5 出会い
2018/1/22 修正を入れました。
レシルが木刀を自由自在に使えるようになったころ、聖樹に意を決し崖の下へ行ってみたいことを伝えたのであった・・・・・・。
_______________________________________________
レシルは、神妙な面持ちで聖樹に向かい合った。
なにかを感じたのか、聖樹もはじめはいつものように微笑んでいたがいつもと違う雰囲気に真剣な表情をし始め、向かい合ってレシルの言葉を待っていた。
「あ、あのさ・・・・。話があるんだけど、。」
「俺、ここの外へ行ってみたい・・・。」
レシルが恐る恐る話をしていき、聖樹はそんな話にただただ耳を傾け見つめ続けていた。
レシルは、自分の話を聞く聖樹の表情一つ変えな顔を見つつ不安を感じながら話を続けていく。
もし、レシルの話を聞いたうえで否定されてしまったら・・・そんな、後ろ向きな様々な考えが浮かびは沈み、心を揺さぶる。
レシルが不安を抱えながら向き合って話を進めていくと聖樹が突然、ツタを手の形にして伸ばしレシルの頬に触れる。
レシルは、突然触れられて驚いてしまい、言葉が詰まってしまった。触られたことに対して声を出そうとしたとき、聖樹が話し始めた。
「大丈夫よ。そんなに怯えなくても。 落ち着いて。」
レシルが思っていた否定の言葉は言われず、落ち着かせるように優しく言葉をかけてきた。
レシルが、不意のことでぽかんとしていると聖樹は話をかまわず進める。
「忘れてしまったのレシル?私は触れることで心を読むことができるのよ。レシルの考えてること、その考えを私に話すことにより返ってくるであろう思いつく限りの言葉も、心を読んでしまえば全部まるわかり・・・。」
「俺、うまく言葉にできなくて・・。でも、俺いろいろとしてみたくて・・・それで・・それで・・。」
聖樹は、レシルの口にツタを運び俺の言葉を遮った。そして、レシルの心を知ったうえで、うなずき考えに肯定してくれた。
聖樹は崖棚の外へ行きたいと言うレシルの意をくんでくれたが、いくつかの条件を出した。
まず、崖棚の外へいくための知識を身に付けること、そして、訓練をすること。
真っ先に出してきた条件はこの二つだった。
聖樹は、このほかにもいくつか条件を出してくつもりらしいがとりあえずこの二つをクリアするように言ってきたがレシルは、その二つを素直に受け入れた。
今までに知識もお粗末ながらの剣術があるとはいえ、それだけでなんとかできるほど自然界が甘いとは考えていはいない。だからこそ聖樹の言うこの条件に従うことにした。
それからの生活は、大きく変わることは少なかったが、午前中の勉強はケガに効く薬草に始まり、見分け方、その他危険な植物など植物学を中心に森や山に多くいる動物、そしてモンスターと言われる、魔石を体内にもつ動物(魔物)の生態など外の世界を広く知るために必要なことを多く学ぶことになった。
午後はトレーニングとして自己流の剣術や体を鍛えることに重きを置いていたが、聖樹の指示のもと剣術の改善や聖樹もよく知らないようだが体術などもトレーニングも盛り込まれていった。
そんな中、唯一変化したことがあった。レシルが食べる食事である。
今までは聖樹の用意してくれていた木の実が中心であったが、頭や体を今まで以上に使うようになってから木の実の他に肉や魚なども用意されるようになったのだ。はじめは驚きもしたが聖樹もこれからのことやレシルのことを考えて用意したことを聞き、こちらの世界に来て初めて食べる肉や魚はすべて生であったがとてもおいしく感じた。
そんな日々を送っていた時、崖の下から何かがぶつかるような音と動物の鳴き声が聞こえてきた・・。
崖の下を覗いても何も見えないが、確かに鳴き声は聞こえていた。
聖樹も下を覗くレシルに気づき、説明を聞くとツタを伸ばし下の様子を確認してくれた。
聖樹の話によれば、サルのような魔物が岸壁の岩陰にいるとのことだった。
レシルは、その話を聞いて興味をそそられていた。初めて自分の目で魔物を見るチャンスではないかと、すぐに、聖樹に話すと確かに魔物を安全度の高い状態で見る機会はそう多くないとのことで、聖樹はレシルにツタを巻き付け崖下へと下ろしていった。
魔物の子供の姿が見える位置まで聖樹によって下ろされていくと、岩陰に小さくうずくまる小さなサルのような動物がいた。
毛並みは、赤黒く白い毛がまだらのようになっていた。
