34 レッドボア
レシルとジークの喧嘩は、エルバとの出会いをきっかけに仲直りすることができました。エルバはレシルを気にかけるとても優しい人ですがいつもすぐに帰ってしまいます。バルロは、そんな少し不思議な雰囲気を纏う彼女からレシルを任されました。
今、レシルとジークはバルロの前を目的の場所に向かって歩いてます。
喧嘩する前のように、些細なことで小言をレシルが言ってジークがそれに反論します。
「やっぱり、仲がいいのが一番ですね。」
「はぁ?何言ってんのバルロ、ジークとは親友なの、仲がいいなんて簡単な中じゃないの。」
「おいレシル、その言い方は傍から聞けば勘違いされるからやめてくれ。」
「そーかよ!ま、そればどうでもいいけど、バルロも俺たちの仲間になったんだ。これから、ジークみたいに縁を作ってくさ。 ジークとは、ここでお別れみたいだしな!」
「はぁ!?お前、俺が否定したとたんなんでそんな態度とるんだよ?酷くねえか?」
「バーカジーク。バルロ、ジークを置いて行くぞ!走れ~。はははははは」
レシルは、二人の会話を黙って聞いていたバルロの手を掴み走り出します。手を引きながら笑い走るレシルはとても明るい笑顔でした。ジークは二人を慌てながら追いかけてきます。その顔は少し慌てつつ微かに笑っていました。
貴族として、縛られた生活を続けて育ったバルロには今、自由に縛られるものなどないかのように接する二人が仲間であり、そのようにバルロにも接してくれることに自然と笑いがこみ上げます。
「ジーク、早くしないと。レシルに追いつけませんよ。もちろん、私にも!」
ジークは、バルロも一緒になって茶化してきたので全力で走り二人を捕まえますが勢い余って、三人そろって道に倒れこみます。レシルは、押しつぶされ服を汚されたことにまた怒り出します。そしてまた、ジークが反論しだします。これが私のいる、今のパーティー。今の仲間。掛けがえのない、大切な暖かくて楽しい友たちです・・・。
そんなことをしつつ進んでいったレシル達は、目的地にそう時間をかけず着くことができました。しかし、終始走ったりしていたため少々疲れ気味でした。
今回の依頼は「レッドボア」の大量発生に伴う間引きのための討伐です。
「レッドボア」は、赤いからだの二メートルから三メートルほどになる猪のような魔物で、小型の虫系魔物や草や木の実を主食とする魔物で肉は食用としても食べられますが、一度興奮すると突進を繰り返すめんどくさい魔物です。そんな魔物が大量に繁殖しているようなので間引きのために依頼が出されたのです。
レシル達は、「レッドボア」の目撃情報が多いこの一帯で間引きを開始することにしました。
三人は、初めの一匹目は一緒に狩りましたがそれ以降は、三人バラバラで誰が一番多く仕留められるか夕食をかけて競うことにしました。制限時間は、正午。太陽が真上辺りに来たら終了で、一番最後に帰ってきたやつは討伐数を減らすというペナルティーをつけ開始です。
ジークとバルロは勢いよく飛び足していきましたが、レシルはスタート地点から動かずここら一帯の気配を調べ出し、「レッドボア」の場所確認してから狩りに行きました。
「よっしゃー。これで五体目、そこそこに厄介だが何とか狩れるな。でも、これを運ぶのがなー・・・・。」
今回の勝負は、ボア自体が食材として価値があるためついでに集めることにしていたので、どこかにまとめておくか、スタート地点までもっていかなっければいけません。さすがに、スタートまで戻るわけにもいかないのでここら辺にまとめることにして次を狩ります。
バルロは、その頃三匹目をスタートに運んでいました。二メートルいかないくらいの小ぶりのサイズでしたが、中々に重く何匹も運ぶとなると骨が折れると考え近場で小ぶりのサイズを狩り数を稼ぐ作戦。
「はあ、まだ三匹。レシルはともかくジークはもっと狩ってくるでしょうね。頑張りましょう。」
バルロは、次を探しに走り出しました・・・・。
時間はたち正午、太陽が真上に近づき三人がスタート地点に戻ってきます。はじめに戻ってきたのはバルロでした。倒し集めたボアは、小ぶりでしたが15匹。近場で狩っていたため数があまり伸びなかったようです。次に来たのはジーク、ちなみに倒したボアたちは別の場所に置いてあり、数は数えていないのでわかりません。
「レシルの奴、まだ戻ってこねーな。もう正午だぞ。」
「そうですね。何かあったんでしょうか?」
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「おーい、お待たせ。やっと帰ってこれた。色々してたら迷った・・・。」
2人は、思わぬところでレシルの茶目っ気に笑います。自分たちが心配するまでもなく、レシルは帰ってきて恥ずかしそうにそう告げ、頭には葉っぱを服には汚れをつけています。
「じゃあ、三人集まっっところで結果発表な!レシルは、一番最後だったし待たされたから、マイナス10匹な。」
