41 奴隷商
タヒコは今、匂いをたどりジークを探していました。
ジーク達もレシルとシュシュを探して、場所を移動して今は、レシル達のいなくなったところから道を進み、ノホウに向かって探していました。
「見つかりましたか?」
「いえ、私の方は何も・・・。念のため、あの木のところまで一度行ってきます。すぐ戻るので、そのまま探していてください。」
「わかった。俺は、ディグさんと一緒にこのまま道を進みつつ探してく。道に沿って真っすぐ進んでいくから早く戻れよ。」
ここで、ジーク達はバルロを倒れた木のところに様子見のため行かせました。ディグは、いなくなったシュシュを呼び続けのどを痛めてしまったが今も、懸命に探している。
ジークは、念のために残りバルロは元来た道を走っていきました。迷路のように続く森の道。大きな道は一本でも森の中には獣道から荷車がやっと通れるほどの道まで無数に存在しています。
もしも、その道を通っていたとしたら気づかない可能性も考慮して、声を出しながら戻ります。
道を戻り、倒れた木が見えてきた辺りでバルロの胸に何かが飛び込んできました。
「キキーイー!!!」
胸に飛び込んできたのは、甲高い声で鳴いているタヒコでした。レシルは、いきなりのことに尻もちを搗き泣き叫ぶタヒコを見て驚きつつ、ただ事ではないことを確信しました。
「タヒコ、どうしたんですか!?レシルは、レシルとシュシュちゃんはどこにいるんですか!?」
柄にもなく、怒鳴るようにバルロはタヒコに向かって叫びタヒコも顔を擦りながらバルロの手から抜け出し袖を引きます。バルロは、タヒコがレシルの元に連れて行こうとしていると思い付いていこうとしましたが、先にジークに知らせなければとタヒコを捕まえてジークの元に行こうとしました。
タヒコを掴み走り出しましたが、タヒコが差し示す方向とは別の方向に進むバルロにタヒコは暴れて「そっちじゃない」と言うように、服を強くひきます。
「タヒコ、落ち着いてください。まずジークと合流しましょう。心配なのは私も同じです。ですが、私とタヒコが行ったらジーク達が困ってしまいます。あと少し待ってください。」
バルロは、とりあえずタヒコによってレシルの元に行けると思い二人の元に急ぎました。二人の元にはさして時間をかけずに着くことができ、今はタヒコ案内の元レシル達の元に向かって荷車を走らせています。
「おい、本当にレシル達のところに着くんだろうな?」
「キキー!キキッキー!!!」
「なにを言ってるかはわかりませんが、大丈夫だと思います。タヒコはレシルの獣魔ですし獣魔と主人は互いにその場所がわかるそうですから。」
「なら後は、道を急ぐだけってわけだな。頼むぜ、ディグさん。」
「まがぜてください。シュジュのためにも、ゴホッ。」
他の者でも急ぐ気持ちがわかるくらい、ひたすら馬を走らせるディグ。タヒコは、ジークの肩で道を指し示していきます。まだ距離のあるレシルの元に、一刻でも早くたどり着くために・・・・。
レシルとシュシュは、今止まった荷車の中で話をしていました。見張りをしていた狼は、外に出て行って今はいません。レシルは、シュシュを起こしタヒコに助けを呼んでくるように行かせたことを伝えると、少しほっとした様子を見せてくれましたが、やはりまだ不安なようで少し震えています。
「大丈夫、たぶん今タヒコがジーク達と合流してこっちに向かってきている途中だから。まだ時間はかかるけど助けに来てくれる。だから、安心して。」
シュシュが頷き、少しだけ元気を取り戻したところで外から何やら話声が聞こえてきました。
どうやら、狼の獣人とは違う者のようで狼の声も聞こえます。
「おい、これも持ってくのか?」
「そうだ、さっきの奴隷商から受け取った商品だ。これで、注文の品はそろったから早くノホウに向かうぞ。さっさと、荷台に乗せとけ。」
話が終わってすぐに狼が、レシル達が入っている檻と同じくらいの檻を持って入ってきました。狼は、その檻をレシル達の檻の横に並べて置き他の荷物を運びに出たり入ったりし始めました。
隣の檻の中には、顔が瓜二つの子供が閉じ込められていました。髪の毛は二人とも灰色で、一人は乱暴されたのか顔にあざを作り倒れていました。その横で、もう一人が涙を流しながら手を握っています。
「そこの君、そこの子をもう少しこっちに連れてきて。助けてあげるから。」
レシルの言葉に、その子は振り向きレシルを見つめます。ぼさぼさの髪の毛から覗く目には、あからさまに迷いがありましたがシュシュも言葉を貸してくれたおかげで双子は、手の届く範囲まで来てくれました。
倒れていたのは、双子の姉「ミニー」傍にいた子は弟の「ジェニ」と言うらしい。
レシルは、手をミニーに伸ばし回復魔法を服で隠しながらかけてあげました。ミニーのあざは消え、苦しそうな表情だった顔も今ではだいぶ落ち着いてきました。
「二人は、どうして捕まったんだ?親はどうした?」
「俺たちに親はいないよ。もともと孤児院にいたんだけど、当番の畑仕事をしてる時に変な男に捕まって、助けようとしてくれたお姉ちゃんも捕まった・・・。」
ジェニは、泣きながら何があったのか話してくれたがその話から、自分を責め姉が捕まってしまったのは自分のせいだと考えているのが分かった。涙を流しているとミニーが目を覚ましたようで、泣くジェニの頬にそっと触れました。
