51 「レゲナ」
惚けていたレシル達は再び再起動し、馬車の進んでいった道を歩き始めた。しかし、先ほどと明らかに違うことがあった。
三人そろって先ほど通っていった馬車について、話がかなり盛り上がっていたのだ。それもそのはず、先ほど通った馬車は速度も驚くポイントだったが、なによりその馬車を操っていたのだ金髪ロールにドレスを着た女性だったことだ。
「あの金髪のお姉さんはヤバかったな。なんというか、あんまり関わらないほうがいいタイプの女だと思う。」
「確かに、早くて顔までは見えませんでしたがあんなことをする女性ですし、使用人も苦労してそうですね。」
「あんなお嬢様もいるんだな。バルロと息が合いそうじゃねえか。あんなことを笑いながらやるくらいだ、その気になれば家くらい飛び出しそうだしな。」
「な!あんな女性と一緒にしないでください。私は、しっかりとやるべきことはやるタイプです。父にも話を通してます。」
バルロは、はっきりと否定をしてジークのいじりがこれ以上続かないようにした。ジークも、あまりこれ以上言っても仕方ないと思ったのかこれ以上バルロをいじるようなことは言わなかった。
話は、バルロのことから「なぜ、あんなに急いでいたのか?」と言うことに代わっていった。あれほどまでに急いでいるということは、「相当な理由があるのではないか?」「助けが必要なことがあったのでは?」など不穏な可能性から順々に出てきた。かと思えば、「女性は笑っていた」と言う事もあり「危険なことで急いでいたわけではない」と言う意見が出たり、「ただのお嬢様のわがままでは」と言う意見も出てきた。
どれも可能性の域を出ない物ばかりであるし、最後の意見に関して言えばある意味しっくりと来てしまう。
「まあ、こんなこと話していても仕方ないし、さっさと行こうぜ。また、縁があれば出会うこともあるだろうし。」
ジークは話を適当なところで切り上げ終わらせ、別の話に切り替えた。
「そう言えば、レシルはかなり早く馬車のことが分かってたな。俺たちなんて、かなり経ってから気配を感じ取ったのに。」
「日々の修行の成果だぞ。俺は成長してるからな。」
「どの辺がだ~? いてえ!!」
レシルがジークの質問に当たり障りのない答えを返し、それをさらに隠すようにかぶせた言葉を意地悪な言葉で返してきたジーク。
レシルは、お約束とばかりにジークの足を踏み少し不快に感じているような表情をする。
バルロは、見慣れたこのやりとりを見つつ微笑み「まあまあ」となだめに入ってくる。ジークも慣れたように、わざとらしく「そんなに怒んなよ」と声をかけだした。
レシルの体は子供のままである。それゆえ今では、レシルが反射的にジークの足を踏もうともさした痛みなどジークには与えられていないのだった。ジークは内心、そんなレシルのことを思うと虚しい気持ちになることがあった。
歳としたらたった二つしか変わらないレシル。しかし、その姿は子供のままのレシル。村で過ごした時間は少なくとも、心を通わし親友と言える唯一の友であるレシル。
「(俺がレシルを守ってやらないとな。)」
心の中でジークは時々、子供の姿と変わらないレシルのことを思いそう心に誓うのでした。
昼も過ぎ、ジーク達は街道を進み続け今日は村に泊らず野宿をすることにして、食材を集めつつちょうどいい場所を探していました。
タヒコは街道から近くの森に入り食材をはじめ様々な素材を集め収納にしまっていきます。レシルはタヒコと感覚を共有しつつ街道を歩き離れていてもタヒコの事を気にしていました。
野宿にちょうどいい場所を見つけ支度をし始めたので、タヒコに戻ってくるように指示を出しテントを張りながらタヒコを待てば少し汚れたタヒコの登場。魔法できれいにしてやり、タオルで体をふいてあげます。
「お疲れ様、タヒコ。」
夕食を作り、薪を集め、野宿の支度が終われば食事をして見張りを立てながらレシル達は休みました。
翌朝、レシルは見張りを夜から朝にかけてやっていたので少々眠そうにしていました。目を擦り、起き出してくるジーク達に挨拶をして顔を洗う用の水を用意します。
バルロは朝食の支度をはじめ、レシルはちょっとの間ひと眠り。ジークは薪を集めに行き、タヒコは近場で素材探し。
「これくらいあれば大丈夫だろう。よっと」
ジークは薪を集め終わり、バルロの元に急ぎます。獣道を歩きテントに向かえば、途中で地面に馬車の通った跡を見つけました。
ここは森の中でしたが木は密集して生えているわけではなかったので馬車は通れなくなかったが、こんなところになぜ馬車の跡があるのか不思議に思いました。
街道からは少し外れたはずの場所に馬車のああと。馬車と言えば心当たりは一つしか思い浮かばなかったジークは薪を持ったまま馬車の後を辿ることにした。
「キッキ?キッキキキ」
途中で森の中で素材を探していたタヒコと出会い、タヒコも一緒に馬車の後を追っていきます。薪を片手に後を辿っていくと街道に出てしまいました。
「あー、しまった。逆だったか。」
