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43  「赤」の依頼

ジークと話し込む猪の獣人は「イブル」という名で、二人が自己紹介を済ませて話がまた一盛り上がりしそうな雰囲気がしてきた頃、女性がこちらに来てイブルに声をかけて来た。


「イブルさん。お酒ばっかり飲んでないで仕事して下さいよ。名指しではないですが、できればイブルさんにって依頼がたくさん来てるんですから。」


「そう、文句を言わんでくれ。お前さんの声は、頭に響く。」


「まったく、そんなんじゃいつまでたっても奥さん戻って来ませんよ。」


「大きなお世話だ。」


イブルと話しているこの女性は、ギルドノ:ホウ支部の受付嬢でありこの支部の「ラナ」であった。

彼女の本名は、「ミルイ」と言うらしくイブルと親しげに話していた。

2人の会話からイブルはこの街で信頼を得ている人物だとジークは判断し、色々と聞いてみようかと考えていた。ラナとの話は、そう長くかからず話が終わるとラナは仕事に戻っていった。


「すまなかったな。ラナの奴は、色々気を使ってくれているのは知っているんだがなんとも・・・。」


「仲がいいんですね。あ、話は変わるんですけど。この街のこととか、周辺の魔物のこととか、色々教えてくれませんか?少しは、金を稼いでおきたくて。」


「ははは、お安い御用だ。何なら、仕事も教えるついでに見繕ってやろうか?」


ジークが、イブルに頼むとなんの躊躇もなくすぐに返事が返ってきてびっくりした。しかも、仕事まで用意してくれるとなると、驚きもそうだが申し訳なくなってしまい断ろうかとも思ったがイブル曰く、先ほどラナが言っていた依頼を手伝わせる気でいるらしく「とりあえず、なんでもいいから手伝え!」と言うことで心置きなく甘えることにした。

話がまとまると、ちょうどレシルとバルロがそれぞれの役割を終えジークのいるところに集まってきた。

換金は上々、報酬も入って少しは金に余裕ができたができればもう少し欲しい。と言うわけで、先ほど決まったことを含めてイブルをレシルとバルロに紹介し話を伝える。


「いいんですか、イブルさん?俺たちにとってはありがたい話ですけど、イブルさんには損にしかならないしイブルさん一人でもこなせるなら、なんでそうしないんだ?」


「まあ、簡単に言うと報酬にあんまり興味はねぇってことだが、依頼に関しちゃ全部受けて何とかしてやりてぇ。でも、俺一人だと時間はかかるし手伝いが欲しいってこと。だから、教えるついでっつか交換条件ってことで手伝ってくれ。もちろん報酬は山分けな。」


「うん?あの、イブルさん。あの、この依頼って名指しではないんですよね?なら、イブルさんがすべて受けずとも他の冒険者の方々にお譲りすればこのような面倒なことをしなくてもよいのではないですか?」


バルロが思ったことは、まったくもって正論だった。

名指しでないのなら、わざわざ一人の冒険者が独占などする必要は無いし日にちが経ちすぎて依頼失敗などになってしまう可能性を抱えてまでやらなくてもいいと考え、質問した。

レシル自身も、それに関しては気づいていたしジークだって気にしていないようだが気づいてはいたようで何一つ返しの言葉を発していない。むしろ、そこについてはできれば聞きたいのであろう。


「んー、なんといえばいいか。今出されている依頼は、昔から何度も出されている依頼で冒険者たちも何度も目にしている依頼だ。しかし、だれもやりだがらなぇ。だから、俺がやるしかないというか・・・他にもできる奴、やる気のある奴がいるなら全然いいんだがなぁ・・・。そしていつまでたってもで、残っちまうんだ。」


要するに、誰もやらない依頼をイブルが一人で引き受けてやってくれていたという事であった。依頼主からしても、あまり他の冒険者がやりたがらないことを知っていたのだろう。だからこそ、名指しでなくてもイブルにと言うことで依頼を出していたという訳であった。

依頼とイブルの関係が分かったところで、レシルとバルロは「それなら」と是非にとお願いした。

しかし、やるのはいいが最大の疑問が生まれてしまった。

他の冒険者たちがやりたがらない依頼とはどういったものなのかと言うことだ。やるからには、責任をもって行うのが冒険者であり、報酬を稼ぎたいレシル達は人の依頼と言うこともありかなり真剣だった。