まだ、体を動かすのが辛そうでしたが目を覚ましたミニーにさらに泣き出してしまい、ミニーの胸で鳴きながら謝っています。
「謝らなくていいの、私は強いもの。それに、ジェニが無事でよかった。あなたが助けてくれたんでしょ?ありがとう。」
「ああ、もうしゃべらなくていい。とりあえず少し休んだ方がいい。たぶん、時期にまた出発する。一応、俺がレシルでこっちがシュシュ。休んでから、また話そう。」
「ええ、ありが、と、、う・・・・・。」
ミニーは、力尽きるように眠りに再び入りました。胸元で泣くジェニに声をかけミニーを休ませるようにして、シュシュに話したように助けが来ることを伝えました。
ジェニはとても喜び、泣いて真っ赤になった顔で笑顔を見せました。しかし、そんなところに狼が荷物運びを終えて見張りのために戻ってきました。
「なんだ、ガキ同士仲良くなったのか。ま、今だけのお友達だろうが仲良くしとくといいぜ。」
狼は、そう言うと麻袋の荷物を枕に寝っ転がりしばらくするといびきをかきながら寝てしまいました。
とりあえず、ミニーはこのまま安静にして置きこれからのことを考えることにしました。シュシュも、自分よりも不安に駆られ戸惑い泣くジェニを見たことにより冷静になれたのか前よりも真剣な顔を見せるようになり、もし仲間が助けに来た際のことをとりあえず決めるために話し合うことにしました。
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「おい、車が見えてきたぞ。もしかして、あれにレシル達がいるのか?」
「だとしたら、奴隷商の人間に捕まったと考えるのが妥当でしょうね。でなければ、タヒコがあそこまで慌てる理由がありません。」
「じゃあ、それを前提に考えて行動するか。タヒコ、お前はバレないようにあの車に忍び込んで俺たちが近くまで来てることを知らせるんだ。」
ジーク達がレシル達を乗せた荷車に追いついたのは、日も傾き夕暮れとなったころでした。
ジークは、バルロの考察を前提としてレシル達を助け出そうと考え、タヒコに忍び込むように指示を出しました。タヒコも自分の役割を理解してすぐさま行動に移し、荷車に向かってかけていきます。
ジークとバルロは、ディグと別れ荷車を隠れながら追い、ディグは距離を取って荷車を追いかけるようしてタヒコに続いて行動を開始しました。
その頃レシル達は、ミニーも起き考えていた作戦を共有していました。狼は、今のところまだ寝ていますがたぶんもうじき目を覚ますだろうと見当をつけ気を引き締めます。
ミニーの傷は、魔法のおかげもあり完全に治りましたが念のためポーションを飲ませ準備を万全にしました。
「キッキッ!」
タヒコも先ほど、逃がした穴から戻ってきてジーク達と合流してちゃんと誘導できたのだろうと判断したレシルは、他の三人たちと呼吸を合わせます。
「じゃあ、いくぞ!! 「風の斬撃」!!!」
狼はレシルの大声に飛び起き目を開けると、レシルと双子が入っていた檻もろとも屋根が魔法によりズタズタに切り裂かれ、西日が狼の目を直撃しました。
突然の出来事に、荷車は止まりレシル達は一斉に逃げ出しました。ミニーはジェニを、レシルはシュシュの手を引き荷車を降りて全力で走りだしましたが、狼もすぐにレシル達を捕まえようと追いかけてきました。
シュシュの手を強く握り、レシルは先に行かせようと引いた後手をはなし叫びました。
「シュシュ、先に行け俺が時間を稼ぐ。近くにジーク達もいるはずだ。」
シュシュは、心配と不安で一瞬にして心がいっぱいになりましたが双子を追ってそのまま走りました。「助けを呼んでくるから・・・」心の中で思いながら、少し走るとこちらにすごい速さで向かってくるジークとバルロを見つけました。
「ジークさん!!!レシルが、戦ってて、、、助けて!!」
「バルロ、ガキどもを頼む。」
バルロに子供たちを任せ、ジークは、レシルの元に加勢に向かいましたが・・・・。
「遅い!全く、もっと早く助けに来てくれると思ってたのによ。」
狼の獣人は、レシルに伸され足に踏まれていました。レシル達を乗せていた荷車は、初めこそ近くにいましたが旗色が悪いと判断するやいなや狼を置いてどこかに行ってしまいました。
レシルは、逃げ出した時にしっかりと剣を回収しておりその剣と魔法を駆使して何とか狼の獣人を倒したのでした。
「はぁ、やっと終わった。俺一人なら何とでもなったが、さすがに子供が三人もいるとどうにもできなかった。 もう疲れた。」
「全く、心配して来てみればいきなり小言かよ。こっちだって必死に探したんだぞ。」
「もちろんわかってるさ。だから、感謝もしてる。お前たちを呼ぶのに、タヒコはかなり頑張ったんだろうし、お前たちが近くにいると確信してなけりゃ、こんな危険なことやろうとはしないよ。」
レシルは、笑顔を見せながらすがすがしいくらいに言ってきます。ジークも、緊張の糸が切れたのか、笑いだしホッと一息。
その後、レシルはジークに背負われながら「ジークに助けられた風」にシュシュの元に戻りました。
シュシュは、泣いて喜び自ら抱きしめてきます。
皆今日一日でヘトヘトに疲れているため、このままここで野宿の準備をはじめ子供達(レシルを含む)は同じテントで安心して眠るのでした・・・・・・。
読んでいただいてありがとうございます。
よければ、また読んでください。




