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24 逃走

レシルは、ラナがギルド長の部屋を退室したことを確認すると、部屋の中にこっそりと入った。

口に指を持っていき、ギルマスに静かにするようにジェスチャーし相談する。


「すいません、いきなり来てしまって。実はこの街を出ていこうと思ってるんですがその相談に来ました。突然にすいません」


「え!ちょっと待ってくれ。なぜ突然、そういう話になるんだ。ちゃんと説明してくれ。」


レシルは、ギルマスに今までのこと感じたことそして、今さっきあったことなど説明しギルマスの協力を仰ごうとした。


「そうか、確かに君のいう事も分かるしかしだ、君のおかげで冒険者のイメージは良い方向に向いてきている。君にはわからないかもしれないが、男女問わず君の人気は絶大だ。依頼に関しても前よりも多く来るようになった。できればこのまま居てほしいと思うが・・・・。君が危惧している気持も十分に分かる。」


ギルマスは、ギルドにもたらされる利益やイメージのうまみをできればこのまま不動のものとしたいと考えていたが先ほどのラナの件と言い、無視しがたい状況に発展してきていることも理解していた。

そして、先の読めぬ現状にどのように判断すべきか決めあぐねていた。

しかし、レシルにとっては関係のないこと知ったこっちゃねえと言える状況であった。街を歩けばもみくちゃに、まあ、お店とかでは物がタダでもらえたりするけど・・・。これから先を考えれば、いつもいつも気の置けない状況に発展するのは目に見えていた。


「ギルマス、俺は出ていきますので。とりあえず、ここでの仕事を辞めさせてください。」


レシルは、何かと真面目であった。危機的状況が迫ってきていたとしても抑えることは抑えて、旅に出ようと考えていた。その前段階として、ギルドでの仕事をやめる事、第二に速やかに街を去る準備をし、旅に出る。簡単に流れを考えて決めていた。


「とりあえず、了承した。君の意思も堅そうだ。せっかく、イメージ、依頼含めて賢者の誕生に皆盛り上がっていたが、意思を尊重することにしよう。」


「ありがとうございます。このことは、くれぐれも内密にお願いしますね。もしばれたら、とんでもない騒ぎになるでしょうし。出るに出られない状況になるでしょう。」


「ああ、たやすく想像できてしまうな。約束しよう、しかし君がい無くなられると寂しくなるな。どこに行っても元気でいることを祈るとしよう。」


ギルマスも、これからレシルの身に起こるであろう気苦労を考えてか軽く別れの挨拶をすませ、レシルを送り出すことに賛成してくれた。

ここからのレシルは早かった、タヒコに部屋にある荷物を収納にしまい込むように指示を出し自分は旅に必要な物を買いだしに街に向かう、が、やはりもみくちゃにされる。今回はジークと一緒ではなかったため一つも店で買い物できなかった。夕方にこの状況で捕まると夜までコースになってしまうとレシルは考え、体の小ささとその身体能力を使って少し無理やり抜け出し街の中に消えていった。


「もう、レシル君たらかわいいんだから。あんなに照れちゃって。」


「ホントに、今度遊びに誘いましょうよ。」


レシルの気を引こうと色々と案を企てる女性たちであったが、今回のことがレシルがこの街を去るのに拍車をかけることになったのを彼女らは知らない。

抜け出したレシルは、街で旅の準備に大忙しである。

レシルの過激なファンに見つからないように、細心の注意と気配探知をしながら買い物を済ませていく。

特に、旅の間に食べる食事を中心に、装備や必要な道具などを買いそろえていった。

レシルが、警戒を強めたまま買い物を済ませギルドに戻ればラナが入ってきたレシルにめがけて迫り寄ってくる。


「レシル君、どういうことですか!!!!」


僅かに殺気の篭った顔が目の前にまで迫ってきたことに、自分が旅に出ることがバレたかと身構えた。


「ギルドの仕事をやめるって本当ですか?」


「あ。ああ、そっち。えっと、冒険者の仕事に専念したいと思って、ギルマスに相談したんです。もともと、冒険者になったらやめるつもりでいましたし。それがどうかしましたか?」


