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52 「思惑」

レシルは、この前の村でこの馬車が宿を取っていたことを知っていた。仮に、宿を取っていなかったとしてもあの村にいたことは間違いないことは確かなため、レシルは彼女の心を読んだのだった。

心を読むことでレシルは、彼女がレシル達を食い物にしようとしていることまですべてわかっていた。しかし、「さすがに女性一人にするのは・・・」と紳士であるレシルはどうにかしたいと考えていたのだが、甘え腐ったお嬢様の言葉に耐えられなかったので少し厳しく言葉を返した。


「残念ながらレゲナさん、でしたっけ?あなたの思うようにはいきませんから。仮に行きそうになっても、俺が止めますので・・・。」


レゲナは、小さく無害そうな子供の姿であったレシルを、今では鋭くにらみつけ蹴落とそうと威嚇していましたが、そこに外から声が掛かりました。


「おーい、レシル。お嬢様の具合はどうだ?」


その声にレゲナはピーンと反応し、レシルを押しのけテントの外に駆けだしていった。


「あぁん、お願いします。助けてください。私をピクスまで連れて行ってほしいのです。」


「え、え!えーーーー!おい、レシル。これはどういうことだよ。」


いきなり抱き着かれたジークは、どうしたらよいのか分からずレシルの助けを求めてきましたが、レシルがテントの中から出てきて声をかけようとしたとき、それをわざと遮るかのようにレゲナは声を発してきました。


「この子にも治療が終わった後にお願いしたのに、聞いてくれなかったのです。お願いします。私をピクスまで連れて行ってください。」


「あ、あ!あの、少しくっつきすぎじゃ・・・。」


レゲナはジークに、半分はだけた状態で胸を押し付け取り入ろうとしていました。ジークも、そんな状況がまんざらでもないようで頬を赤くし、一応程度の拒否を入れますがすでに彼女のことで頭がいっぱいの様子。

レシルは、その状況にイライラが募ります。声をかけようとすればレゲナがすかさずかき消し、決して近づかせないように掃おうとしてきました。挙句の果てには、イライラがたまりプルプルとするレシルを嘲笑うように見下してきたのです。


「はあーーー。バカらしい。」


レシルは、急に覚めたようにため息を出しテントの片付けを始めました。いきなり変わったレシルにレゲナは一瞬驚いていましたが、「これは好機」とジークに拍車をかけて取り入ろうと体をジークの体に擦り付けながらくねくねと煽っていきます。


「お願いします。私を連れて行って~。報酬はちゃーんとお支払いしますから~。なんなら、先にお支払いいたしましょうか?」


ただでさえはだけて露出の多い状態にもかかわらず、レゲナは胸元をより強調するように手を持っていき見せつけた後、ジークの手を取り胸へと導き始めました。

指を絡め、湿った声を聞かせつつ、顔色を窺いながらゆっくりとゆっくりと胸へとジークの手を持っていきます。


「そこまで!」


「ぐふ!」


「ジーク、お前が手玉に取られてどうする?レゲナさんも、もうその辺で辞めてください。これ以上やるなら、強制的に止めますよ。」


レシルはテントを片付け終わると二人のイチャイチャを止め、ジークの横を通る時わき腹に肘の一撃を入れ、殺気を纏いながら二人に冷静な声で語り掛けた。

ジークは、わき腹の痛みにはじめこそ痛がり頬けていた顔が苦痛の表情に変わっていたが、レシルから向けられた殺気に真剣な表情に瞬く間に変わっていった。

レシルは、殺気を向けることで自分の言っていることは本気であることを伝えようとしており、ジークはレシルの殺気で理解したのだったが、殺気などとは無縁の生活を送っていたであろう温室育ちのお嬢様には、レシルの意図など伝わるはずもなかった。


「あの、少し離れてくれ。話はあとでしっかりと聞きくから服をまず着てくれ。」


「・・・・。」


「おい、待てよレシル!」


ジークが落ち着きを取り戻し、レゲナも止まったことを確認するとレシルは何も言わずに歩き出した。そんなレシルをジークは追い駆けだし、レゲナは一人となり服を着直すのだった。




