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47 「ピクス」

レシルは、日の光とジークが支度する音に目を覚ました。


「おはようレシル。顔洗って、お前も支度しろ。ついでにバルロも起こしてくれ。」


ジークは一番最初に起き、旅の準備をしていた。そう、今日は「ノホウ」を旅立つ日だ。この街に来てたった二日であったが、その時間は濃かったなとレシルは思いながらバルロを起こした。顔を洗いに宿の裏手に向かえば、先客が居たので井戸が空くのを待つ。

たった二日の滞在ゆえに、人との関りは少なく普通ならば然したる変化もなく二日を過ごし、旅を続けていたであろう。しかしイブルに出会い、これからレシル達が受ける事になるであろう「赤の依頼」を体験し、特殊な状況や魔物を相手していかなくてはならないことを身をもって知ることができ、この二日はレシルをはじめジークにとってもバルロにとっても、実りある二日と言えただろう。


「バシャーン!よし。今日も頑張るぞ。」


「はぁああ。まだ少し寝たりないです・・・。」


顔を洗い、気合を入れたレシルとは違いバルロは、まだまだ眠そうであった。

とりあえず、二人は部屋に戻り旅の支度をする。その後、宿で食事を取ったらいよいよ出発だ。

宿を後にして、ギルドで次の街「ピクス」への護衛など良さげな依頼がないかを探し、門へと向かおうと歩いていると呼び止められた。


「ジーク、バルロ、レシル!!!」


声をかけられ、振り向くとイブルが駆けてきた。どうやら見送りに来てくれたらしいが、どうにも顔が赤く息が荒かった。走ってきたにしてはと思っていると、鼻に酒の匂いがたたよってきて三人とも一瞬で理解した。


「これから、「ピクス」に行くんだろ?短い間だったが世話になったな。お前たちと会えて楽しかったよ。」


「こちらこそ。イブルさんと会えて、俺たちも楽しかったですし色々と勉強になりました。」


「ははは、お互い様だな。ピクスまで気をつけていくんだぞ・・・。」


「はい!色々とお世話になりました。」


「二日間ありがとうイブルさん。でも、お酒はほどほどにした方がいいと思いますよ。体に為にも!」


「お世話になりました。イブルさんもお体に気をつけて、元気でいてくださいね。」


レシル達は、イブルに別れを告げ次の街「ピクス」に向けて街を出た。

「ピクス」は、東の国つまりアティカス神命連合国の中心に位置する街であり、アティカス都市の次に栄えている街である。街が国の中心にあるということで国中からあらゆるものが集まり、交易を主としてあらゆる分野の物がそろう街である。


ピクスまでは、七日の予定であるため支度は大変だ。七日分の食料ともなれば、荷馬車などで運ぶほどの量になってしまうこともしばしば・・・・。近くに点在している村々や旅の道中で食料を集めるのもよいが確実性に欠ける。


「レシル、お前食料はどれくらい持ってる?一応、三日分くらいは持ってるが俺が持ってる分じゃ足りないかも・・・。」



「はあ!?ジーク、食料とかしっかり準備してたから出発を急がせたんじゃないのかよ。」


「まあまあ、私も一日分くらいは一応持ってますし。途中で村で交渉するなり、食料を狩るなりすれば何とかなりますよ。」


「全く。バルロもしこんなことが続くとヤバいんだからな。ジークも、しっかりリーダーとして準備を怠るなよ。とりあえず、俺の収納の中にたくさんあるから大丈夫だけど!」


レシルの収納の中は、時間の流れを好きにできるため食材の時間を止め新鮮な状態を維持することもできてしまう。そのため、食材が腐る事や虫が湧くなど気にすることなく保持し続けることができ、レシルはもしものためにといろんなものを保管していて食材に関しても十分に余裕が、実はあった。

レシルが余裕があるにもかかわらずジークに怒ったのは、もしもの時の事や冒険者としての心構えの問題と考えたためだ。レシルのような特殊な者はそうそういるものではないし、レシルと長い間離れることになった場合にジークがレシルなしに冒険を行うことなどを考えてだった。


「この話はここで終わりにして。さぁ、ピクスに向かいましょう。レシルもその辺で、シークもこれでわかったでしょうし。」


そこまで怒ったつもりではなかったレシルだったが、ジークはこのことを深く受け止めたようで少し元気がなくなってしまった。バルロは、ジークの様子をしっかりと見ていたようで話を切ってくれたのだった。

レシルは、話が終わってからそのことに気づき少し悪いことをした気分になった。


「ジーク、ごめん。言い過ぎたかも・・・。」


「いや、大丈夫だ。レシルの言うことは事実だし、俺はリーダーとしてしっかりと配慮すべきだった。次からは気をつける。ごめんな。」


「ううんううん。俺もごめん。イジワルするような言い方して。さあ、行こうぜジーク。」


問題は解決もとい発生すらしていなかったのだが、不穏な雰囲気はなくなりいつも通りに歩みを進める。

「ノホウ」から「ピクス」までは、交易が盛んであり、ノホウで作られた農作物を運ぶことが多いためか道はしっかりと整備されており、定期的に村が存在していた。村には宿屋をはじめ店がしっかりあり、村としては栄えている方と言えるだろう。レシル達にとって、村で寝泊まりするというのは多く金がかかる。それこそ、商人などを相手に商売しているようなところでは金はどんどん消費されてしまうだろう。


