25 寄り道
読んでくれる人が少し増えました。ちょっとうれしいですw
レシルは、街を逃げ出すように旅に出ました。
ジークは今ではしっかりと目を覚ましたようで、レシルから貰った軽食を食べながら道を進んでいます。
レシルは今、マルスから東に向かって進んでいっている。
今までいたのは、ザークス聖王国の南に位置しているマルス。これから向かうのは、そこから東に進んでいったところにある国境の手前に位置する砦の街、ガトークを目指していた。
ガトークには、マルスと違いダンジョンと呼ばれる迷宮が複数存在している。
レシルが、ガトークを目指す理由の一つがこのダンジョンだ。ダンジョンには、通常生息している個体よりも強く、また異なる進化を遂げたものが多く生息していることがある。
レシルは、聖樹との約束を守るためより強くなることを望んでいた。強くなり、平穏に一生を生き抜くこと、レシルは十二歳と言う若さにしてすでに悟っていた。
「なあ、レシル。ガトークに行くのはわかったけど、その後どうすんだ?俺、金とかほとんど残ってないぞ。」
ジークは、依頼をこつこつとこなしそれなりの金を有していたがレシルに急かされるまま、買い込みに金を使ったっため懐があまり芳しくない状況にあった。
「俺も、かなり無理やり付き合わせたからな、できる限りは俺が出すよ。でも、金はしっかり稼いでいくつもりだから働けよ。」
レシル自身、少しは罪悪感を感じていたのであろうツンを見せつつもジークのために金を使うことを拒否しない辺りがレシルなりのデレなのかもしれない。
「おおー、助かるぜ。これで金の心配はいらないな。さてと、さっそくだけど小遣いでも稼ぎますか。」
ジークは、そう言うと近くの茂みからこちらを狙っていたゴブリンの群れ五匹を瞬く間に切り捨て魔石を取り出し帰ってきた。
ジークは少し抜けている所があるかもしれないが実力がないわけではない。むしろ腕は立つ方だ。
「さすがに、近接戦はお手の物だな。」
「ああ、ゴブリンごときには遅れは取らないぜ。」
「そうだな、でも、ダンジョンに入るときになったら気を引き締めるようにしろよ。中で出てくる魔物は今まで倒してきたやつと同じ種族でもその強さは段違いらしいからな。」
レシルが、ジークに釘を刺し調子に乗らないようにしたところで昼食をとる。
風がそよぐ広い草原、視界は開けており背後の林には注意を払いつつマルスで買った食事を収納から取り出し食べ始める。
マルスを飛び出して、ジークとの二人旅。しみじみ考えさせられる状況に、レシルの手は進まない。ジークは、軽食を食べた後でもしっかりと食事をとっている。タヒコも同様に。
レシル一人、その考えを共有することもできず寂しさに浸りつつ食事をとった。
初日としては、そこそこに距離を稼ぐことができた。
日が暮れだした今は、持ってきたテントを立て林の中で野宿の準備をしていた。
ジークが薪を拾い集め、タヒコが食べ物を収納から取り出し、レシルが調理する。今回は、グラスラビットの燻製肉を使った少し豪華な食事だ。
グラスラビットは、香草や薬草を好んで食べるウサギ型の魔物で食べることができる。生息している環境が香草、薬草の分布と重なるため採取を目的とする者にとっては嫌がられるがその肉はいい値で取引されていた。
レシルは、薬草採取の時にこのウサギを捕まえ燻製にしていたのだ。
干し肉と違い、香りが強くうま味の凝縮された肉は二人にも好評であった。
腹が膨れ、疲れたレシルはテントの中で眠りにつく。ジークは、見張りを必然的にやる事となり火の番をしながら辺りを警戒していた。
「うん?なんだ、タヒコか。散歩か?」
物音に振り向くと、タヒコがテントから出てくるところであった。ジークが、タヒコが木々の間に消えていく姿を見つつ大丈夫だろうと火の番に戻る。
タヒコは、月光が木々の陰を作る中林を進んでいた。
決して目的があったわけではない。言ってしまえば散歩のようなものだ。
タヒコは元々、サルの魔物。自由に木々を行き来することができ、その真価は自然の中でこそ発揮される。
タヒコは木々の間を、猛スピードで進んだ。決して大きくない、草原にある林を・・・。
「ラン、ララン。ラララン。」
どこからか聞こえる、リズムを紡ぐ音。タヒコは、その音のする方に、進みだし草原の境に出た。
林はここで終わり、ここから先は草原になる。音は、草原から今も聞こえタヒコの興味を誘う。
魔物が辺りにいないことを、感じ取りつつ草原を音のする方に駆けていく。
小さな体を、草原の草に隠しながら進めば突然音が聞こえなくなる。
「キ?」
目印にしてきた音が聞こえなくなり、タヒコは辺りを見渡したが何も目に付くものはなかった。
