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39 親子

レシル達は「ノホウ」に向けて歩き始める。今は、ガトークを出発してから三日目の朝で朝食の準備をしている。野宿も何度か経験しているし、レシルの収納によりテントなどのかさばる道具も難なく持ってくることができるので旅をする冒険者としては十分充実した野宿が可能であった。

もちろん、寝るためだけでなく調理のための道具もしっかりと持ってきているため食事に関しても抜かりはない。ちなみに、今日の朝食はベーコンエッグ風に卵と肉を焼いた物と、パンである。


「さて、腹も膨れたし片付けて出発するか。」


ジークの号令で、一斉に動き出し小さくまとめられた道具をレシルが仕舞いノホウに向かう。

レシル達は、この三日の内に魔物を五十以上倒してきている。街に着いたらギルドで常駐依頼の報酬が貰える数に、着く頃にはなっているだろう。それと、倒した魔物の素材はしっかりと回収してきているのでつき次第換金して金に換えるつもりであった。


余談ではあるが、この大陸の魔物は世界樹を中心にその周りと、大陸の外に向かうほどに強くなる傾向がある。そして、人間たちの生活圏となっているのはこのちょうど間にあたる空白の土地となる。なぜ、そのように棲み分けされているかは謎であるが、人間たちが住むこの領域は比較的安全な地であった。

もちろん、全体から見ればであって場所によっては例外もあり、大陸の端であっても「自由な地」(フリー・ポケット)や「危険な地」(デンジャーゾーン)と呼ばれる、所も存在する。人々は、それらの自由なフリー・ポケットを目ざとく見つけ街を作るのである。



これから向かう「ノホウ」は、そんな安全地帯とされている一線に位置している。言ってしまえは、半分の領域が冒険者のためにあり、半分の領域が農家のためにあると言えるようなバランスの取れた土地である。魔物の強さはガトークとあまり変わりない。


レシル達が歩いていると道に停まった荷車を発見した。どうやら車軸が折れてしまい立ち往生しているようなので、声をかけることにした。


「あの、どうかしましたか?」


声をジークが掛け、荷車で作業していた男の顔を見て驚きました。その男性は獣人だったのです。ジークが慌てて謝罪し話を聞いていると、男の後ろから小さな子供が顔を出しました。

つぶらな瞳に垂れ下がる耳、体全体はふわふわしてそうな薄茶色の毛並み・・・。かわいい・・・。

レシルはたまらず捕まえます。突然、手を掴まれ驚く子供は父親であろう男にしがみつき大騒ぎ。

レシルは、ジークに殴られ落ち着きを取り戻しましたが子供はレシルを未だ警戒しています。


「すいません、俺の仲間が・・・。俺の名前はジーク。こっちは、バルロでこのバカがレシルです。」


「いえいえ、大丈夫ですよ・・・。私の名前は「ディグ」、こっちは娘の「シュシュ」。私たちは犬族の獣人で行商のためノホウに行く最中だったんですが車軸が折れてしまい立ち往生していたんです。」


話し出した男の獣人「ディグ」は、ここら一帯の村々を周り行商をしていてその手伝いで「シュシュ」を連れているとのことだった。

身長から察するに五歳くらいであろうシュシュに、レシルは夢中であった。


「レシルやめろ!。シュシュちゃんが怖がってるじゃないか。」


「だって、かわいいじゃないか!小さくて、ふわふわしてそうで、ポメラニアンみたいで・・・。」


「ポメ・・ラ?  意味わかんねえがとにかくやめろ。今のお前、どこから見ても変態だぞ。」


「大丈夫ですよ、ジーク。姿は子供ですから。」


レシルは、変態と言う言葉に固まり、バルロの一言で大地をに倒れこんだ。レシルにとって二人の言葉は、アッパーをくらったところにストレートをぶち込まれたかのように精神を削った。

レシルは、ジークの言うような変態的な感情は持っていない。あくまでも、大人が赤ん坊を慈しむように、お年寄りが孫を溺愛するようにレシルはシュシュがかわいいっと思い行動に移しただけだと考えていた。

そのため、復活したレシルは全くこりておらず今もシュシュを見てにやけている。


「まぁまぁ、子供同士ですし問題なんてありませんよ。それに、うちのシュシュも友達ができればきっと喜びますし。」


ディグは知らないがゆえにこのように言っているがレシルは一応十二歳であり、確かにまだ子供と言えるかもしれないが年の近い二人からすれば少々心配となる行動であった。

とりあえず、このようなことをしていても意味がないので協力して荷車を直すことにした。荷車を引いていた馬をバルロに任せジークとディグが持ち上げている間にレシルが車軸を交換することになった。車軸を作り下に入ると交換を始める。

車輪が壊れていなかったのは幸いだった。さすがに車輪を作ることはできないため、壊れていたらアウトだったと思いつつレシルは手際よく作業して五分と経たないうちに終わらせた。