バルロは、ジークと別れ横転した馬車の様子を確認していた。

馬車はかなり派手に横転したのかかなりひどく壊れていた。馬は倒れた拍子に逃げたのか見当たらず、馬車は使えそうな様子ではなかった。

バルロがあらかた様子を確認し終わったころ、レシルの後をついて来る形でジークとレシルがバルロの元までやってきた。


「(これは、またなにかありましたね。)」


「レシル、先ほどの女性はもういいんですか?」


「ああ、もう大丈夫だ。むしろ元気が良すぎるくらいに元気になった。」


レシルは、バルロにレゲナの状況を簡単に説明しましたがジークが間間で、話に入り込もうと声をかけてきていましたがレシルはすべて無視。説明が終わると、レシルは馬車に一人で行ってしまいました。


「またなにかあったんですか?レシル、かなり怒ってませんでしたか?」


「お、おう・・・。実は、カクカクシカジカで・・・。」


「またそんなことをしてたんですか。あきれてものも言えないですよ。少々羨ましくはありますが・・・。ともかく、レシルがあんな怒り方をするなんて今までなかったですし気になりますね。あとで、私から聞いてみます。」


「おう、頼んだ。」


「その必要は無いぞ。ジーク少しは反省したか?もっと気を引き締める気になったか?」


レシルは、バルロとジークの会話に突然入ってきて然したる説明もなくジークに釘を刺した。ジークは、少したじろうような返事を返したが、レシルはそっけない返事を返し、どうでもいいように切り捨てた。

バルロはそんな会話が終わるタイミングで、レシルに何をしていたのか聞いてきた。


「馬車を一応回収しておいた。馬は、入れられないが馬車自体は全部収納に入れておいた。えっと、確か馬車を引いていたのは馬一匹だけだったよな・・・。     タヒコ、頼むな。」


「キキッ!!」


タヒコはいきなり駆け出し、森の中に消えていった。


「タヒコに何を頼んだんですか?」


「馬の捜索と、できれば連れてきてもらおうと思ってさ。」


実のところ、レシルは馬の居場所はすでに気配でわかっているのだが、自分が行って戻ってくるのには時間が掛かるためタヒコに行かせたのだった。レシルは、いざとなればタヒコを通じて魔法で無理やり連れてくるつもりでいた。

そんなレシルの行動にバルロとジークは疑問に思っていた。なぜそんなことをしているのか、馬車は放置しておけばいいし、逃げた馬など探しても仕方ない、ましてや仮に見つけたとして馬の世話までしなければならないではないかとジーク達は考えていた。

レシルがなぜ、馬車や馬を回収しようとしているのか分からなかった二人は、理由を聞こうとしたがそこに服を着直し、簡単に身だしなみを整えたレゲナが声をかけてきた。

今度は、しっかりと服を着て育ちの良さを感じさせる姿であった。


「あの、先ほどは失礼いたしました。私の名前はレゲナ。バーム・スリング家の一員にしてアティカス神命連合国における人族の代表貴族の一つ、バーム・スリングの長女、レゲナ・バーム・スリングと申します。」


「あの、今さらではありますが私をピクスまで連れて行ってください。お願いします。」


「「・・・・・。」」


「俺たちも、ピクスまで行くつもりだから構わないが・・・・。」


「はい、私もかまいませんが・・・・。」


2人は、レシルを横目で見るがレシルは目をつむりただ静かに立って話を聞いていた・・・。

レゲナはそんな煮え切らない二人の反応に少しイラついたのか、二人の元に懇願しに近づきだした。二人は、押しの強いレゲナの対応をどうしようか、どう答えようかと考えつつもレシルの言葉を待っていました。しかし、レシルは静かに立ったまま微動だにしませんでした。


「レシル、お前はどう考えてるんだ?」


「え?いいんじゃないか?どうせ目的地は同じなんだし。    あ、念のため食事や歩き疲れたとか、わがままを言わないことを約束しといてくれ。俺はタヒコを迎えに行ってくる。すぐ戻るから。」


レシルはそう言い残し、三人を置いて森の中に入っていきました。バルロは詳しい説明をしてほしいと、声をかけようとしましたがレシルはそのまま森の中に入っていきすぐに見えなくなってしまいました。

レゲナは最大の難題であったレシルが、簡単に折れ一緒にピクスまで行けるようになったことを淑女のように喜んでいたが、内心は賭け事に勝ったように喜んでおり、振り回されまくった二人は何とも不安を募らせつつもレゲナを短い旅の仲間として迎えた・・・・。


読んでいただいてありがとうございます。

よければ、また読んでください。

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