表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/91

54 「レゲナの家」

レシルは焚火の傍で、大きな音を立てないように馬車を少しずつ直していきました。

折れ曲がってしまった車軸の代わりを作り、欠けてしまった車輪をやっとの思いで直し、馬車全体についていた金や銀の装飾を剥がしたり削ったりしていきました。五人は乗れそうな大きさだった馬車から、使えそうな板を取りだし一人が乗れる程度まで小さくするつもりでばらしていきました。そして、組み立てれば完成できるような状態に持っていこうと、部品を作っていきました。


「レシル、なにしてるんだ?」


「ジークか。起こしちゃったかな、ごめん。」


「いや、大丈夫だ。それより、見張りを任せて悪かったな。で、なにやってるんだ?」


ジークが起きてきたのは、真夜中であった。まだ日が上がる気配もない、暗闇の中ジークだけ起き出し、レシルと見張りを交代しようと来たようだった。

ジークは、レシルが焚火の傍に大きな木の箱(馬車)を見て、初めこそ何かわからず近くに来てレゲナの乗っていた馬車だとわかったのだった。そして、レシルは薪にしているわけでもなく木を削り、横に積み上げられている木の山を見て疑問を持ったのであった。


「レゲナのために、馬車を用意しようと思ってさ。不格好な物しかできないだろうけど、このままだと予定通りピクスに行けないだろうし、何よりうるさいだろ。」


「確かに有ったら便利だろうし、言ってることはわかるな。でも、レシルはレゲナの事嫌いなんじゃないのか?なんか、相性悪いみたいに考えてたけどよ。」


「ああ、確かにあんまり好きじゃない。でも、女性には優しくするのが俺の心情だし、約束をしたからにはできる限りは色々やってやらないとな。それに、色々と思うこともあるしな・・・。」


「ふっ。なんやかんやで、優しいからなレシルは。さあ、レシルも休めよ。」


「いや、俺はこのまま部品が全部できるまでもう少し起きてるよ。ジークが変わるつもりなら薪を集めてきてくれないか?作ってる間に少なくなったからな。」


「わかった、集めてくるぜ。レシルも、終わったらしっかり寝ろよ。」


ジークは、明りをもって森の中に入っていきました。レシルはそのまま部品作りを続けていき、考えていた部品をすべて作り終えました。

作り終えたところでレシルはホッと一息つき、作った部品をいったん収納にしまいました。すべてをしまい終えたあたりで、眠気に襲われレシルはテントに向かい眠りにつくのでした。




ジークが森から帰るとレシルはすでにいませんでした。レシルがいた辺りには、木のカスが残っていたいましたが、タヒコの姿もなくテントの中を確認してホッと一安心。

火が小さくなってきていたので集めた薪を足して、レシルの代わりに見張りをするのでした。やる事もなく火を見つめ、眠気に襲われては「いけない、いけない」と顔をたたいて目を覚ましていると、レシルが片付け忘れたであろう木の木片が落ちていました。

ジークは、何気なくそれを持ち上げいろんな角度で見つめだしたのでした。そして何を思ったのかナイフを取り出し、そのナイフで削りだしたのでした。






「うーん、はあ、良く寝ましたね。ん?あー、レシルですか。  見張りありがとうでした。さて、朝食を作りますか。」


レシルに感謝しつつ頭をなで、バルロが起き出しテントの外に行けばジークが焚火の前で座っていた。


「ジークおはようございます。見張り任せてしまってすいません。ありがとうございました。」


「ああ、大丈夫だ。ただ少し眠いから、食事の支度任せていいか?」


「ええ、大丈夫ですよ。準備できたら起こしますね。レシルを起こしてもらってもいいですか?材料だけでも出してもらはないと・・・。」


バルロは、ジークと変わり朝食の準備を始めました。朝食用に薪を集めに行き、戻ってくればレシルが焚火に水の入った鍋を用意してくれていました。

レシルは、その中に入れる野菜や肉を切ろうと準備をしてくれていました。


「おはようごさいます。」


「おはよう、バルロ。あとを任せていいか?」


「ええ、大丈夫です。また寝るなら後で起こしますよ。」


「ああ、根はしないよ。馬車を直そうと思ってさ。あとは組み立てるばかりなんだけど。」


「そうなんですか、すごいですね!?できたらかなり旅が楽になりますね。頑張ってください。」


バルロは、レシルからナイフと食材を受け取り朝食づくりを引き継ぎ、レシルはテントから少し離れたところで収納から木の板などを取り出し始めました。

バルロが着々と食事の支度を進めるように、レシルも「カンカン、コンコン」音を立てながら馬車をどんどん組み立てていきました。そんな音を立てていたせいか、朝から文句を言いつつレゲナがテントから出てきました。


「体中が軋んで痛いわ。何の音?」


「おはようございます、レゲナさん。レシルが馬車を作ってるんですよ。」


「ええ!ほんと!?これで歩かなくて済むのね。やった。ちょっと様子見てくるわね。」


レゲナは、体が痛いと言っていたことなど忘れたように、少し離れたところにいたレシルの元に駆けていきました。そして、レシルに完成したら自分が乗るつもりで話をし出しました。

レシルは、初めから「そのつもりで作っていることや、狭くて乗り心地は悪いと思う」と言うとこを伝えつつ作業を続けていきました。

作業を途中で止め、朝食を取って最後はジークとバルロも手伝い組み立てたことで、朝食後さして時間を置かずして完成した。

木の板を組み立てただけの小さな馬車。その見た目は、ただただハゲかけた木の板を張り合わせ印象だけ言えば、みすぼらしい物であったがレゲナが乗れるように考えられた簡素な馬車であった。