小ザルの姿を、上から眺めていると小ザルのいる岩陰に向かって何かが投げられた。
どうやら、ただの石の様だが岩に当たるたびに小ザルは怯えていた。
石の飛んでくる方を見れば、森の茂みのなかに一メートルほどの大きさのサルのような黒よりのこげ茶色の魔物が岩にめがけて石を投げていた。
レシルがそんな状況を見て助けようと、ツタの隙間に指を入れた瞬間ほどく隙もなくすごい勢いで持ち上げられ聖樹の前まで引き上げられた。
「なんで、急に戻したんだよ!あの小サルを助けないと!!!」
感情のまま聖樹に大声で叫ぶと聖樹はツタを少しきつく締め上げてくる。
たちまち、苦しくなり声を上げるレシルに聖樹は落ち着きながらも冷たい雰囲気の混じる言葉で話しかけてきた。
「よくお聞きなさい、レシル。レシルが小ザルを助けたいという気持ちや助けるための行動は尊いおこないです。それでも、それはすべてちゃんとした結果を出せたらの話。もし、レシルがあのままあの小ザルを助けに行ったとしてあの小ザルを救えたの?」
レシルは、聖樹の言葉を黙って聞くことしかできなかった。落ち着いて考えてみれば、レシルがやろうといていたことがどれほど危険で、先のことを考えていなかったか考えさせられる。
そんなレシルを見つめ、ツタをほどいたあと聖樹は弱いものは狩られ死んでいく・・・これが自然界のおきて、と言った。
「石を投げていたあのサルがいなくなった後で、小ザルがもし生きていたら助けよう・・・。」
レシルのことを考えてかけられたであろう言葉が現実になってほしいと、今は祈るしかできなかった。
レシルは、小ザルのことを考えながらいつものように過ごしていった。聖樹から薬草のことをいろいろと教えてもらい、昼食をとり、トレーニングを始めようとしたとき、聖樹がレシルを呼んだ。
「レシル。さっきのサルがいなくなったみたいだよ。望みは少ないけど、見に行ってみる?」
レシルは、駆けより聖樹に大きくうなずいた。聖樹のツタが体に絡みだし、崖の下へと下ろしていく。さきほどと同じくらいの高さから小ザルのいたところを見るとそこに小ザルの隠れていた岩はなかった。
あったのは、岩が崩れたであろう石の山と微かに見える赤黒く白いなにか・・・。
レシルは赤黒く白いなにかを見たとき、さっきと同じ様に助けに行こうと思ったが今回は焦る気持ちを抑えることができた。
周りに、魔物や危険な動物がいないか注意し目を凝らし確認した後、心の中で聖樹に下まで下すようにお願いした。
聖樹は、何かあったら引っ張り上げるから気を抜かないように、と注意した後ゆっくりとツタを伸ばしていった。
地面に足が付いた後は、砕けた岩の山にゆっくりと近づき赤黒く白い物の周りの石をどけていく。
そして出てきたのは、さっき岩陰から見えた小ザルだった。
小ザルは微かに息をしていたが、呼吸は小さく虫の息の状態であった。
レシルは、悲しい気持ちになり泣きそうになりながらも、優しく小ザルを抱き上げ聖樹によって崖棚へと引き上げられた。
上まで戻ると、レシルは聖樹にこのサルを助けるように大急ぎで言った。
聖樹は、サルを見つめたあと一言・・・。
「レシル。この小ザルはもう助からないと思うよ。すでに死にかけているし・・・・今も・・・。」
両手で小ザルを優しくそして、しっかりと抱え、両目に今にも零れ落ちそうなほど涙を溜めているレシルを見て聖樹は、助かるか分からないと付け加えつつも小ザルをツタで包み薄黄緑色の光が辺りを照らし始めた・・・。
血の付いた手で涙をぬぐい、今にも漏れそうな声を抑えて聖樹に近よって光に包まれている子ザルを見つめている。
「レシル。心配なのも不安なのもわかるけど、取り合えず、手と顔を洗ってみなさい。汚いままはよくない。」
レシルは、そばにいたかったが今の手を見ればすごく汚れていたので、泉へ洗いに走った。
手と顔を洗い、聖樹の方へ顔を向けると赤黒く白かった小ザルは真っ白になっていた。
どうやら、もともと白かったようで血やほこりで赤黒くなっていたみたいだ。
白くなった子ザルをレシルは見つめ聖樹のそばでただただ祈っていた。
日も暮れると、聖樹は私に任せて早く寝るように声をかけてきたが、治療している聖樹のそばで小ザルの様子を見ていたいと言うと聖樹はレシルもツタで包み込み、お休みと声を欠け、レシルの意識は静かに消えていった・・・。
読んでいただいてありがとうございます。
よければ、また読んでください。