街道に残っていた跡の向きと、太陽の位置から、自分たちが歩いてきた方句から森の中に続くように残っている跡を見て、ここまで来たことが無駄足に終わったことをジークは知った。そのまま後を辿って森の中に入ろうかとも思ったがこれ以上バルロを待たせるわけにもいかないためテントに戻ることにした。
「今戻った。遅くなってすまない。」
「ジークが遅かったので自分で薪は拾ってきました。おかげで、役割を分けた意味があまりありませんでしたけどね。」
「ジークおかえり。いろいろ無駄足に終わったみたいで残念だったな。」
レシルから笑顔でかけられた言葉に、ただの労いと分かっていてもその言葉がなぜか馬車の跡を追って時間をかけていたことを言われているような気がして素直に同意できなかった。
レシルは、実のところジークがどこにいるか気配を感じ取っていたため知っており、タヒコを使って何をしていたのかまでわかっていた。
レシルはあえて、それを臭わせる言い方をしたのだが、ジークの隠そうとたじろう姿を見て満足してので放っておくことにした。
朝食を取り、テントをしまい街道に出てしばらく進むと旅人たちが数人集まっている所に出くわした。
「お嬢さん、大丈夫ですか?とりあえず手当てを。」
「触れるな。助けてくださるのは感謝しますが、触れないでください。」
「どうかされたんですか?」
旅人の集まっている所にジーク達は行き何があったのか聞くと、女性がここで傷ついていたので手当てしようとしたが断られていたとのこと。
近くを見れば女性がおり、身を預けている木の後ろの方にきらびやかな馬車の一部が見えた。あの時、道を駆け抜けていった馬車で間違いないことと、あの時一瞬みた女性の特徴を持っていたことから、ここで馬車が横転でもしたのだろうとレシルは結論づけた。
「あの、俺が治します。回復魔法が使えるので。」
「こんな子供が、まだ幼いのすごい。」
「えっと、お姉さん。傷を治すから見てもいいですか?」
レシルは女性に語り掛け、子供と言うこともよかったのか案外あっさりと受け入れられ、女性の傷を見ることになった。
「ほら、あんたたちは向こう行ってて。お姉さんが安心できないだろ。ジークバルロ、テントを立ててくれ。とりあえず応急処置して、その後中でしっかり確認する。」
「わかった。」「任せてください。」
子供のレシルであったが二人にどんどん指示を出し、二人もその言葉に従いてきぱきと動く姿に女性も旅人たちも少し驚いていたが、旅人たちは「あとはあんたたちに任せた。」と言ってそのままどこかに行ってしまった。そのため、女性も少し安心したのかレシルの手当てを普通に受けてくれている。応急処置も終わり、テントも完成したので中で、他のところを怪我していないか確認することにした。
「すいません、失礼します。痛いところがあれば言ってくださいね。」
レシルは、女性の服を脱がし体を確認していく。
右わき腹に打撲、左太もも裏に打ち身、背中に打ち身・・・・・。
「これくらいなら、俺にも治せそうです。じっとしててくださいね。」
「ありがとう。子供なのに君はすごいな、こんなことができるなんて。ああ、私の名前はレゲナ、よろしく。」
「俺の名前はレシルです。何があったんですか?」
「なに、馬車を走らせていたら横転して放り出されただけだ。私以外誰も乗っていないし問題ない。」
レシルにそう言うとレゲナは、背中を向け次の治療がしやすいように動いてくれた。レゲナは、馬車でピクスに向かう途中野党に襲われたそうだ。使用人たちは、レゲナを逃がすために足止めに残ったそうだ。レゲナはそこから自分で馬車を走らせ逃げてきたのだったが、今度は横転してこのようになってしまったと話してくれた。
「私のために身を張って守ろうとしてくれた者たちを思うと・・・・。」
「お辛かったでしょう。しかし、この後はどうなさるんですか?ピクスまではまだ遠いですよ。」
レシルは、レゲナに聞くと「できれば一緒についてきてほしい」と言われた。レシル達にとっては、目的地が一緒なので問題ないが人一人、しかもお嬢様ともなると色々と問題が出てくるだろう。ここで引き受けてしまっていいだろうかとレシルは考え出した。
「あの、レゲナさん。さっきの話お断りさせてもらいます。」
「はあ!?え、えええ!!!??? なんで、私は女性でしかも辛いことがあったばかり・・・。あー、わかったわ。自分じゃ決められないってことね、いいわ。治療が終わったら外の二人と話をするから。考えてみれば子供に同意求める事ではないものね。ごめんなさい。」
レゲナの言葉にカチーン!ときて、レシルはレゲナに怒りを覚えた。
「レゲナさん、嘘はやめましょうよ。あなたの使用人たちは死んでないのでしょう?ましてや、あなたは襲われたりもしていないのでは?」
「な、なによ。そんなことないわよ、こうしてケガまでして・・・・。」
「けがと横転は事実でしょうが、その前は違いますね。旅の途中、宿に泊まりそこで使用人を出し抜いてここまで逃げてきたってとこでしょうか?」
「な!?なんで・・・。」
驚きを隠せないレゲナをレシルは追い詰めたことに、笑顔を見せ戸惑うレゲナを嘲笑うのでした・・・・。
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