「ありがとうございます。助かりました。もし、よければ一緒にノホウまでいきませんか?荷車にはまだ乗れるところがありますし。」


「ぜひお願いします!!!!」


レシルは、その言葉に飛びつき断ろうとしたジークの言葉を消し去り結局一緒に行くこととなった。

ディグは、荷台に乗ることを進めてくれていたがジークとバルロは、さすがに直ったとはいえあくまでも「応急処置の荷車には乗れない」と断り、結局レシルのみが乗ることとなった。


「シュシュちゃん。一緒にお話ししようよ。」


「・・・・・・」


さすがに、先ほどのことと言いシュシュの警戒はまだ解けてはいなかった。レシルは、何とかシュシュと仲良くなろうと考え色々試します。タヒコをダシに使ったり、花を取り出しあげたり、自分の知る食いつきそうなお話をしたり・・・・。

そのどれもが、シュシュの気を引くことに失敗してしまったレシルは、最後に魔法を使いました。

風の魔法で花弁を飛ばし花吹雪を降らせ興味を誘った後、炎の魔法で小さな火の玉をたくさん作り宙に浮かべ、魚の形にした水でその小さな火を食べさせていきます。

その不思議な光景に、シュシュは目を奪われその様子を見つめてきます。

レシルが、指揮者のように手を振れば水の魚たちが元気に泳ぎ、エサを食べるように動き出します。喜ぶシュシュに魚を近づけそばを泳がせればその目はキラキラと輝き手で掴もうと追いかけます。


「すごいですね、レシル。あんなに嫌われていたのに、シュシュちゃん楽しそうですよ。」


荷車の横からバルロが声をかけ、称賛するがレシルは言葉を耳半分で聞き最後の大詰めに掛かる。

シュシュの周りを泳いでいた魚を手元に戻し、レシルの拍手と共に霧状に飛散させ、終わりとした。

レシルの中では、これで目をキラキラさせて「もっと見たい」などとせがまれることを考えていたのだが、シュシュは泣き出してしまった。


「おさかなー!!!」


仲良くなれそうだと思い見ていたディグはいきなり泣き出したシュシュに、荷車を止め泣き止ませようとするが何とも難しそうだ。

ジークとバルロは、荷車のレシルに向かって無言で「どうにかしろよ」と冷たい視線を送ってくる。

レシルは、慌てて残っていた花を編んで輪っかにして冠を作りシュシュの頭に乗せた。

シュシュは、いきなりのことで少し驚いていたが花の冠を見て泣き止み、嬉しそうに笑った。

泣き止んだことにほっとし、もう下手なことはしないようにしようとレシルはこの後おとなしく荷車に揺られるのであったが、全員で野宿の準備をしている辺りからシュシュの様子が昼間と違うことに気が付いた。

昼間の時よりも、レシルのことを気にしているようであったが決して警戒している様子ではなく遠巻きに目で追いかけるシュシュの行動が謎だった。


「ははは。シュシュは、レシル君が気に入ったみたいですね。よかった、よかった。」


荷物を片付けて寝床を作っているディグはそんなことを言っていたが、レシルにはよく分かっていなかった。

自分から近づけば逃げ出し、何もしなければじーとこちらを見てくる・・・。何とも歯がゆく、一般的には良いことなんだろうがめんどくさいと感じてしまっていた。

食事を簡単に済ませそれぞれの寝床で休めば、レシルに注がれるちゃかしの声。


「おいレシル。シュシュちゃんと言い感じじゃないか。女に挟まれてもなんの反応もしないと思ったら、そう言う趣味だったんだな~。」


「ジーク、その言い方は悪趣味ですよ。そっとしときましょう。本人たちの自由にさせるのが一番ですよ。」


好き勝手に言われるレシルは、いつもなら怒り出すのであったが今日はどうも様子が違う。二人も、思っていた反応とは違ったためちょっと心配になり横になるレシルをのぞき込むとただ単に眠っていただけだった。

2人して、しょうもないことをして勝手に安土していることにバカバカしくなったので何事もなかったかのように寝ることにしたが、レシルはしっかりと聞いていた・・・・。



次の朝、朝食の支度をするディグに挨拶をするジーク。


「お、おはようございます。よく眠れたようでなにより、ですね・・・。」


引きつった顔で笑顔を作り苦笑いを浮かべるディグに、違和感を感じバルロに何かあったのか聞いてみる。


「実は私もさっき知ったんですが、どうやらレシルがジークのちょと話したくないことをディグさんに教えたみたいなんですよ。この前の、女性とのこととか・・・。」


レシルが勝手に秘密を暴露したことにびっくりしていたが、その感情はすぐさま恥ずかしさと怒りに変わった。

レシルを探して走り出し、火の傍らでスープをかき回すレシルに怒り迫ると、レシルは笑顔で向かい合ってくる。目の前に、かき回していたスパテラを突きつけ昨日テントでジークがレシルに言った冷やかしの言葉を一門一句間違えることなく繰り返しながら、笑顔を向けてくる。

これはヤバいと思ったジークは、先ほどまで込み上げてきた怒りのことなど忘れ頭を下げ謝りだすのであった・・・。


読んでいただいてありがとうございます。

よければ、また読んでください。

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