何食わぬ顔で、名演技をするレシル。ラナもそう言い切られてしまうと、何とも歯切れが悪く言い返せないでいた。


「でも、レシル君がいなくなると寂しいですよ。」


「そんな、いなくなるわけじゃないですよ。ギルドには今までみたいに依頼を受けに来ますし、換金だってしに来ます。会う機会なんていくらでもあるじゃないですか。」


レシルは、これでもかと満面の笑みでそう言い放つ。レシルのキラキラとした笑顔は彼女の口をポカンと開けさせ次の言葉を発せさせなかった。

ラナを言いくるめレシルは逃げるように部屋に帰る。


「はあ、危なかった。てか、タイミング良すぎだろ、マジでバレたかと思った。」


部屋に入ったレシルは、部屋に初めて来たときと寸分たがわぬ状態にまできれいに片づけられている部屋に驚き、ベットの上で自信満々に今か今かと感想を待ちわびているタヒコにこれでもか言うほど褒めちぎった。

タヒコはここしばらく、レシルとの接触が少なかったためか女性にもみくちゃにされた時のように扱われても嬉しそうにレシルからの抱擁を受け入れていた。

そんなことをしていると、ジークがドアをノックして部屋に入ってきた。


「おおー、きれいに片付けたんだな。ギルドをやめるって聞いたから片付けを手伝おうと来たんだが必要なかったみたいだな。」


「そうだな、片付けはすでに終わっている。明日には、出発できるぞ。ジークは準備できてるのか?」


「????  準備?  なんの?」


「なんのって、旅のだよ。昨日話しただろ。明日の朝一で街を出るからな。」


「はあ!?聞いてないぞ、てか明日!早すぎだろ、全然準備できてねえよ。」


ジークが駄々をこねるように時間をレシルに要求したが、「まだ時間はあるからしたくしろ」と言い放つと食事をしに食堂へ出ていくレシル。

レシルを追いかけ、せめて明日の昼間に出発を延ばそうと声をかけるが二言目を言う前にレシルに魔法で吹き飛ばされた。


「俺は一人でも行くからな。」


そう言い放ち、放置されたジーク。気持ちはもっぱら捨てられた女のように、少し寂しい気持ちになったがジークはすぐさま支度をしに宿に向かう。


「なんだよあいつ。昔はおとなしくてかわいかったのによ!クソ!」


宿に向かって走りながら、レシルの悪口を言い放つジーク。

なんやかんやで、見捨てられない優しいお兄さんジークです。




次の日


「ドンドン!ドンドン、ドン!ジーク開けろ。」


外にやっと日が差しこみ始めたころ、ジークはドアを強くたたく音に起こされました。

ドアを開け、そこにいたのは小さなリュックと小ザルを乗せた少年、レシルでした。


「遅いぞ、準備はできてるみたいだな。早く荷物をもっていくぞ。」


レシルはそう言うと、ジークの肩掛けカバンのほかに用意されていた荷物を収納にしまい込みカバンと防具をジークに渡します。

急ぎ支度をするレシルをよそに顔を洗いに部屋を出ようとしたとき、レシルに脛を蹴られ一発で目が覚めました。


「レシル!何しやがる、イテーじゃねえか。」


「早くしろって言ってるだろ。時間がねえんだ。」


足を抱え座り込むジークにレシルは、間髪入れずに怒りの篭った言葉を投げつけます。

ジークも渋々支度をして、宿に鍵を返しやっと出発しました。

レシルは、できれば誰にも見つからずに街を出ようと考えていた。しかし、ジークのせいですでに露店の準備をし始めている所もちらほらとある中、門に向かって足早に歩くがジークの足取りはゆっくりとしたものだった。