「受けている依頼は、複数あるが出している人物は同じ人物だ。とりあえず、確認してきて出てたのは「サンフラワーの採取」「宿引き魚の捕獲(その鱗の入手のみ。魚は逃がす。)」「底引きの水の採取」の三つだった。これを順番に、集めに行く。」


「知らない魔物に知らない植物だけど、そんなに大変なのか?唯一捕獲のやつも、変な条件が付いてるけどそんなにやばい奴なのか?」


レシルを含むジークとバルロも、知らない物の羅列に少し驚いていたがそれを補うためにイブルの説明は続いた。


「サンフラワー」・・・日がよく当たる荒れた土地に育ち、魔物の熱をもって成長する植物。その花から根にいたるまで様々な利用法があり需要が高いが、その特殊な環境でなければ育つことができずおまけに育っている物を発見すれば、おのずと育つのに一役買った魔物までいることとなる。魔物の強さによって成長する速さや大きさが変わると言われ、それらを含め希少価値が高く採取の難しい薬草である。


「宿引き魚」・・・・きれいな清流に住むヤドカリのように貝殻をもった魚。生体として育った宿引き魚は、貝殻から半分以上体が出ているが出ている部分は非常に硬い鱗に覆われており、半端な攻撃では意味をなさないほどである。また、殻の中にしまわれている部分には非常に美しい鱗(貝鱗)が存在しており装飾に用いられることもあるが、鱗には薬を増強する成分が含まれており強い薬や効能を高めるために用いられる。しかし、宿引き魚自体を殺してしまうと貝鱗は瞬く間に色を亡くし意味をなさなくなるため保護対象とされている魔物である。


「底引きの水」・・・特定の洞窟の最深部にのみ湧き出る水。魔力が溶け出している水であり、昔は不老長命になれると言う噂が広まり様々な問題の元になった水。水自体の謎は解明されてはいないが、水を飲むことで体を浄化し悪い部分を正常に戻す働きがあり、今でもその存在を知る物は求めてやまないという代物であるが今では秘匿されつつある水である。


イブルは集める三つの物の説明をし終えるとどれから行こうかと聞いてきたが、レシルは不安しかなかった。今までにこなしてきている仕事らしいが、自分たちが受ける依頼としては難易度が高すぎると思ったからだ。

ちなみに、この依頼は「赤」色クラスの依頼であったがイブルがそのクラスに達していることと、今までの成功率からレシル達も共に受けることが許されたらしいが本来であれば、あまりいいとは言えないが数が居れば何とかと言う事なのだろか?ギルドからは特に言われなかったそうだ。


「大丈夫なんでしょうか?こんな依頼、初めて受けますよ。」


「俺も思ってた。俺たちだけで受けることは絶対にできないって。今回は、イブルさんが受けてそれに同行し手伝うってことであんとかなるんだと思う。」


「ま、不安かもしれねぇが何とかなるさ。イブルさんもいることだし、俺たちだってそこそこに強いだろ。」


2人が不安に思っていてもジークは、何とかしようと明るく振舞いました。イブルも「あくまでも同行と手伝い」と言うことを強調していい、とりあえずやってみるということで話がまとまりました。

レシル達は、イブルについていく形で早速「サンフラワーの採取」に向かいます。


ノホウの街から西北の方角に向かって進み、世界樹を取り囲む山脈の派生でできた山々のふもとに向かいます。


「いつ見てもすげぇ山だな。これだけ距離が離れて、やっと俺たちの向かう山と同じくらいに見えるんだからあの山脈は相当でけぇな。」


「すげぇ、あんなでかい山があったなんてな。あの山の向こうには、なにがあんだろな?」


「山の向こうは、行くことはできないぞ。良く分からんが、山脈に近ずくことができなくてな。俺はあきらめた。」


遠くに見える山脈は、場所こそ違うがレシルが目覚めた山脈である。レシルが目ざまたのは、南の聖樹の根元であって東に位置するこの辺りではないが、やはり同じようなところ故なのか懐かしく感じてしまう。


「さあ、こっちだこの山のふもとをなぞるように探していくぞ。」


ジーク達は、サンフラワーを探すために山すそを進んでいくのであった・・・・・。


読んでいただいてありがとうございます。

よければ、また読んでください。

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