「ジーク、この先に村がありますがどうしますか?街道沿いの村ですから宿もあるみたいですけど。」


「そうだな、金に困ってるわけじゃないし今日くらいは泊まってゆっくりするか!」


「わかりました。えっと、それじゃあこっちですね。」


バルロは、地図を確認しながら街道から少し外れた道に入っていく。ジークと、レシルも続き道を進んでいくと村が見えてきた。

街道から離れすぎているわけでもなく近すぎるわけでもない距離に村はあり、村には丸太を合わせて作られた壁が全体を囲っていた。

日も傾き、夕日の光で影が伸びてきたころに門が見え、その門は閉じかけていた。急いで呼び止め中に入れてもらうと、中には行商の途中で寄ってであろう荷物を乗せた荷馬車が三台広場に止まっていた。


「あんたら、間に合ってよかったな。一度締められちまうと朝まで門はあかないからよかったよかった。ところで、あんたらは冒険者か?」


門を開け閉めしていたと思われる男が、門のわきから姿を現し話しかけてきた。男は、レシル達の確認を済ませると、宿の場所と店の場所を教えてさっさと帰っていってしまった。

とりあえず、宿に向かい部屋を取りに向かった。宿は木造二階建てで、部屋数はそんなに多くないようだ。せいぜい六部屋程度の小さな宿であったが、行商人も来ているようで部屋は二部屋しか開いていなかったため、両方を取ることにして、2:1で別れることになった。


「「「最初はグー、じゃんけん、ポン!!」」」


三人の厳正な勝負によって、ジークで一部屋、レシルとバルロで一部屋に分かれることになった。

それぞれの部屋に行き、荷物を置くとレシルとバルロは再び勝負をすることになった。ベットが一つしかったためにそのとりあいだ。勝者はベットで眠ることができるが敗者は硬い床の上で野宿用の毛布にくるまることになる。これは譲れぬ戦いと2人は真剣な表情をする。


「レシル、私はパーを出します。」


「ふん、それじゃあ、俺はチョキを出そうかな。」


2人の心理戦。寝床をかけて戦った勝者は・・・・・・・・。バルロでした。

バルロは宣言通りパーを出したのだが、レシルは深読みしてグーを出してしまい負け。今日の寝床が床となった。「コンコン」ドアをたたく音が響き中に入ってきたのはジーク。


「おいレシル、どうした?床に這いつくばって。」


「いや~、ベットをかけて勝負して負けたんですよ。レシルは!」


「ふんだ、たまには勝ちを譲ってやるし。」


日もすっかり暮れ、外は暗くなったころレシル達は宿で食事を取ることにした。スープを基本にパンや干し肉が出てきたがこの宿では珍しく生野菜のサラダが付いてきた。「ノホウ」では生産が盛んなのでサラダがサービスされるのはわかるが、こんな村でも出るとは思っていなかったのでレシルは少し驚いた。

食事はどれも満足いくもので、中々にうまかった。

早めに眠り明日に備えようとするが、レシルの睡眠は満足いく眠りではなかった・・・・・。


翌日、レシルは体の節々が痛く目が覚めた。外では、馬の鳴き声が聞こえ窓から見れば行商人たちが支度をしていたり早い者では、門を出ようとしていた。


「行商人ってこんなに早いんだな。俺にはきつそうな仕事だ・・・。イタタタ。」


硬い床で一夜を過ごしたレシルは、痛む節々をかばいなら顔を洗いに行く。旅に出てからの久しぶりの早起き。昔のように修行などは、冒険者になってからはあまりやらなくなってしまった。冒険の日々で疲れ、早く起きることも修行に費やす時間も休むことに回してしまうことが多かったためだ。


「久しぶりにやるか。(タヒコ起きろ。久しぶりに修行するぞ。)」


「(レシル?早起き・・・。  修行!修行!)」


外で顔を洗っていたレシルが、心の中でタヒコを呼べばタヒコがすぐさま宿から出てきてレシルに飛びつきました。

レシルは、そのままタヒコと共にまだ日も登って間もない薄暗い中昔のように修行し始める。

昔のように、つむじ風を起こしながらの瞑想など今では何のこともなく、さらに難しくしようとレシルは様々な魔法を同時に発動し始める。

「炎水玉」アクアフレイムを、爆発を起こさないように小規模で作り出し維持。

「水の創造」アクアクリエイトで、水を作った後、つむじ風のみで落とさないように維持。

タヒコには、「水の創造」アクアクリエイトをつむじ風のみで維持するのをやらせてみる。


今まで以上に難易度が上がり、今までのように自然な瞑想などしている暇はないほどであった。

タヒコは、瞑想どころか変な踊りをしているかのように水を溢さないようにひやひやしながら制御しており、レシルは、額から冷や汗が流れ目を見開き、つむじ風で水を何とか浮かせていた。

頭の上には「炎水玉」アクアフレイムを浮かせているが何とも不安定さがその様子から丸わかりだった。

形はぐにゃぐにゃとゆがみ何とか宙に浮いており。つむじ風の水も飛び散っては一つに戻りを繰り返す。





「よし、終わろうタヒコ。」


レシルの合図とともに、水は地面に「ビシャン」と音を立てて落ち、タヒコは疲れて倒れた。


「(疲れた・・・。)」


タヒコもレシルも、朝だと言うのに汗でぐっしょり。魔力には余裕があるが体力的には疲れてしまった。

それでもなお、魔法で汗を流し体をきれいにしてから部屋に戻った。


「おはようレシル。あの、私のお金を入れていた袋を知りませんか?さっきから探しているんですけど、どうにも見当たらなくて・・・。」


どこかに紛れているのではと、あまり気にしていないレシルでしたがこれが大きな問題につながるとは無くしたバルロも思ってはいませんでした・・・・・。


読んでいただいてありがとうございます。

よければ、また読んでください。

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