な親友だと思ってるぜ。今も昔もな!」
レシルはジークの言葉を聞いて、バルロの足元へ行った後バルロのズボンを掴んだまましゃがみ込んでしまいました。
「はあ、ジーク。レシルが気にかけているのはそういう事ではないと思いますよ。もう少しレシルのことを考えてあげてください。」
「なんだそれ?俺は自分なりに考えてるつもりだけどな。」
「なあバルロ。」
「なんですか、レシル。」
「盛り上がってるとこ悪いが、バルロが思ってるような感情を俺はジークに向けてないからな。それだけは否定しておくから。」
「え!?」
レシルはそれだけ告げると、バルロから手を離し二人から少し距離を取り、笑いながら二人の先を歩き始めました。レシル自身はジークのことを兄のように考えてはいませんでしたが、そのようにジークが思っていることがうれしく感じていました。そして、それを言葉にしてくれたことにさらにうれしく感じましたが、変わることのない姿の自分が少し嫌に感じてもいました。
バルロは、何を考えていたのかレシルはすぐにわかりました。ジークのことが実は大好きなレシルが、その関係の上限を示されたことにショックを受けているのだとバルロは考え、ジークにレシルにもっと気の利いた言葉を言わせようとしていたのですが、レシルは毛頭そうな感情はなくこれからも勘違いされるのは嫌なので、しっかりと否定したのでした。
「おい、までよレシル。」
そんな二人の会話が全然分からなったジークは、ただただ距離を開けたレシルを追いかけて駆け足になりそれを追いかけてバルロも駆けだすのでした。
レシルは考えていました。
「(見たことがあるような気がする。)」
レシルは三人でギルドに行き、常駐依頼の報酬や旅の報告など用事を済ませた後宿を取り、広場に行ってお祭りを楽しむことにしたのでした。
多くの住民が酒を飲み、露店の店主たちは忙しそうに手を動かし、客は急かすように商品を買いあさっているこの場所をレシルは知っているような気持ちで、言い当てるように思いつく限りの場所と状況を照らし合わせていきます。
「おい、レシルどうしたんだ?さっきからキョロキョロして。人が多いんだから離れるなよ。バルロ、そこの店でなんか買ってくるからレシルと居てくれ。{くれぐれも、目を離すなよ。あいつ、こういう時はあっという間にいなくなるからな、ちゃんと帰ってくるだろうけど・・・。}」
「{わかりました、しっかり見ておきますね。}」
ジークとバルロが小さな声で話している声には気づいていたレシルであったが、内容が分からず放っておくことにした。ジークが露店に向けて人ごみの中に見えなくなり、バルロが傍まで来てレシルの手を「離れたら困るので」と言うことで握ってきた。初めこそ断ったのだが、その直後人ごみに飲まれそうになり手を握ることにした・・・・・。
「(マジで子供みたいだな俺・・・。もう少し大きくなってから成長し無くなればよかったのに・・・・・・。)」
レシルとバルロは、人ごみを抜けテーブルと椅子の用意されているスペースまで行きタイミングよく席を確保することができた。
2人で席に腰掛けジークを待っていれば鳴り響く音楽が変わり、踊るためのスペースに男女のペアーが集まりだしてきた。じきに陽気な音楽が流れだし、集まった人たちは踊りはじめ周りで見る者たちも手を叩いたり、体を動かしリズムを取ったりと自分まで楽しくなりそうな雰囲気が出来上がっていった。
今さらではあるがレシルは、そんな音楽を聴きながら落ちついて周りを見て色んな獣人がいるんだなと思っていた。リザードマンと思われるトカゲのような獣人だけでもよく見れば二、三種類はいるようで、そのほかにも猪やカワウソ、リスに、ウサギ、クマに亀・・・・。
色んな種類の獣人が入り混じり、皆一様に音楽に合わせて踊っている。レシルが今まで見てきた街ではありえない光景であり、獣人の中にいる人間もみんな仲が良さそうにしていた。
「なんか、よくよく見たらすごい光景だよな。」
「そうですね、ガトークとかザークスの国では見ることの出来ない光景ですね。」
