表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/91

28 ゲイルフィッシュ

老人は内心驚いていた。日も暮れ初め、もう御客も来ないだろうと商品の手入れをしていると子供が店にやってきたのだ。

反射的に、出迎えのため挨拶をしてしまったのでちゃんと対応しようと出向けば見事なローブを着た少年がいた。

ローブには、魔法が付加されていることがすぐに分かった。少年を出迎えよくよく観察すれば、そのローブには掛かっている魔法を保護する魔法からローブ自体を強化する魔法が付加されており、ローブに使われている素材もかなり良いものだと思われた。


「あのー、魔法について聞きたいことがあってきたんですけど。いいですか?」


ローブの観察に夢中になっていたが、声をかけられ正気に戻る。

この少年が持つこのローブ、どこで手に入れたのかできる事なら手に入れたいと店主は思った。




レシルは、出てきた老人に魔法について聞こうと話しかければ笑顔を見せ話してくれることになった。

何も買い物をしないくせに話だけ聞くのは少し身が引けたので、先ほど作った魔法薬を最後に安く売ろうと考えていた。

老人の名は、バクス。この魔法道具屋の店主であり魔法道具を取り扱って五十年のベテランらしい。

そんな人ならばと、レシルは期待しながら質問を投げかける。


「あの、お湯を作る魔法か浄化魔法を知りませんか?使えるようになりたいんですけど。どうでしょうか?」


「うーん、儂は使えんが炎水玉アクアフレイムと言う攻撃魔法がお前さんが求める魔法に一番近いかと思うが、他に思い当たる物はこの店にある熱水機ぐらいかの。」


店主はすかさず、熱水機の説明を話し出す。簡単に言えば、水を入れ火の魔石で効率よく大量に加熱することができる物で、レシルはわざわざかさばる物を買いに来たわけではないのであまり興味はわかなかった。


「炎水玉ですか。それ、とっても気になりますね。ぜひ知りたいです!あと、浄化魔法に関してはどうですか?」


「炎水玉は、紙に説明と使い方の書かれた物が確かあったと思うからあとで探してみよう。浄化魔法に関しては、儂は知らんな。来た客の中には、使えた者がおったのは知っているが最近の客の中にはおらんと思うがの。」


浄化魔法に関しては、残念な結果に終わったが炎水玉の情報だけでもレシルは十分嬉しかった。自分のまだ知らない魔法にそして求めていた魔法に近い魔法を知ることができることに。

店主は、店の奥に入りしばらくして出てきた。その手には、筒状に丸められた紙があった。


「これはスクロースと言う。魔法を封じ込めた紙で、これに魔力を流すことで発動できるものじゃ。スクロールはとても作るのが難しく、この店にある物でもこれを含めて三つしかない貴重な物なのじゃ。」


店主が、持ってきたスクロールについて懇切丁寧に長々と説明されていくうちに、レシルは店主の考えが何となく読めてきていた。要するに、貴重なものだから高い金額を提示されるのであろうとレシルは考え少し身構え提示される金額を考えていた。


「それで、とても貴重な物なんじゃがどうしても欲しいのなら、そのローブと交換と言うのはどうかの?」


レシルは一瞬、唖然となってしまった。考えていた金額が金貨計算になるだろうと身構えていたが提示されたのは今着ているローブ。

これと交換してくれると言うなら悪くない交渉かもしれない、しかし、これは聖樹がレシルのために作ったローブであり、今までの思い出が詰まった品であった。

いくらスクロールが欲しいとはいえ、これと交換することはできないと思い、レシルはすぐにこの交渉を拒否した。


「すいません。これは思い出の品であり、形見なんです。なので、交換することはできません。」


レシルの切り返しに、店主は少し驚いたがならばと金額を提示してくる。提示されたのは、金貨百枚!要するに白銀貨一枚と言うことだ。この街では、マルスよりも物価が高く収入も多いが金貨百枚となるとさすがに簡単に出せる金額ではなかった。レシル達が昨日稼いだ金額は銀貨二十枚ほどであり、これからもっと難しい依頼をこなせば金は稼げるであろう。しかし、この街であっても張り出されている普通の依頼の報酬額は良い物でも銀貨五十枚だ。

銀貨百枚で金貨一枚。それの百倍となるのだから、かなり高い。

今の手持ちは、金貨一枚と銀貨三十枚と銅貨が数枚。

到底、金額に達していない。さすがに金額的に無理だと思ったレシルは、買うことを諦めた。


「すいません。そんな高い物を買えるだけのお金がないので諦めます。その代わりと言うわけでもないですが、魔法薬を買い取ってもらえませんか?」


レシルは、袋を通して収納から魔法薬を五本取り出し店主の前に並べた。

店主は、魔法薬を手に取り鑑定を始める。鑑定は、そう時間はかからず一本につき銀貨十枚で買い取ってくれることになった。レシルの作った魔法薬は、市販されている物よりも効果が高く冒険者の多いこの街では魔法薬はかなり重宝されているためこの値段になったそうだ。