「見た目は全然ダメね。はあ、まあ仕方ないか。」


文句を言いつつも。レゲナは馬車の席を陣取りふてぶてしく構えるのでした。

レシル達も、二日も一緒に居ればこのような会話にも慣れ、レシルに関しては完全に気にせず無視するほどでした。

テントを片付けにレシルとバルロが動き出し、ジークが馬車と馬をつなげて、レゲナは馬車に乗り込んで待機していました。

支度も終わり、馬車の初運転。手作りなだけあって車輪の動きが悪かったり、車輪がきれいな円にできていなかったりで、乗り心地は何とも言えないものであったためレゲナはクレームをつけてきたが、降りようとは決してしなかった。

レゲナを気にせず進むことができるようになったため、レシル達は今までの分を取り戻すように速度を上げて足早にピクスに向かって歩いていった。そのおかげで、ピクスには夕方には着くことができそのままレゲナの別荘に向かおうと門をくぐった。

石畳の道を進み、大きな大木を二本使って作られた門をくぐれば日本の建築様式に似た木造の家々が並び、独特の雰囲気を纏った町が姿を現した。中に入り道を進めば木造ばかりではなく石造りの家もあり、「和と洋の家々が入り混じるようだと」印象をレシルは受けた。

木造の家は一階建てが多く、石造りの家は、どれも頑丈そうに見えた。

レシル達は、街の外周にある道を進み、レゲナの別荘を目指して進んでいった。レゲナはさすがに男性物の衣服を着たまま、家の者と会うわけにいかないので馬車の中で着替え始めたのだが、動き続けている揺れの激しい馬車の中で着替え始めたため、たまに中から「ドン、ドスン」など音が聞こえてきていた。

レゲナの指示道理に進み、外周の道を進んでいくと街の雰囲気はなくなり、少し丘のようになっている開けた芝生土地が見えてきた。そして、さらに進むとその芝生の土地を眺めるように丘の上に立った屋敷が見えてきたのだった・・・・。


ドアを少し開け、レゲナが「あそこの屋敷よ。」と指さした屋敷は、石と木を組み合わせて作られた何とも和と洋の両方の雰囲気を醸し出す家であった。

緩やかな坂を上り、屋敷の門前まで行くと門番に止められた。


「お前たちは何者だ?何の用でここに来た?」


「えーと、レゲナ・バーム・スリングお嬢様から依頼を受けてここまで連れてきたんですけど、中に入れてもらえませんか?」


「なに!?レゲナお嬢様をだと!!!???」


門番はかなり驚いた様子でおんぼろの馬車の中を確認しようとドアを開けさせ、レゲナを見て驚愕しそのまま屋敷に向かって大急ぎで駆けて行ってしまった。


「なあ、俺たちはどうしたらいいんだ?中に入っていいのか?」


「うーん、わかんない。」


「こういう時は、とりあえず門番の方が戻ってくるのを待った方がいいと思います。下手に入って家主の機嫌を損ねると事ですから。」


「ねえ、もういいから早く屋敷まで行ってくれない?いい加減ゆっくり休みたいの!」


門番がいないことをいいことに、いつもの調子で文句を言いだすレゲナ。門番がいた時は、はかなげな表情を浮かべ「どうしたのだろう」と心配させるような雰囲気を纏っていたが、大した演技力であった。

レゲナの言葉をさておいて、門番が戻ってくるのを待っていると道の先から門番の姿が見えてきた。そして、人影がもう一つ、二つ、三つ・・・・・・。

門番を筆頭に、後ろからぞろぞろと人が続いて坂を駆け下りてきた。エプロンをつけたメイドであろうおばさん。ツナギを着た髭を蓄えた太めの男。門番を今にも追い抜かしそうに、全力で走っている整った服を着た男性・・・・。あ、一番後ろから杖を突いた老人とそれを介抱するように付き添いながら向かってくるコック服を着た者もいた。


「レーゲーナー!!!!!!!」    「「「「レゲナお嬢様ーーー!!!!!!!」」」」


門番以外の向かってくる人たちから、大声でレゲナを呼ぶ声が聞こえだしそれは近づくほどに大きさを増していった。

レゲナは、馬車にたどり着く前に馬車からゆっくりと余裕をもって優雅に降り、駆けてくる者たちが着くのを待った。


「レッレゲナ!!!無事でよかった!!!!」


整った服を着た男性が、レゲナに飛びつき強く抱きしめた。レゲナは男性を振りほどこうとはせず、「お父様」と言いながら、恥じらいながらなだめていた。ともについてきた、使用にと思われる者たちは、誰もが目から涙を流し、レゲナが帰ってきたことを心から喜んでいるようで、「よくぞご無事で」だとか「もう一度会えるなんて」など、言葉を振るわせて口々に声をあげていた。


「「(なんなんだ?この状況?????)」」


「(はあ、レゲナの作戦は見事に成功ってわけか。めんどくさいことにならなければいいけど・・・・。)」


ジークとバルロはそんな家族や使用人に迎えられ、恥じらうレゲナを見つつ状況を理解できないでいた。

レシルは、レゲナの心を読むことである程度のことは想像できていたのだが、レゲナがここまで家族や使用人に慕われていたことに少し驚いていた・・・・・。


読んでいただいてありがとうございます。

よければ、また読んでください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