変わらぬ大地が続き、月の光が注ぐ草原。美しいその光景に目を大きくし月を瞳に移しこみ諦めて帰っていく。
ただ、ここだけ開けた草原に、不自然に草の倒された空間に気づくことなく。
タヒコが、何事もなかったように戻ると、火の番はレシルに代わっていた。
「おかえり、タヒコ。どこに行ってたんだ?心配したんだぞ。」
タヒコを手で持ち上げ、膝の上に乗せた後優しく頭をなでるレシルの手にタヒコはスヤスヤと眠るのであった。
タヒコの小さな冒険、なにか形として残る物はなかったがタヒコの心には思い出が残ったのでした。
膝の上で、撫でられ安心して身を任せているタヒコは何も気づかないのでしょう。
月の祝福をその身に受けたことを。魔物であるタヒコがこれを手に入れたことで別の可能性が生まれたことを・・・。
「おい、レシル!レシル!起きろ。お前、途中から寝てただろ。ちゃんと見張りしろよ。」
ジークに起こされ、眠い目を擦りながら欠伸をするレシルとタヒコ。
「おはよう。」
「おはようじゃねえよ。ちゃんと見張りしろって。魔物が来たらどうすんだ。」
「大丈夫だよ。魔物が来ればちゃんとわかるし、起きれるから。タヒコもちゃんと気配わかるもんなー?」
半開きの目をしたまま、両手を持たれぶらぶらと揺らされながらうなずくタヒコ。
寝ぼけたような様子の二人に、ため息をつきながら朝食の準備を始める。
やっぱり優しい、ジークお兄ちゃん。
ジークが支度を始めれば、レシルが寝ぼけたまま魔法で水を作った後頭からかぶってしまいずぶ濡れになった。
服を乾かし、朝食を取ればガトークに向かって出発だ。
ガトークまでは、五日の予定で準備してきている。
途中、点在する村により食料を調達することも考慮して準備してきていた。
「ジーク、突然だが二択です。一、このまま進む。二、寄り道をする。さあ、どっち?」
「うーん、どっちでもいいが。二番かな。急ぐ旅じゃないし、少しくらいならいいと思う。」
「ふーん、あっそ。」
「はあ、どっか寄り道してくんじゃねえのかよ。どこか寄り道のために聞いたんだろ?」
「俺、そんなこと一言も言ってないけど。」
レシルは、ジークにツーンと言葉を返します。ジークも、レシルの言っていることが間違いではないので言い返すこともできず、ガッカリしてました。
レシルの、わがままで悪戯な気まぐれはここ最近ひどくなってきていると感じるジーク。
そんな風に考えられているとはつい知らず、ガトークの途中にある村に向けて道を進むレシル。
村に着き、この野郎と絡んでくるジークを軽くいなしたあとレシルは村人と話し村長を尋ねました。
「ようこそ、冒険者さん。私は、この村の村長トルと言います。何か御用ですか?」
「初めまして、私はレシルと言います。こちらはジークとタヒコ。今晩この村に泊めて頂きたいのですがお願いできますか?」
レシルは、宿のないこの村に一晩の休息を求めた。村長はその申し出を快く受け入れ、その代わりにと辺りの魔物退治をお願いした。
日は傾き始めていたが、休むにはまだ早いため早速魔物退治に村の周りを巡ることにした。
夕方となる頃には、近くの山をうろついていたゴブリン十体とグラスラビット、グレイトホーンなど二十近い魔物を退治した。
それぞれ、使えそうな素材をはぎ取り魔石を手に入れる。
収納に素材をしまい、村長と共に食事をすればおのずと、冒険の話となった。
「お二人はアルスからですか。プレートを見るに中々お強いようですし、村に来ていただけてうれしい限りです。」
村長ともすっかり打ち解け、ジークは村長ともう少し話すそうなので先に休ませてもらうことにした。
「はあ、色々と疲れたな。慣れない人と話すのは気を遣う。」
レシルは、今日集めた素材を収納から取り出し整理した後寝ることにした。
「まだ起きてたのか」
「ああ、さっきまで素材の整理をしてた。今まで村長と話してたのか?」
「ああ、色々とな。村長から聞いた話の中に、ガトークで変な事件が起きてるって話があったぞ。」
ジークは、ただ村長と楽しく話をしていただけではなかったようでレシルは少し関心していた。
ジークは村長から聞いた話を、横になりながら話した。レシルも、ベットで寝る体制のまま聞いている。
「内容的には、魔物が出るとか誰かに襲われるって話があるらしい。」
ガトークに向かおうとしているのだから、頭に入れておいた方がいいと思いレシルはジークの話を聞いた。ガトークにきな臭さを感じつつも警戒を強めることとし話を聞き終えた後、ぐっすりと寝ることにした。
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