朝一番に起こされ、いきなり歩かされているのだから仕方がないかもしれないがレシルはジークの背中を無理やり押しつつ門に急いだ。


「おや、おはようございます。賢者レシル君。今日はやけに早いですね。修行ですか?」


いつも朝の早い時間に、修行のため街を走ったり街の外に出ていたため門番の人たちとは顔見知りだ。しかし今回ほどこの縁が邪魔だと思ったことはないだろう。


「いいえ、冒険に行ってきます。たぶん時間が掛かってしまうので。」


なるほどと、うなずき送り出してくれる門番に罪悪感を抱きつつも足早に街を後にした。







「さあ、みんな急いで、レシル君に今までありがとうの会と称したパーティーをして驚かせるわよ。驚く顔が目に浮かぶわ。」


ギルドの食堂で取り仕切っているのはラナであった。食堂内では他のギルド女性職員たちが休みの者も含めてせわしなく動いていた。

レナの指示の元、レシルのために料理も特別メニューを用意してもらい盛大に盛り上がっていた。


「こ、これはどういう騒ぎだ!」


そんな中、食堂に現れたのはギルマスであった。ラナは、事の顛末を説明したが今日涙を浮かべることとなることを彼女が知るまであと少し。


「盛り上がってるとこ申し訳ないが、レシル君はこの街を出ることにしたらしい。昨日、直接話にきたので間違いはないので、やるならお別れぱーちぃーにしなさい。」


ギルマスの言葉に驚き、本人に直接話を聞こうとレシルの部屋む駆けこむ。ドアをノックし、返事を待っても返ってこず、ドアをかけて中に入ればそこはもぬけの殻だった。

すぐに、ギルマスにこのことを伝えギルマスの驚いた表情を見るとラナは、門に向かって走り出す。

走って向かう途中、露店の人に声をかけレシルの足取りを追い、門番の人に話しを聞けばすでに遅かったと悟る結果となった。

計画していたパーティーは中止。落ち込み、部屋に閉じこもったラナであったがその日の終り、夕方となったころ受付嬢のルルによってラナは食堂に招かれた。

そう、レシルのお別れパーティーの会場はそのままレシルの尊さを誇る会と名を変えしっかりと開催されたのだ。


「レシル君は、とってもかわいいのよ。私の胸から逃れようと、だけど触ることにためらって頬をそめてもがく姿とか・・・。」


「あー、確かにかわいかったよね。あ、物をもらっった時とかさ・・・。」


「坊主が魔法でモンスターを吹き飛ばしたり、小さい体で解体してる姿とか何とも健気さを感じさせてなんかいいよな。」


「少し小ばかにすると、すぐ膨れるとことかな。」


食堂に集まる冒険者、街の面々など、レシルのことが大好きなメンツが集まり自慢のレシル思い出話に花を咲かせ笑い合っていた。ラナのように、レシルの旅立ちを悲しむ声もあったが皆一様に悲しそうな顔は見せていなかった。


「みんな、レシル君のことが大好きで今日ここに集まったのよ。みんな、レシル君が旅立ってしまったことを知っているけれど、悲しんだり暗くなるのはやめようってパーティーを始めたのよ。」


「でもなんで、だってレシル君はいないし。こんなことしても・・・。」


「仕方がない?そんなことないわ、みんなあんなに楽しそうだもの。それに、レシル君だって悲しんでるなんて知ったら帰って来ずらいじゃない。ね」


ルルの前向きな言葉と、集まる面々の笑い話し合う空間にラナは泣くことをやめました。

そう、レシルはいつか帰ってくる。帰ってきたときに、文句でも言ってやればいい。そう考えることで、自分のもやもやを拭い去りパーティーに参加します。


「私にもお酒ちょうだい。今日は飲み明かすわよ。」


ラナは、お酒を飲み、笑い、話し明かしました。

今日の悲しみが、楽しい思い出に代わるように・・・。

そして願います。レシルが早く帰ってくることを・・・・・。


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