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「おまたせ、いろいろ買ってきたぞ。食べようぜ、あと酒な!」
ジークが運んできたのは露店で売られていた食べ物と酒であった。肉を使った料理が多くあったが芋をふかした物とかもあり、塩気が効いていたり味が濃かったりで酒よく合い、食べるペースは思っていたよりも早かった。
「ジーク、お酒のおかわり買ってきて~。お金渡すからさ!いっーぱいな。」
「レシル飲みすぎですよ。程々にしないと、一応明日にはこの街をでる予定なんですから。」
「俺はさっき買い足してきたばかりだぜ、少しはゆっくり飲み食いさせてくれよ」
「ブー、じゃあいい。自分で行くから。」
レシルは酒をそれなりに飲んでいたため、少しふらつく足取りでごったがえしていている露店の方に向かいました。
レシルは欲しい食べ物や酒を見つけるとお店の人に声をかけ、食べ物を買っていきますがお酒は子供と言うことと赤くなりとろんとした目で見つめるレシルには、どうしても売ってくれませんでした。普段であれば、ガトークでしたようにギルドプレートを見せれば問題なく購入できるが、こんな混雑している状況で時間をかけて証明することはできず追い返されてしまった。
「なんだよ!俺はちゃんと十二歳だぞ。酒を飲んでも問題ない年なんだぞ!バーカ!!!」
そんなことを言いながら、ジークとバルロのいた席に戻ろうとしていると、イスに座っている人間と大柄の牛の獣人が目に入った。
「(あの牛、見たことがある気がする・・・。)」
レシルは、その場に立ち止まり牛の獣人を見ながらどこで見たのか考え始めました。しばらくそんなことをしていると、牛の獣人がレシルに気が付いたようで手招きしてきました。レシルは、招かれるまま「なにかよう?」程度の気持ちで近づいて行ってしまいました。
「なんだお前子供のくせに酒を飲んでんのか!悪い奴だな。」
「ムー!!俺は子供じゃない、立派な十二歳だから酒を飲んでも大丈夫なんだぞ。」
レシルは獣人が使っている机に買って食べ物を置くと、ポケットからギルドプレートを出し見せつけるのでした。獣人も酔った状態であったが確認した後、一緒に飲んでいた人間にも回し確認させ、二人して「馬鹿にして悪かった」と酒をすすめてきました。
レシルは飲んでいいのか確認を取った後、空いていた席に座りレシルは買ってきた食べ物を「食べていい」とすすめつつ、三人で飲み始めてしまいました。
一緒に飲んでいる人間は「ガク」、牛の獣人は「タウロ」と言うらしく、二人ともピクスに住む住人であり、ガクは農家で、タウロは酪農家らしく、レシルは酔っているせいか「牛が牛を育てるのー?」などと失礼なことと思うことをタウロに言っていたがタウロも酔っていたせいか特に怒ることもなく、三人で馬鹿笑いをしていた。
「ジーク、レシル遅くありませんか?」
「大丈夫だろ、あいつも子供じゃねーし、いざとなれば宿に自力で帰ってくるさ。」
心配するバルロと違い、ジークは酒を飲みつつ「大丈夫だろう」と言うばかり。そんな風に心配していると、遠くから大きな笑い声がかすかに聞こえレシルの姿を見つけたのでした。
レシルがいる獣人の席は、ジーク達のいる位置から遠くではあったが見える範囲にある席だったのです。
「ジーク、いましたレシル。よその席でお酒を飲んでるみたいです。迷惑にならなければいいですが・・・。」
「なあ、バルロ。最近お前、母親みたいになってきてるぞ。」
「なあ!!!???」
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「楽しそうに飲んでるみたいですし、水を差すのはやめましょう。私も、飲みますよ。」
一瞬ジークに思わぬ方向から当てられた言葉に、変な声をあげてしまったバルロであったが仕切り直すよう流し、酒を飲みはじめジーク同様に、かなり酔うまで飲み続けるのでした・・・・・・。
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