銀貨五十枚を受け取り、レシルは帰ろうと外に向かう。


「小僧、スクロールはどうせそう簡単には売れん。今のように金を稼げば時間はかかるだろうがいつかは買えるだろうよ。」


落ち込みながら帰ろうとするレシルに、慰めの言葉をかけ見送る店主。レシルは、少しだけ前向きになることができた。店主の言うことはもっともなことで、頑張って稼げば買えなくはないのだとこれからの仕事に一層やる気があふれるのであった。



レシルが宿に持ったのは、すでに日が落ちた後だった。

ジークはすでに帰宅しており、宿でちょうど食事をとっていた。


「遅かったな。先に食わせてもらってるぜ。」


「ああ、俺もすぐ食事にする。荷物を置いて来るから、用意しててくれ。」


レシルが部屋に荷物を置き、戻ると夕食をジークが用意してくれていた。

タヒコと一緒に、食べ始め魔法道具屋でのことを相談する。


「今日、ジークと別れた後魔法道具屋に行ったんだがそこで、欲しいスクロールを見つけたんだ。金貨百枚するんだが協力してくれないか。」


含んでいた、水を少し吹き出しかけながら飲み込んだ後驚き叫ぶ。


「金貨百枚!!!そんな高いもん買おうとしてんのか。てか、そのスクロールとかいうやつ、そんなに価値がある物なのか?」


「よく知らない。俺も今日初めて知ったからな。明日にでもギルドで聞こうと思う。」


ジークは、あまりの金額にそんなに貯められるかと文句を言いつつもレシルの説得で協力してくれることになった。そして、ジークからもレシルと別れた後鍛冶屋に行ったとき装備の注文をしてきたことを聞かされた。

しかも、一式の装備注文だったため金貨三枚かかると知らされレシルは自分の買い物より先にジークの買い物のために奮闘することになった。




昨日受けていた依頼は、案外簡単に達成することができた。


「ジーク今だ!!引き揚げろ。」


「おお!おりゃー!!!!」


昨日受けたゲイルフィッシュの捕獲は、ジークが浅瀬に釣り上げてレシルが仕留めると言うやり方で、三匹捕まえることができた。

本来であれば、ゲイルフィッシュを釣り上げること自体が大変なのであるがレシルの気配探知で近くを通ったりエサに食いつこうとした瞬間の不意を衝くことで無理やり引き上げたのだ。

そして、釣り上げたゲイルフィッシュをレシルが魔法で倒したり剣で突くことで仕留めたのだった。

二人の息の合った動きと、技量があってこそできる事であり後にこの方法を見ていた他の冒険者が試みたが成功はしなかったそうな。


「よし、依頼は元々一匹だけだったがこの二匹どうするか?引き取ってもらえればいいが。」


「いいじゃねえか。食えるんだろ?魚なんだし、干すなりしてもいいだろうし、俺たちで食おうぜ。」


お金をできるだけ稼がなければと必死になるレシルに対し、ジークはどこか楽観的に考えている様子でしたがギルドで相談すると、依頼主がすべて買い取ってくれることになりました。

一メートルほどあるゲイルフィッシュが三匹。一匹に付き、銀貨三十枚とこの依頼で一気に銀貨九十枚の報酬です。他の素材も一緒に売り金貨一枚と銅貨数枚の報酬を手に入れました。


「よっしゃー!あともう少しで、ジークの装備代が払える!」


報酬を受け取りながら、レシルは内心大喜びです。

ジークの支払いが終わらなければ、スクロールのためのお金など貯めようがないのでレシルは、明日も頑張ろうと思ってました。


「あのラナさん。スクロールって高い物なんですか?できれば、詳しく知りたいんですけど。あ、あと、浄化魔法を使える人か詳しい人が居れば紹介してほしいんですけど。」


報酬を受け取った後レシルは、忘れずに昨日聞こうと思っていたことをラナに聞いた。


「スクロールに関しては、ケープに聞くのが一番いいと思います。あと、浄化魔法に関しては調べておくので後日でもいいですか?」


ギルドの中は夕方と言うこともあり、とてもにぎわっていた。もちろん、レシル達の後ろにも受付待ちの列があり、ラナはレシルの求める情報をメモすると話を終わらせ、次の人の相手をする。

さすがに、忙しい中時間を取るわけにもいかず今日のところは帰ることにした。








読んでいただいてありがとうございます。

よければ、また読んでください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