「ルールですし、仕方ないですね。あ、私はちなみに15匹ですので。」
「じゃあ、俺の倒したやつを数えるか。」
ジークが集めておいた場所に行き、ボアの数を数えていきます。ジークが倒したボアたちはどれも二メートルを超えるものたちばかりで赤い岩が転がっているようでした。ジークの倒した数は全部で21匹。
バルロを超え暫定一位です。
「じゃあ、今度はレシルの番な。迷子になってたレシルじゃあ、あんまり数はないかもしれないがな。はははは」
「ふん。バカだなジーク・・・。」
レシルは、収納から倒したボアたちを出し山のように積み上げました。数は全部で34匹。
大小さまざまではありましたが、今回は討伐数の勝負なので関係ありません。
これで、ペナルティーのマイナス10を入れても、24匹。レシルが、一位に決定です。
「レシル。今どこからボアを出したんですか!?」
「あー、バルロには話してなかったな。俺、収納魔法覚えてるからいくらでも物を持てるんだ。で、収納に全部詰め込みながら倒してたってわけ。」
「そうだった!!!レシルには、それがあったんだ。てか、それなら俺たちが最初から不利だったじゃねーか!!!!!!」
「そうだよバーカ。」
ジークを自慢げに嘲笑っているレシルに対し、バルロは内心驚き一抹の不安を抱きました。
あれだけの量が入る収納魔法をレシルが使え、レシルはまだ12歳そこそこ・・・。そして、エルバの謎めいた言葉・・・・。バルロは、不安を抱きましたがその考えは思わぬ方向に向かいます。
「すごいです、レシル!その年で、収納魔法が使える上に入る容量がこんなに多いだなんて。本当に、賢者様になれていまいますよ!!!てか、そんな人が居るパーティーなら勇者のような冒険も夢ではないかもしれません!はあー、レシルに会えて私は本当にラッキーです。これからも、冒険にどんどん行きましょう。」
バルロの今まで見た興奮よりも、さらにすごい興奮振りに反応が薄くなってしまう二人。
とりあえず、今回の討伐数合計60匹すべて解体し収納した後街に帰ることにした。街に付く前に、大量の肉や素材を袋いっぱいに詰めて三人で運び、ギルドですべてを換金プラス依頼の報酬を受け取った。
今回で討伐したボアの肉はまだまだあるため、三人で処理できる分を残し街の肉屋にも売りさばいた。これで、収納の中がスッキリし三人で新たにとった宿屋に帰ろうとすると声をかけられた。
「申し訳ない。ちょっと訪ねたいことがあるのだが。」
話しかけられ振り向くと、そこには兵士の格好をしちょび髭を生やしたおじさんがいた。体格は、ジークと同じか大きいくらい。ジークは、14歳だが身長は普通の大人とさして変わりないくらいだ。ちなみに、バルロはジークより少し大きい。まあ、15歳だから当たり前か・・・。
「先日子供が酒を飲んでいたところを見つけ取り上げられたら、子供がその兵士に無礼を働いたと言う報告を聞いてな。探しているのだが、心当たりはないかと思ってな・・・・。」
レシルは、男と話すジークと横で聞くバルロの後ろに身を隠しそんなことあったかと考える。
「レシル。あの時ですよ、エルバさんとお会いする前、私があなたに捕まる前にレシルが騒いでいた・・・。」
バルロに、教えられて思い出したレシルはジークと変わり男に事情を説明する。男はレシルの話を聞き事情を理解すると特に荒立てることなくことを済ませてくれることになった。
この兵士の格好をした男「ギッシュ」は、この街の駐屯兵の隊長の一人で頼まれてレシルを探していたそうだ。レシルに絡んできたのは、ギッシュの隊の兵士ではなく別の隊の兵士で、その上司の隊長から頼まれて探してたそうだ。
「すまなかったな、何ともお粗末な話だ。勘違いから始まって、挙句の果てに年下の子供に伸されるとは・・・。まだまだ、訓練が足りていないようだな。」
ギッシュはそう言うとレシルに謝り、また明日ギッシュのいる詰所に来てほしいと頼まれ、後日うかがうことになった。
ギッシュは、今回のことを頼んできた隊長に話すため帰りレシル達はバルロにおごってもらうため食事処に向かった。そして、今回の食事はいつもよりも豪華な物を頼み楽しい食事を二人は過ごしましたが若干一人は顔を引きつらせ、心の底からは楽しめていなかった様でした・・・・・。
次の日、レシル達は午前中に簡単な依頼をこなした後ギッシュに言われた通り詰所に出向いていた。
ギッシュに言われてやってきたのは、ガトークの中央街役所から少し離れたところにあるレンガ造りの大きな建物で、その周辺を見れば駐屯してる兵士たちが訓練をしていたり見回りをしていたりと忙しそうにしていた。
詰所に入り、事務作業をしていた人にギッシュを呼んでもらいレシル達は場違いの空間でギッシュが来るのを待つのであった・・・・。
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